第30話 真相は……
これまで聞けなかったことを聞くなら、ミッドナイト4の控え室で僕たち4人だけになった、このタイミングしかない。
そのためには、先に僕が告白しておかないといけないことがある。
「ちょっといいかな?
ごめん、みんなにずっと黙ってたことがあるんだ。
実は、僕が持っているモルックの道具は、親に買ってもらったものじゃなくて。
『モルック魂!』の番組プレゼントで当たったものなんだ」
えっ! と驚く美帆ちゃん、大吾、茉莉ちゃん。
「それで、モルック大会で『モルック魂!』のスタッフさんに会ったときにその話をしたんだけど。番組プレゼントに使った道具は1セットだけで、それもプレゼントには番組ステッカーを貼ったりしていないって言われて。
ってことは、美帆ちゃんの持っているモルックの道具は、番組プレゼントじゃないってことになるんだけど……」
と言って、美帆ちゃんを見る。
「なんでそんな嘘をついてまで、僕をモルックに誘ったの?」
美帆ちゃんはまっすぐ僕を見つめたままで、何も話さない。
「それと、プリンスと美帆ちゃんって兄妹だよね? なんで隠してるの?」
と言うと、こっちは目を見開いて、ショックを受けた様子の美帆ちゃん。
でもやっぱり、僕を見つめてくるだけで、何も話さない。
「3人で、僕にないしょにしていることが、あるよね?
ミッドナイト4となにか関係があるんじゃないか? と思ってたんだけど、それは違ったみたいで、よかった。
一体、なにを僕に隠してるの?」
「瑠衣、それは……」
となにか言いたげな大吾。
「美帆、言っちゃいなよ!」
と美帆ちゃんをうながす、茉莉ちゃん。
すると、なにかの覚悟を決めた表情で、美帆ちゃんが。
「秘密にしてたのは……。
私が……私が!
『瑠衣君のことが好きになっちゃった』
ってことなの!」
と顔を真っ赤にしながら、僕に告白してくれたのだった。
…………。
えーっ!!!!!
僕、いま美帆ちゃんに、告白されちゃったんだけど!!!
途端に僕も顔が真っ赤になり、心臓のドキドキが止まらなくなる。
美帆ちゃんが僕のことを好きだなんて、マジか! ありえなくない!?
そ、そりゃ最近ずっと仲良くしてるし、周りから、からかわれたこともあったけど。
美人で人気があるし、僕より背が高いし、いつもクールだし。
どう考えても、僕が好きになってもどうにもならない相手だと思っていた。
で、なんとか声を絞り出して「ど、どういうこと……」と言うと。
顔を真っ赤にして下を向いたままの美帆ちゃんに変わって、大吾と茉莉ちゃんの二人が説明してくれた。
この件は、なんと! 中学時代にまでさかのぼることになる。
そう、僕がバレー部に行かなくなって、ボウリング場に通ってたころの話だ。
美帆ちゃんのお兄さんこと、プリンスは当時からボウリングに熱中してて、よくも悪くも地元で目立つ存在で、悪気はないけどいろいろやりすぎて、よく問題を起こしていたらしい。
それで、ボウリング場に通うプリンスのことを心配したお母さんが、妹の美帆ちゃんにプリンスを監視するよう、頼んでいたらしい。
美帆ちゃんはしかたなく、親友の茉莉ちゃんに付き合ってもらって、ボウリング場に併設されたUFOキャッチャーやプリクラで時間を潰しながら、プリンスの様子を見ていたらしいんだけど。
そこで、大吾とボウリングに熱中する僕を見て気になったらしい。
「気になったって、僕は別にボウリング場で目立ってなかったと思うけど。
と言うと茉莉ちゃんが、
「ほら、美帆って可愛い子が好きじゃん?」
と言ってくる。
「茉莉!」
と強い口調で美帆ちゃんが咎めるけど、「そう言うことか……」とちょっと納得する。
美帆ちゃん、意外とかわいいもの好きだしな。
でも、少し複雑な気分になるなぁ。
「それだけじゃないの! お兄ちゃんと同じぐらいボウリングがうまいのに、1球投げるたびにうるさいお兄ちゃんじゃなくて、淡々と投げる人のほうがいいな、って思って」
確かにプリンスは1球投げるたびに、「よし!」とか「イエス!」とか言って、両手を振り上げたりしていたけど……。
それで、僕がボウリングでプリンスと勝負してボコボコに負けた日も見ていたらしい。
「えっ、あのとき見てたんだ。ごめん、全然気づかなくて」
と、途端に恥ずかしくなったんだけど。
「ううん、隠れてこっそり見ていたし。
私、マイボール・マイシューズの高校生が、年下の中学生相手に本気になって、大差をつけて勝ったのが大人げなくて、本当に恥ずかしくて」
ああ、お兄ちゃん、かっこいいー! って感じにはならないんだ。
あの日以来、姿を見せなくなった僕のことを、美帆ちゃんはずいぶん心配してくれていたらしい。
「それで、瑠衣がボウリングに誘っても行かなくなった後、俺一人でときどきボウリング場に行ってたんだ。
併設しているゲーセンが目的だったけど」
と大吾。
で、僕のことを心配していた美帆ちゃんのために、茉莉ちゃんが大吾に声をかけて、3人は知り合いになったらしい。全然知らなかった!
ここから、話がややこしくなってくる。
春休みにボウリング場に来たプリンスが、3人に気づいて、大吾が僕といっしょにボウリングをやってたことも覚えていたらしく、僕が3人と同じ高校に入学することがプリンスに知られてしまったそうだ。
そこで、プリンスから意外な依頼があった。
「あの少年には、ボウリングとモルックの可能性を感じたんだ。
ぜひ僕と一緒にボウリングとモルックを発展させるための仲間になってもらえるよう、説得してほしい!」
なんてことを、頼まれたんだ。
プリンスは、イケメンで、スポーツ万能で、勉強もできるけど、変わり者で有名で。その妹として迷惑を掛けられることの多かった美帆ちゃんだったから、断ってもよかったんだけど。
僕のことが気になっていた美帆ちゃんは、高校に入学して、僕と同じクラス、それも隣の席になって、とても驚いたそうだ。
それで、モルック好きの芸人の話とかをしてたんだけど、BSの番組『モルック魂!』でモルックの道具を視聴者プレゼントしているのを見て、「モルックの道具が当たった」ことにして、僕をモルックに誘うことを思いついたらしい。
茉莉ちゃんが、
「もうさー。せっかくいっしょのクラス、それも隣の席になったっていうのに、なかなか仲良くならないしさー。
私も隣のクラスだと協力しずらいし。
そうしたら『モルック魂!』でモルックの道具を視聴者プレゼントにしているって美帆から聞いて、『美帆、それが当たったことにして、香坂君をモルックに誘って!』って、私が言ったの」
そうだったんだ……。
「いっしょに誰かを誘うことにすれば、瑠衣なら当然、俺を誘ってくると思ってた」と大吾。
それで、「プリンスがお兄ちゃんだってことは瑠衣に内緒にする」っていう条件で、プリンスに協力することにして。
モルックに誘うために必要だからと、モルックの道具はプリンスに買ってもらって、番組で当たったことにして、僕をモルックに誘ってくれたんだ。
番組ステッカーは、ミッドナイト4とプリンスがモルック棒に『モルック魂!』のステッカーを貼っていたので、そのほうが番組プレゼントっぽいかと思い、真似して貼ったらしい。
ステッカーは、前に番組にプリンスが出演したときに、監視目的で美帆ちゃんが見にいったときにもらったものだそうだ。
そのときに、ミッドナイト4にも挨拶して、知り合いになっていた。
「モルックの道具が瑠衣に当たってたんだったら、なんか変だと思うよなー」
と大吾が言う。
そう、そこから僕の疑いが始まったんだけど。
ちょっと混乱してきたから、頭の中で整理すると、
・プリンスと僕が勝負して、ボウリング場に僕が行かなくなる
・ほかの3人がボウリング場で仲良くなる
・プリンスが僕を仲間にしたくて、モルックに誘うことを3人に依頼する
・高校に入学して同じクラスになった美帆ちゃんが、モルックの道具が当たったことにして、僕をモルックに誘う
と、こういう流れだったのか。
でも、まだよくわからないことが。
「あの、プリンスの妹だってことを隠していたのは……?」
「私、あの人の妹だってこと、誰にも知られたくなかったの!
あの変人のせいで小・中と、ずっと周りにからかわれ続けてきたの!
だから、特に瑠衣君には絶対、知られたくなくて!」
と、美帆ちゃんが涙目で訴えてくる。
それで、ここからが一番大事な話になるんだけど。
美帆ちゃんが、ゆっくりと話してくれた。
「私……ずっと瑠衣君のことは『好きになっちゃいけない』って思っていたの。
瑠衣君が、身長のことに気にしているのは知っていたし。
『かわいいものが好き』な子とかに、『好き』って言われても嫌でしょ?
私も、瑠衣君のことは『かわいいから、好きなだけかも』って思っていたの。
思い込もうとしていたの。
でも、やっぱり大好きみたい……」
やばい、泣きそう。
僕も美帆ちゃんのことは「好きになっちゃいけない」って思ってたんだ。
こんなにきれいで、僕より身長が高くてスラっとしてて……とても優しい子が。
僕に優しいのは、みんなに優しいだけ、勘違いしちゃダメだ、ってずっと思っていた。
こんな素敵な子が、顔を真っ赤にして涙目で僕に告白してくれたんだ。
だから、僕もちゃんと気持ちを伝えないといけない。
そう思って、勇気を振り絞って、
「美帆ちゃん、僕は……」
と告白に答えようとした、その時!
控室のドアがガチャッと空いて、
「やあ、お待たせ!
松本さんとは話がまとまったよ!」
とプリンスと、ミィさんが部屋に入ってきた。
もー!!! プリンス、タイミングが悪すぎるよ!!!




