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第26話 疑惑

 鈴木さんと井口君が、なぜかさっき終わった試合の最後、僕が投げたところの動画をスマホで見せてきた。

 失敗した投てきはあまり見たくないんだけどなぁ、と思ったけど。

 僕が最後に、⑫ピンを狙って、⑫ピンと⑤ピンの2本を倒してしまった場面を、スローモーションにして、モルック棒がスキットルに当たる瞬間を拡大して見せてくる。


 あ、あれっ!?

 動画だと、モルック棒が、⑫ピンといっしょに倒れた⑤ピンには、当たってないかのように見える。

 そして当たってないのに、コンマ数秒後に⑤ピンが揺れて倒れた……。


 一緒に見ていた美帆ちゃんが「これ、モルック棒が⑤ピンに当たってない……?」と、僕が思っていたのと同じことをつぶやくと。

 鈴木さんが「そう! これって⑤ピンに当たってないよね!」と言ってきた。

 

「でも、角度でたまたまそう見えているだけかも」

と僕が言うと、井口君が「こっちも見て!」と別角度で撮った動画を見せてくる。


 別のスマホで撮った動画を見ても、モルック棒は、⑤ピンには当たってないように見えた。

 そして、なにも当たってないはずの⑤ピンが、コンマ数秒ずれて倒れたように見える。


 どういうことなんだ!

「これ、スキットルに何か仕掛けがあって、倒すことができるんじゃないか?」

と指摘する大吾。

「それなら、相手チームがどんな高得点のピンを倒したとしても、もう1本倒して、点を2点に替えることができるよ。

 それに、さっきの試合で、2セット目で2点を取れば勝てる場面で、2本倒して勝ってた!」

と茉莉ちゃん。


 そのときの動画も撮影してたので確認してみると、アユムさんが投げて倒したスキットルの倒れ方が、不自然なように見える。

 でも倒れ方が不自然ってだけで証拠になるんだろうか? 「負けたチームが言いがかりをつけているだけ」と言われたら、それで話は終わりかもしれない。

 細工が行われているかもしれないスキットルを調べればわかるかもしれないけど。その道具はいまやっている試合に使ってるし。


 それに、もしも仕掛けがなかったら?

 なにか違う方法でピンを倒していたとしたら?

 本当に言いがかりになってしまう。

 もっと決定的な証拠が必要じゃないか?


 そこで、僕が思い出す。

「そうだ! 『モルック魂!』のほうで、ミッドナイト4の試合をたくさん撮影してたはずだ。番組スタッフさんに動画を見せて相談してみよう!」


 急いで会場を探し回ると、いたいた。撮影しているカメラマンの横に『モルック魂』ディレクターの松本さんだ!


「松本さん!」

「あー瑠衣君、準決勝は残念だったね。後でコメントを撮らせてね」

とか言ってきた松本さんに。

「ちょと、この動画を見てほしいんですけど」

と言って動画を見せて、僕たちの疑念を話す。


 最初は半信半疑だった松本さんも、2回分の動画でスキットルが不自然な動きをしたのを見て、顔を曇らせる。

「ちょっと待ってね。これ、本当なら問題だわ。

 うちの番組が、ヤラセにかかわっていることになりかねない」

と言って、スタッフさんに何か指示を出して、控え室でノートパソコンをいじりはじめた。


「オーケー。今うちで撮ったミッドナイト4の試合のスコアを見たんだけど。

 試合の最後に、2本倒して勝った試合と、相手が2本倒して負けた試合があったわ。

 いつ撮影した試合なのか、いまピックアップしたから、得点シーンを見てみましょう」

と言って、ノートパソコンをカメラマンさんに向けて、

「遠藤、これとこれの動画の試合の、最後のシーンをピックアップして」

と指示を出した。

 そして、遠藤という人が、別のノートパソコンに保存されていた動画を再生して見せてくれた。


 そこに映っていたのは、見ようによっては当たってる? でもどうも当たってないようなのに、なぜかコンマ数秒後にピンが1本倒れている姿だった。

 松本さんが動画を見ながら、


「あ、あやしい……。

 だけど、これも決定的証拠とは言えないな。

 どうしたらいいんだろう。

 スキットルを確認すれば、わかるかもしれないけど。

 もし仕掛けのない道具と差し替えられていたら……」


 そのタイミングで、グランドから歓声が、沸く!

 どうやら、プリンスの試合が終わったようで、プリンスのチームが決勝に進んだようだ。


 すると、茉莉ちゃんが突然、

「美帆、いますぐプリンスに連絡して!

 私に考えがある」

と言って、美帆ちゃんに連絡を取るように促した。


 やっぱり茉莉ちゃんは、美帆ちゃんがプリンスの妹だってことを知ってたのか。

 でも、プリンスや茉莉ちゃんのことを信じていいのか?

 ミッドナイト4と繋がっていて、何か企んだりしてたとしたら、どうしよう?

 いや、大吾を信じるって決めたのと同じように、仲間を信じよう!


 それにしてもわからないことが一つある。

 こんなインチキをしてまで、ミッドナイト4はモルック・フェスのトーナメントに優勝したかったんだろう?

 インチキをしているのがバレたら破滅だし、そこまで勝ちにこだわるチームじゃないはずなのに。優勝賞金100万円が惜しくなったとか? でもそれなら最初から賞金なんかつけなければよかったのに。



 別の控室に戻っていたプリンスのチームと合流できた。

 決勝戦までもう時間がない。

 急いでプリンスにスマホの動画を見せて、僕たちの疑念を話す。


 プリンスは動揺することなく僕たちの話を聞いて、

「なるほど。そういうことか」

とつぶやく。

 うん、どういうこと?

「それで、何かプランがあるんだって?」

とプリンスが聞いてきたので、茉莉ちゃんから驚きの作戦を、プリンスに授けられることになったんだ。


 いよいよ、本日のクライマックス、「江戸川プリンス」と「ミッドナイト4」の決勝戦がはじまった!

 決勝戦も、先に2勝したチームが優勝になる。

 正直、不正疑惑が気になって、試合に集中できない。

 もし、ミッドナイト4がスキットルを自由に倒せるなんていう操作をしているんだったらモルックへの冒涜だ! 絶対に許せない!


 僕の見た感じだと、2チームの実力はかなり拮抗しているように見える。

 それで1セット目は、先攻の江戸川プリンスが勝利して、2セット目は、先攻のミッドナイト4が勝利し、早くも1勝1敗になった。

 2セット目の最後、ミッドナイト4の投げたモルック棒がスキットルに当たっていないのに倒れたような気がしたけど。

 でも気のせいかもしれない。うーん、判断が難しい。


 3セット目は、プリンスのブレイクショットで12点ゲットでスタート!

 後攻はアユムさんからで、こちらも12本ピンを倒す! 12対12!

 2ターン目、プリンスのチームのメンバーがまたガシャで12本ピンを倒すと、インカムをつけたユーマさんが⑩ピンを狙って倒す! これで24対20!

 3ターン目、プリンスのチームが無理目の⑫ピンを狙うも、外した!

 いっぽうでミィさんが⑧ピンを倒して、24対28!

 4ターン目、プリンスがまた⑫ピンを狙って今度は倒す!

 アユムさんが⑦ピンを倒して、36対35!

 プリンスのチームがまた⑫ピンを狙って外す! ユーマさんが⑪ピンを狙ったけど3本倒れて、36対38!

 ミッドナイト4が次のターンで上がれる!

 だからか、プリンスのチームが、かなり遠くになった⑫ピンを遠投で狙って! 当たった!

 ミィさんは、上がりの⑫ピンが遠くなったので狙わずに、近くの⑩ピンを倒す!

 これで48対48!

 2チームとも、あと2点で50点だ!


 次はプリンスが投げる番だ。

 プリンスは、目の先にある②ピンを倒せば勝ちだ。

 ②ピンは4メートルぐらい先の位置にある。

 ②ピンの近くには、④ピンがあるだけだ。


 そう、②ピンを倒せば2点で勝利。

 もし相手がスキットルのピンを倒す不正を働いても、ピンが2本倒れて2点、とどちらにしても、プリンスのチームの勝利になる。

 

「最後に、2点を取れば50点になれるようにできれば、②ピンを倒せば、もう1本倒されても、2点のままだから、得点の操作ができない」


 これが、谷口さんがプリンスに伝えた作戦だったんだ。


 ユーマさんが焦った様子でインカムで何か指示を出してるようだ。

 あのインカム、大会運営のために使っていると思っていたけど、スタッフに不正の指示を出しているんじゃないか?

 いま、斉藤さんあたりにピンを2本倒すように言ってるのかな?

 でもこの配置でプリンスが狙う②ピン以外が2本倒れたら、さすがにおかしいとみんな気づくはずだけど……。


 そう思ったタイミングで、プリンスが放ったモルック棒が華麗に②ピンを倒した。

 ……その直後、不自然に④ピンが倒れたけど、それだけ。

 2点を獲得した江戸川プリンスが、50点に到達し、勝利!

 江戸川プリンスが、このトーナメントの優勝を獲得して終わった。


 悔しがっているミッドナイト4のミィさんとマーちゃんさんの横で、青ざめた顔のアユムさんに、インカムに何か怒鳴ってる様子のユーマさん。

 明らかに様子がおかしい。


 さあ、ここからが本番だ。

 モルックのために、ミッドナイト4が行った不正を暴かないといけない!

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