第25話 激戦!の果てに
トーナメント1回戦を勝利した後、小休憩が挟まるので、用意されている控室に戻ると。
あれっ、控室からミッドナイト4のユーマさんが出てきた。
頭にインカムをつけて、スタッフさんに何かの指示を出している様子のユーマさんと目が合ったので、
「ユーマさん、お久しぶりです」
と挨拶すると、
「瑠衣くん、久しぶり。
準決勝、よろしくね」
じゃあ後でね、とそのまま立ち去っていった。
控室に入ると、大吾だけがいた。
「大吾、どうかしたの?
ユーマさんがいたけど」
「いや、なんか『試合をスマホで撮るのはいいんけど、ネットには上げないでくれ』って注意を受けたんだけど」
「それって大会の参加ルールに書いてあったよね? いまさら、そんな話をわざわざしに来たんだ?」
「ああ。事前に注意しているけど、今日のトーナメントの動画をSNSにかってに上げている人が多いみたい。
俺たちが次の対戦相手だから、応援する人に言ってほしいってさ。
特に得点シーンは、あとでチャンネルで紹介するかもしれないから、ネットに上げないでくれってさ」
そんな注意をみんなにして回っているの?
主催者の一人のユーマさんがわざわざ?
試合はライブ配信もしているのに、変なの。
あ、もう次の試合の時間だ! 行こう、大吾!
ついに、「ホワイト・ウッド」と「ミッドナイト4」による、トーナメント準決勝戦が始まった。
準決勝のメンバーは、一回戦と同じく美帆ちゃんと僕、大吾。茉莉ちゃんには引き続き、ブレーンとして作戦を考えてもらう。
ミッドナイト4も、アユムさん、ユーマさん、ミィさんの3人で、マーちゃんさんは応援に回るみたいだ。
じゃんけんで美帆ちゃんが勝ったので、僕たちが先攻だ。
1ターン目は、僕がブレイクショットで11本ピンを倒して、アユムさんがガシャで10本ピンを倒す。まずは11対10だ。
2ターン目は、美帆ちゃんが⑩ピンを倒して、ユーマさんが⑨ピンを倒して、21対19。
3ターン目は、大吾の⑦ピンを飛ばして、ミィさんが⑩ピンを倒し、28対29。
4ターン目は、僕が⑫ピンを倒して、アユムさんが⑫ピンを倒して、40対41。
そこからは、ミスもでて細かい点の刻みあいになったけど、なんとか僕たちのチームが先に50点を奪い、1セット目の勝利を勝ち取った。
2セット目は、ミッドナイト4からの先攻で、接戦になったけど、7ターン目で残り2点になったところでアユムさんが、やや遠い場所にある2本のピンをきれいに倒して、ミッドナイト4が勝利!
悔しいけど、やっぱりアユムさんって、うまいな!
そして3セット目、この試合を取ったほうのチームの勝利だ。
先攻の僕が投げたブレイクショットはガシャで、12本ピンを倒した! よし!
アユムさんも強めのガシャで、11本ピンを倒す。12対11!
2ターン目はスキットルがバラけたので、美帆ちゃんが⑨ピンを狙って倒す。
ユーマさんが⑧ピンを狙って、こちらもふわりで倒す。これで21対19!
3ターン目、大吾が狙った⑨ピン狙いで投げたモルック棒がピンをオーバーしてしまってゼロ点!
相手チームはミィさんが⑧ピンを狙って倒す。これで21対27!
4ターン目は、僕が⑨ピンを縦投げで狙って倒せて、アユムさんも⑨ピンを狙ったけど2本倒しになって、30対29。接戦!
5ターン目、美帆ちゃんが密集した位置にある⑧ピンを縦投げで倒す! ユーマさんが同じく⑧ピンをバックスピンで狙ったけど手前に落ちて外した!
これで、38対29!
よし! 次で大吾が⑫ピンを倒せたら、僕らの勝ちだ!
頼むぞ、大吾!
だけど、大吾が放ったモルック棒は、⑫ピンを倒すこともなく、他のピンを倒すこともなく、グラウンドの何もないところを跳ねていった。
信じられない! 大吾が1セットで二回連続でミスショットをするなんて!
それも、あんな明後日の方向に投げるなんて。
顔を合わせると、青ざめた顔の大吾。
はじめてのことに、僕も動揺してしまう。
そして、ふいにさっきユーマさんと会話してた大吾のことが思い出される。
ユーマさんと大吾は、なにかでつながっている……?
大吾、まさか、わざとミスショットしたんじゃ……。
なんて、よくない考えが頭をよぎる。
そんなことを考えている間に、ミィさんが⑨ピンを倒して、これで38対38のイーブンになった。次のターンで⑫ピンを倒したチームの勝利だ。
次は僕が投げる番だ。
モルッカーリのレーンに入って1分以内で投げないといけない。
⑫ピンは、⑦ピンと⑤ピンの間に挟まっている。
試合に集中して⑫ピンを狙って投げないといけない。
だけど、大吾のことが気になって集中できない。
いや、よく考えろ。大吾が僕を裏切る?
小学校からいっしょにバレーをしてて。
バレー部を辞めても、ボウリングにハマっても、いっしょにいてくれた大吾が?
モルックをいっしょにやってくれて、同好会をいっしょに作って、ここまでいっしょに予選を勝ち抜いた大吾が、僕を裏切る?
ありえない!
もし裏切ったとしたら、なにか理由があるはずだ!
そうだ。そうだよ。
僕は、大吾になら、裏切られてもかまわない!
そう思って、迷いを断ち切って、遠くに見える⑫ピンに集中する!
力みすぎないように気をつけて、右手で縦に持ったモルック棒をしっかりと握り、ピンとピンの間にある⑫ピンを狙ってイメージした軌跡を描くように、全身を連動させ膝のバネを深く使い、ふわりと空中にモルック棒を解き放った。
モルック棒は、縦にクルクルと周って、⑦ピンと⑤ピンの間にある、⑫ピン1本だけをぶち抜いた!
やった! 勝った!!!
…‥‥だけどそう思った瞬間、横の⑤ピンがふわっと倒れて、僕の一投は2点で終わった。
でも、まだ負けたわけじゃない。
そう思いながら、アユムさんの投げる一投を見つめつつ隣の大吾に、
「快心の一投だったんだけどなぁ。
ちょっと隣に当たってしまったみたいだ」
と声をかけると、大吾が、
「……俺が、二度もミスしなければ」
と声を絞り出す。
そんなことないよ、大吾。
「大吾、僕たちはチームだ。
全員で投げて、全員でミスして、全員で取り返す。
それがモルックだろ?」
と、大吾に言葉をかけたところで。
アユムさんが⑫ピンを見事に倒して、ミッドナイト4が、この試合の勝利を決めた。
湧き上がる大歓声。
「全員で負けたら、また次の試合を全員で目指せばいいじゃん。
ね、大吾」
何も言わない大吾。
武士の情けで、いまは顔は見ないでやるよ。
負けはしたものの清々しい気分で、4人で応援に来てくれた人たちのところに歩いて行く。
赤城先生や山下たちがいたのでお礼を言っていたら、スマホを持った鈴木さんと井口くんが駆け寄ってきた。
2人にもお礼を言ったんだけど、
「そんなことより、この動画を見て!」
と僕たち4人に、さっき終わった試合の、最後に僕が投げたシーンを動画で見せてきた。
えっ、この投てきがどうかしたの?




