第6話 はじめての大会出場!
青空が広がった休日の午前中、東流山市内にある広い公園で、モルック大会&体験会が開催された。
本日の大会参加チームは全部で8チームで、4チームずつにA、Bに分かれたリーグ戦を行う。それで1位のチーム同士で、優勝決定戦を戦うという流れだ。
試合時間は20分、休憩10分って決まっているので、1試合しかできなさそう。
まだぜんぜん暑い時期なので、僕らは全員、白いTシャツに白いパンツ姿で集まる。全身白でも微妙に色が違っていたり、透けにくい素材だったり、模様があったりするけど、なんとなく統一感がある。
それで、大智さんから黄緑のキャプが配られた。
キャップの前にはかわいらしいマークが貼ってる。丸っこくてかわいい白のWが、二つ重なっていた。
「あれ。大智さん、これって?」
「無地の黄緑だと少し寂しいかなって思って。ホワイト・ウッドだと頭文字がWWだから、それっぽいワッペンを選んで貼ってみたの」
「すごくいいと思うよ!」
「よりチーム感が出るね」
「美帆、ありがとう!」
このワッペン、市販品なんだよね?
とても、かわいらしいWWマークだね。
普段クールな感じがする大智さんだから、チョイスがちょっと意外だけど。
キャップをかぶってみると、白樺というより、ネギっぽいかな(笑)。ま、いっか。
それで、僕たちはAリーグのほうで3試合を行うわけだけど。
初めて対戦するチームはKAWASAKIファミリーズ」という流山在住の4人家族。流山だけど、苗字が川崎なファミリーだ(笑)。
お父さんとお母さん、小学生のお姉ちゃんと弟くんとで参加している。悪いけど、これは楽勝な気がする。
お父さんと大智さんがじゃんけんをして、向こうのチームが先攻になる。モルックは先に50点になったチームが勝つゲームだし、ブレイクショット(最初の一投目)で12本全部が倒れる可能性があるので、先攻が有利だと言われているゲームだから、先攻を取りたかったんけど、これはしかたない。
KAWASAKIファミリーズの一投目で、お父さんがブレイクショットを担当する。
3・5メートル先に立てた12本の棒、スキットルに向けて、足元に敷かれたモルッカーリという細長い棒を飛び越えないよう慎重に、低く、強く、モルック棒を転がす!
モルック棒が、スキットルの束をなぎ倒していく!
ワラワラとみんなでかけよって、倒れた数を確認すると、10本倒れてた!
それぞれのチームの記録係(お姉ちゃんと谷口さん)が用意された紙に記入する。
小さい規模の大会なので、スタッフはほとんどいない。
得点の記録も倒れたピンを立てるのも、自分たちで担当する。
KAWASKIファミリーズは積極的に動いたり記録したり、こういった大会に慣れている感じで意外と強敵かも?
はじめてあった人たちだけど、仲良くなれそうな雰囲気だし(笑)。
後攻になった僕たちは、一投目を僕が担当する!
まだそんなにスキットル(ピン)が散らばっていないから、散らばせないことを意識しながらモルック棒を投げる。
よし! 11本、倒した! これで10対11だ。
ただ、少し力みすぎたからか、思ったより強く投げてしまって、高得点のピンが何本か狙いやすい位置になってしまった。
次のターンは、KAWASAKIファミリーのお母さんが狙いやすくなった⑨ピンに向かって投げて倒した!
それならこちらは、まだ倒しやすい位置にある⑨ピンを狙うことにして、大智さんがモルック棒をスッと軽やかに投げる! 見事に倒して、19体20! 1点差でリード!
それに⑨ピンに直接当たって、だいぶ遠くにまで飛ばすことができた。
大智さんにかけよって「ナイスショット! 姿勢がいいね! 体幹が強いんじゃない?」って話しかける。
「私、昔バレエをやってたから」
と少し恥ずかしそうに答える大智さん。
「えっ、バレーっ!?」
「バ・レ・エ。クラシック・バレエを習ってたの。お遊び程度だけどね」
へー、バレリーナってやつか……(よく知らないけど)。
あ、相手チームが投げる番だ。モルックは投げる準備に入って1分以内に投げないといけないルールがある(大会による)から、サクサク試合が進むな。
次は小学生のお姉ちゃんが投げる番で、4、5年生ぐらいかな。
⑨ピンが遠くなって狙いにくくなったから、まだ比較的狙いやすそうな⑪ピンを、相手チームが果敢に取りに行く!
惜しい! ⑪ピンは外れたけど、隣にあった⑤ピンが倒れたので、相手チームが合計で24点!
今の投てきで、⑪ピンの周りが空いたので、大吾が狙いを定めて、手前にモルックを投げる。よし!倒れた!これで11点ゲットで、合計31点!
チームのみんなで話し合って、のこり2投を、⑨+⑩ピンか、⑦+⑫ピンの組み合わせでスキットルを倒して勝ちにいくことにする。
状況としては、⑨ピンと⑪ピンは位置が遠くなって取りづらくなってて、⑩ピンと⑫ピンは周りにスキットルのピンが並んでる。
さあ、次に投げる番の、低学年生っぽい弟君はどうするのかな?
と思ったら、おかあさんが弟君に耳打ちして、果敢に⑫ピンを狙いに行く!
そして、⑫ピンが倒れた! だけど残念ながら周りのピンも倒れてしまって3点に。合計27点。
こちらのポイントが有利になってきたので、谷口さんは遠投は得意じゃないけど、いまの投てきで後ろに飛び出した⑫ピンを狙いに行ってもらう。
小柄な谷口さんだけど、いつもより大きく早く、でも慎重に何度も腕を振りながら、モルック棒を空に投げ出す! よし12ピンを倒せた! 12点ゲット!
これでこっちは合計43点!
自分が倒すはずだったピンを倒されたからか、悔しそうな弟君。ごめんねー。1
するとお父さんがリベンジとばかりに⑫ピンを狙って、ゲット! お父さん、かっこいい! これで向こうが39点。
こんなに⑫ピンがバンバン倒れるのって、試合のレベルが高いんだろうか? 低いんだろうか?
これでKAWASAKIファミリーズが、次のターンで50点になる可能性が出てきた。
ここで試合を終わらせるために、もちろん僕は⑦ピンを狙いに行く。
右側近くに④ピンがあるので、水平に持ったモルックの右側で⑦ピンを引っ掛けるイメージで慎重に投げる。
一瞬、イメージより手前にモルック棒が落ちてバウンドして「失敗した!」と思ったけど、当たりどころがよくて、⑦ピンだけをゲット! これで勝利だ!
チーム「ホワイト・ウッド」の記念すべき初戦を、勝利で飾った!
輪になって喜ぶ僕たち4人!
だったけど……あー、相手チームの弟くんが泣き出しちゃった。
お姉ちゃんが慰めてる。やさしいな。
ごめんねー! でも、これは勝負だから。
弟君、とても強かったよ!
そんな感じで、初めてあったご家族だったけど、試合後はお互いの健闘を称え、試合内容を振り返ったり、モルック歴を聞いたりして、交流をもったりした。
それで初戦は接戦だったけど、その後は大学生チームと社会人チームと対決して楽勝で勝利を収めてしまい、なんと無敗で、予選リーグを突破したのだった!
「僕たち、やっぱり強いんじゃないか」
と意気揚々とほかの予選グループの様子を見に行くと、向こうの試合はもう終わってて、待っててくれた決勝進出チームの人たちが、こちらに歩いてきた。
対戦相手チームのシルエットは、僕たちのような凸凹の身長差の二人が先頭を歩いていてで、後ろに小柄な二人の姿が。
いや違う! 先頭の一人が飛び抜けて大きいんだ。背が高い人がいて、あの人って外国人じゃん!




