第28話 暴かれた秘密
ミィさんの発言を聞いたアユムさんとユーマさんは、何かをあきらめたような表情に変わり、二人の後ろに立っていた斉藤さんだけが驚きの表情を浮かべている。
「優勝賞金が払えないっていうのは本当なのか、アユム」
とプリンスが聞くと、アユムさんが真相を話し始めた。
「俺たちがトーナメント戦で不正をしてでも勝ちたかったのは、ミィが言ったとおりで、優勝賞金が払えないからだ。
俺たちのチームが優勝すれば、賞金を払わなくて済んだからな」
と言うのを聞いて、僕はプリンスの後ろから、
「クラファンが成功して、スポンサーがいて、お客さんもいっぱい集まったのに!?」
と、驚いてつい聞いてしまう。
すると、虚な目で僕を見たアユムが、苦しげに、
「クラファンは……成功してない。失敗だったんだ」
と驚きの発言をした!
するとミィさんが、
「やっぱり! おかしいと思ったんだ!」
と叫ぶ! うん、どういうこと?
「クラファンの応募があったのは最初だけで、締め切り直前まで全然集まらなかったじゃない!
なのに、アユムもユーマもろくにSNSで告知しないし、私とマーで一生懸命告知したけど、数字が伸びなかった。
なのに、バズってないのに締め切り直前になって急に高額の応募が続いて、クラファンが成功して!
アユムは『クラファンなんて、そういうもんだ』って言ってたけど、『支援金の伸び方が変だ』ってマーと言ってたの」
とミィさん。横でうなずくマーちゃんさん。
「それにスポンサーの件だって、広告代理店に任せっぱなしで。発表されるのは試供品や飲料を配る話ばっかりで、ぜんぜん協賛金が集まっている感じがしなかったし。
それで、不安になって……私、プリンスに相談していたの」
と、プリンスのほうを見る。
プリンスは、
「ミィから相談を受けた僕が、こっそりといろいろ調べさせてもらったんだけど。
君たち、今回のフェスに参加するメンバーに、ほとんど謝礼を払ってないよね?
グッズやチェキ、有料体験会の売り上げを渡すとか、今後のコラボの約束で参加してくれた人たちばかりじゃないか?」
と問いかける。
「大会の規模や集まったはずのお金に対して、あまりにもフェスへのお金の掛け方や関わっている人数が少なくてね。こんなあぶなっかしい運営で、事故なくフェスが終わってよかったよ。
何か裏があるとは思ってたんだけど。そこまで資金難だったとはね」
顔を歪めて黙ってしまったアユムに変わって、ユーマが冷静に話し出す。
「僕たち、モルック系ユーチューバーとして、頭打ちになっていたことは、ミィもマーも気づいてたよね。
モルック・ブームの先駆けでモルック系ユーチューバーを名乗ったけど、だんだん後発に押されるようになって。
最近は、動画の再生数もチャンネルの登録者数も伸び悩んでいた。
だからこそ、まだ誰もやっていない内容で『モルック・フェス』を開催して、それをきっかけに、最近モルックに目覚めた人を新規登録者として取り込めないかと思ったんだけど。
それでクラファンでフェスの開催費を集めようとしたけど、最初の100万円ぐらいはすぐ集まったけど、その後は伸び悩んで、クラファンの期間内に300万円を達成できそうになくて。
このままだとクラファンが失敗して、モルック・フェスも開催できなくなる! やばい! ってなって。
アユムと相談して、急いで知り合い数人に頼んで、お金を払ってクラファンに応募してもらったんだ」
「なんでそんなバカなことしたの!」
とミィが叫ぶ。
アユムが、
「クラファンが成功したことにして、フェスの開催を決定すれば、スポンサーが集まってなんとかなると思ってたんだよ!」
と叫ぶ!
「クラファン失敗! なんてことになったら、ますます人気が落ちて、俺たちのチャンネルはおしまいだった!
実際に、クラファンが成功したことで、ネットニュースにもなったし! 登録者数も増えたじゃないか!」
とアユム。
「だけど、期待してたようにはスポンサーが集まらなくて、頼りにしてた代理店の担当者も途中で連絡が取れなくなって。
わずかに集まったスポンサー代も、クラファンに突っ込んだお金の穴埋めに使っちゃって、とても賞金100万円なんて出せる状態じゃなくなって……」
と赤裸々に告白するユーマ。
そんな事情があったんだ。
でも、だからといって、スキットルに仕掛けをして、得点を操作していいってことにはならないよ、アユム、ユーマ……。
「それで、優勝賞金100万円を払わずに済ますために、モルックの道具に仕込みをして、自分たちが試合で勝つように操作したってことか」
とプリンスが話をまとめる。
うなだれて、うなずくアユムとユーマ。
ユーマが、
「僕がスキットルのピンの下側をくり抜いて、無線で作動する超小型の振動装置を仕込んで。その上から木屑を詰めて塗装したんだ」
と言って、足下に隠していたモルックの道具の中から、スキットルを一本取り出して、ピンの底を見せてくる。
使い込まれた木製のピンの底は、土で汚れていて不自然な感じは何もない。見た感じ、中に装置が仕込まれているとは気づかない。
「これ、スマホのアプリをタップすれば、わずかな振動でピンが倒れる仕組みなんだけど。
試合中は操作できないから、大会の運営指示用ってことで僕が着けてたインカムから、斉藤さんに指示を出してたんだけど……」
とちらっと斉藤さんを見ると。
斉藤さんは心外です! といった表情で、
「わたしは、お金のことは何も聞いてないです!
あくまでフェスを盛り上げるための演出のためにやるんだって聞いてて!
『俺たちが決勝に行かないと盛り上がらないでしょ! 大丈夫、トーナメントに参加してるメンバーはみんなわかってるから』
って言うから、しかたなく協力したのに。
最後の試合で『2本倒せ!』ってインカムで指示が来たけど、『それはバレます。無理です』って言って、1本だけ倒したんですけど……」
あの場面で1本倒しても勝敗は変わらない。
確かに斉藤さんは、事情がよくわかってなかったのかも。
ユーマの話では、もともとはチャンネルで行っていたたモルックの遠投チャレンジで、何回やってもピンが倒せなくて、その日に撮影が終わらなそうだったので、スキットルを自由に倒せる仕組みを考案したんだそうだ。
モルック棒を投げて当たるまでの一瞬に、ピンを振動をさせることで、偶然倒れたように見せかけたらしい。
そうだ、ユーマは確か工学部出身で、前にスキットルに小型カメラを仕込んで撮影するのとかしてたっけ。
そんな前からヤラセをやってたのに、バレなかったんだ。
とても好きなチャンネルで、そんなヤラセをやっていたなんて聞きたくなかったな、って悲しい気持ちになった。
これは、後でわかったことだけど、アユムとユーマが始めたチャンネルだから、二人でお金を管理してたんだけど。
ミィさんとマーちゃんさんは、クラファンを達成したあたりから「なにか様子がおかしい」と思って、『モルック魂!』やチャンネルでの共演で知り合いだったプリンスに相談したらしい。
プリンスは、自分のチャンネルを「スポンサードしたい」という企業や「コラボしたい」というユーチューバーなんかに噂を聞いて、アユムとユーマが自分たちで言ってるほどにはスポンサーが集まっていないし、フェスにお金をかけていないことに、気づいたそうだ。
ここまでの話を整理すると、
・ミッドナイト4のチャンネルの人気が下降する
・人気回復のために「モルック・フェス」の開催を決めて一発逆転を狙う
・「モルック・フェス」の開催資金を集めるために行ったクラファンがうまくいかない
・スポンサーからもらう予定のお金を使って、クラファンが成功したように見せかける
・フェスの開催決定を宣言して、大々的にスポンサーを集めようとしたが、うまくいかなかった
・優勝賞金100万円を支払うことができない状況になる
・自分たちがトーナメントで優勝することで、賞金100万円の支払いを「なし」にしようと考える
・スキットルに小型振動装置を仕込んで、スタッフにインカムで指示を出し、勝敗を操作した
というわけだったんだけど、あきれたなー。
「で、どうするんだい?」
とプリンスがアユムとユーマに聞く。
「どうもこうも、全部バレちゃったから、すべてを白状して、数百万の借金を抱えて、自己破産でもするしかないかな」
と自嘲気味に語るアユム。
それに対して、プリンスが、
「それなら、現状を打開するための提案があるんだけど」
と言って、みんなが驚くような話をし始めた。




