第3話 中学時代の思い出
中学のころ、大吾を含めた仲間たちとよくボウリングに行っていた。
アベレージ170オーバーで断トツで僕がうまかったんだけど。
よく行くボウリング場の一番端っこで、いつも一人で来てて黙々とボウリングしている人がいて。
高校生か大学生っぽくて、マイボール・マイシューズで決めてて、バンバンとストライクを取ってた。顔はまだ幼そうだけど、背がすごく高くて体も大きくて、オードリーの春日に少し似てたかな?
「プリンス」って登録名でゲームをしてたから、ちょっと痛い人かなと思ってたけど。力強くストライクを決めて、外しても見事にスペアで上手にリカバリーしてて、いつもそのプレーを見とれていた。
そのころは中学三年生になって受験生ってことで、仲間たちはボウリングに来なくなったけど、僕は模試でいい結果が出たときのご褒美ってことで、通い続けてたんだ。
大吾だけは、よくそれに付き合ってくれた。
ある日、大吾にも用事があって1人でボウリング場に行ったんだけど、団体の利用かなんかで珍しくレーンが空いてなかったんだ。それで帰ろうかと思ったら、レーンでプレーしていたプリンスさんに話しかけられた。
「やあ、君、よくボウリングしに来てるよね!
どうしたの? レーンが空いてないのかな?
だったら、僕とプレーしないか?
いつも一人で投げてると試合感がつかなくてね!
誰かと試合したかったんだ!」
とか言ってくる。
プリンスさんとは初めて会話をしたけど、それまで意識してチラチラ見てたから、何となく知り合いのような感じがして、腕試しもかねて、いっしょに3ゲームすることにした。
そしてプリンスさんとの3ゲーム勝負、それは僕の惨敗で呆気なく終わっってしまった。
間近で見るプリンスさんの投球に圧倒されて、おじけづいた僕はミスを連発してリカバリーもできないまま、実力の半分も出せなかった。
「どうしたんだい。いつもの調子が出ないみたいだね。
(制服を見て)君は中学生か。
三年生かな? 受験勉強で疲れているのかな?
君の実力はこんなもんじゃないはずだ! 調子のいいときにまた試合しよう!」
と言って、プリンスさんは僕を励ましてくれたけど。
あれから、あのボウリング場には行ってない。
あの対戦のあと、試しに他のボウリング場でプレーしてみたけど。
僕は、わかってしまったんだ。
僕はコントロールはいいけど、圧倒的にパワーが足りない。
「ボウリングにパワーはいらない」とか言われがちだけど、コントロールよく投げても、僕のボールはピンを倒しきれなかった。
ピンを倒すぞ! っていう気魄、根性のない遅いボールで、ピンの前でブレれてしまって倒しきれない。
だけど、ボウリングに本気になって、心と体を鍛える気持ちにはなれなかった。肝心なときコントロールを気にして力んでしまいがちで、「向いてないんだ」と思って、プリンスさんのことを避けるようになってしまった。
でも、もしかして、モルックだったら。
モルックが、僕を変えてくれるかもしれない。
なんて考えていたら、大吾の先攻で2セット目がはじまった。
大吾がガチャで10本のスキットルを倒して、次は僕の番だ。
苦い思い出は振り払って、無心でモルック棒を投げることに集中する。
正直、まだどう投げるのかが正解かよくわからないけど、ボウリングや練習の経験を活かして、ゆっくりと倒したいピンを見定めて、モルック棒を投げ続けた。
そして、2セット目も僕の勝利で終わった! 二連勝でこの試合は僕の勝ち!
でも、負けた大吾もなんだかうれしそうだ。
いいやつだな、大吾!
そのあとは続いて、以下のような組み合わせで1セットずつで対戦してみる。
〇大智 VS 香坂
34対50で、僕の勝利!
〇谷口 VS 大吾
谷口さんが3回外して失格、大吾の勝利!
〇大智 VS 大吾
50対32で、大智さんの勝利!
〇谷口 VS 香坂
44対50で、僕の勝利!
結果は、僕が3戦全勝で優勝! できすぎ! 練習しすぎたかな?
「すごいね、香坂君。とてもはじめてだと思えないよ」
と大智さん。
「いや、僕だけじゃなくてみんなうまいじゃない?
モルックの試合を番組で何度も見たことあるけど。
みんなもっと下手だった気がする」
と返す、僕。
すると大智さんが、僕をじっと見てきて(ドキドキ)、
「ねえ、香坂君。
モルックって、大会とかを広場や公園でやってるみたいなんだけど。
芸人さんが出ている全国大会とか世界大会とかみたいな、大きな大会があるけど。
地域のお祭りみたいに、10~20組でトーナメントやリーグ戦で競い合う小さい大会を結構やってるみたい。
それって、4人1組で参加することが多いんだけど……」
えー、大会! モルックの!?
もしかしてモルックの大会に出たいってこと!?




