第4話 モルックを送ってきたのは誰だ?
大智さん、モルックの大会に出たいってことなの?
今日、はじめて試合をしたばかりなのに?
「こうやって、みんなで集まって試合するのも楽しいけど。
芸人さんが出場しているモルックの大会を見てて私、参加してみたくて」
やっぱり大会に出たいってことか!
「実際にモルックの大会を見に行ったことがあるんだけど。
出場しないで見てるだけだと、なんだか物足りなくなってて」
そうなんだ!
大智さん、意外とモルックにがっつりハマってたんだね!
確かにモルックの道具が(実は)二つもあるんだし、練習して大会とかに出ても面白いかもしれないけど。
だけど僕たち、そんなに仲のいい距離感だったっけ? 他の二人は初対面でしょ?
すると、僕が何かを言う前に大吾が、
「面白そうじゃん。
部活に影響しないなら、大会とか出てみてもいいかも」
とか軽く言い出す。
谷口さんも、
「うーん、私も文芸部の活動とかぶらなければ、いいけど」
なんてこと言ってくる。
そんなこと言われたら、帰宅部の僕はどうすればいいんだよ。
で、じっと僕のことを見つめてくる三人。
えっ、僕以外はそんなに前向きなんだ! どうしよう……。
「ま、まあ。今日、もうちょっとやってみようよ。
それでみんなハマりそうだったら、大会に出てみない?」
と提案して、あまりに急展開にいったん結論を先延ばしにした。
それで、今度はペアを組んで、時間を制限(20分)して1試合1セットで対戦した。
〇大智&谷口 VS 香坂&大吾
〇大智&大吾 VS 香坂&谷口
〇大智&香坂 VS 谷口&大吾
結果は、すべて僕(香坂)のいるチームが勝利した!
自分で言うのもなんだけど、どの組み合わせでも僕が得点ゲッターだ!
ボウリングだと力不足・体幹不足だった僕も、6メートルぐらいまでならコントロールができて、スピードのある投げ方も、ふわりと浮かせる投げ方もできた。
大吾は僕よりも力強いけど、勢いがありすぎて、倒さなくていいピンまで倒しがちで、あとやっぱり体が浮き気味というかもっと沈めたほうがよくて、バレー部でも、もっと足のバネを使え! 重心を落とせ! と監督に言われていたな。
足が長すぎるんだよ(うらやましい)。
大智さんも大吾と似た感じだけど、パワーで劣る分、むしろコントロールが効いているけど、やや集中に掛ける感じがするので、大吾と同じようにもっと重心を下げて、コントロールを意識すればいいんじゃないかな?
って素人が何を言っているんだって話だけど(笑)。
谷口さんは、コントロールもスピードもいまいちだけど、コツコツと点を重ねて、いつのまにか、接戦に持ち込んでくるタイプのようだ。あと、記憶力がよくて合計点の計算も早いので、とても助かる。モルックの得点をつけるためのアプリがあって、それを使って記録係もやってくれた。
試合をしているうちに緊張もなくなり、今日初めてあった人もいるとは思えないぐらい和気あいあいとした雰囲気で、僕ばかり勝っても、みんな楽しそうにしている。
勝ち負けも大事だけど、こうしてみんなで倒れたスキットルを立てたり、点数を計算したりしてワイワイできるって楽しいな。
それで、僕もつい気が大きくなって、
「これなら大会に参加してもいいかも」
と自分から言ってしまった。
本当はこのまま駅前のファミレスか喫茶店にでも行って、どうするか話したかったけど、お母さんの作った夕食が待っているので、今度集まって話し合うことにして、泣く泣く今日は解散になりました(笑)。
別れ際、モルックの道具が入ったバッグを持たせてもらう。
ずっしりと重い。僕の道具と同じ重さだ。
思わず「大丈夫? 家まで運ぼうか?」と言ったけど、
「ううん、大丈夫。私、意外と力持ちなんだ」
といって、お米ぐらいの重さのあるバッグを軽々と持ち上げて、谷口さんと去っていった。
思いがけず充実した一日だったなーと、その日は楽しかったモルック体験をかみしめて過ごした。
次の日も休みだったので、モルックの練習をしようと思って。
朝から家の近くの公園に行って、バッグに入ったモルック棒とスキットルを取り出す。モルック棒を右手で握ってみると。ちょっと違和感がある。
そうだ! 昨日投げたモルック棒には、モルックの道具をプレゼントしてた番組『モルック魂!』のステッカーが貼ってあったけど、僕の道具にはなにも貼られてない……。
確か、昨日見た大智さんのモルックの道具には、バッグにもステッカーが貼られていたはずだ。
確かめてみたが、僕のバッグには何も貼られていなかった。
え、どういうこと?
大智さんが当たったモルックの道具には、番組ステッカーが貼られていて、僕が当たった道具には、たまたま貼られてなかったってこと?
そんなことってある?
送られてきた段ボールに貼ってある伝票を見ると、送付先は番組を放送しているテレビ局の住所になっている。
じゃあ、やっぱりこっちも本物なのか?
でも、住所は嘘を書いて送ってもばれない気がする。
番組からの手紙が一枚入っていたけど、これも簡単に作れるよな?
もし、このモルックの道具が番組からのプレゼントじゃなくて、別のだれかが僕に送ってきたものなんだとして。
いったい、誰が何の目的で、僕にモルックの道具なんか送ってきたんだろう?
と、右手で握りしめたモルック棒を見つめながら、しばらく考えてみたけど。答えは出てこなかった。
モヤモヤした気持ちが残ったけど、握ったままだったモルックの棒を空に向かって投げて、練習をはじめた。




