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第23話 フェスに向けた練習の日々

 高校一年生の年末年始は、モルックの練習に明け暮れた。

 同好会のメンバーと、ファミレスでクリスマス会をして、初詣にはいっしょに行ったけど。それ以外はぜんぶ練習だ!


 年明け、モルック・フェス予選の様子が、ミッドナイト4のチャンネルで配信された。

 一次予選、二次予選は参加チームの紹介と対戦表などが、短い動画で簡単に紹介されただけだったけど。

 トーナメント決勝は僕たちのチーム「ホワイト・ウッド」を中心に、けっこうドキドキ、ワクワクする編集になっていて、動画を見ながら予選会の優勝を改めて噛み締めたのだった。


 それで、3学期になって学校に行くと、モルック・フェスに出場が決まったことがクラスでも話題になってて、今度は新聞部のインタビューを受けることになった。

 美帆ちゃんが中心になって答えたインタビューが学校新聞に写真付きで載ってから、学校内でさらにチラチラ見られることが増えた気がする。

 そんな、フェスにむけて練習する日々のある日、学校で事件が起こった。


 放課後、モルックを体験したい生徒に、いつものように鈴木さんがモルックの道具を貸し出そうとしたら、理科準備室に置いてるはずの道具が無くなってたんだ!


 モルック同好会は部室がないので、僕と美帆ちゃんのモルックの道具は、ちょっと重いけど、練習日に家からそれぞれ持ってきている。

 それで、赤城先生が買ってくれた道具だけ、理科準備室に置かせてもらっていたんだけど、部屋を探しまくったけど見つからない!

 それで、急いでみんなで職員室に赤城先生に報告に行った。


「先生、大変です!

 理科準備室に置いていたモルックの道具が見当たりません!

 誰かに盗まれたみたいです!」


 理科準備室は、薬品や実験器具とかあってセキュリティがしっかりしていると思ってたけど、厳密に管理されているのは薬品が入っている戸棚だけで、部屋は生徒が侵入しようと思えば難しくない。

 放課後、僕たちがモルックの道具を理科準備室から運んでいるのは周りに見られているので、生徒が盗もうと思えば盗めるんだ。


 僕たちからの報告を聞いた赤城先生は、

「あーやっぱり、盗まれたかー」

と、なぜかとても冷静な反応だった。

 それでスマホを取り出して「見つかるといいけど……」といじりだす。

 赤城先生……?


 すると少しして、

「あー、あったわ」

と言って、スマホの画面を見せてくれる。

 画面には、学校の敷地がある場所の地図が写っていて、何かを示す矢印マークが写っていた。


「私さー、絶対いつか誰かに盗まれると思って、『エアタグ』をモルックのバッグに入れておいたの」

 エアタグ……あー芸人さんの配信で見たことあるやつだ。スマホを無くしたときみたいに、荷物に入れておくとGPSで場所を追跡できるやつ。

「エアタグが捨てられてなかったら、この場所にモルックの道具があるはずよ」

とスマホを拡大して示された場所のことは、大吾が知っていた。

「ここ、バレー部の部室です」


 それで、文化祭のときにバレー部の人からクレームを受けたことを思い出した。

 ひょっとして、あのときのバレー部の先輩たちが盗んだのかもしれない!

 部室にエアタグはあるけど、どうやってモルックの道具を取り戻すべきか。

 僕たちは、作戦を練ることにした。



 次の日の放課後、校内放送で、

「理科準備室に置いてあったモルックの道具が紛失したそうです。

 見つけた人はモルック同好会の顧問、赤城先生にまで連絡してください」

と詳しい事情はふせたまま、アナウンスしてもらった。


 バレー部の部室の中にモルックの道具があることは、バレー部一年生の山下、斉藤、黒田の3人の協力で確認済みだ。

 放送されたタイミングで、3人がバレー部の部室でモルックの道具を見つけたことにして、騒ぎ出す。


「なんだよ、うるさいぞ一年!」

とイラつきを隠せない、その場にいた二年生の先輩たちに山下たちが、

「先輩、バレー部の部室にこんなものが!

 これってモルックの道具で、理科準備室から盗まれたものらしいです。

 どうしましょう!

 こんなものが部室にあったことがバレたら、問題になって冬の大会に出られなくなるかも!」

 それを聞いて、みるみる青ざめる先輩たち。


「さ、三年の先輩には絶対に言うなよ! 俺たちでなんとかしよう」

 そこで、山下が二年生の先輩たちに助け舟を出す。

「先輩。俺たちに任せてもらえますか。

 モルック同好会に知り合いがいるので、別の場所で見つかったことにしてもらいます!」

と言って、先輩たちにはモルック同好会にこの事実をなかったことにするために、相談しに行くと言って、モルックの道具をスポーツバックに隠して、同好会部員が待っている理科準備室に持ってきもらった。


「取り返してきたぜ!」

と楽しそうに準備室に入ってくる、山下、斉藤、黒田の3人。

 それで、盗まれたことはあいまいにして、「モルックの道具が見つかりました」と、校内放送でアナウンスしてもらった。

 これで事件は無事解決! ということにした!


 盗難をなかったことにするのは良くないことかもしれないけど、バレー部の3人には迷惑かけたくないし……。

 実は最近、学校でモルックが流行っていることを、あまりよく思っていない人がいることも知っていたんだ。


 担任の小倉先生から、「赤城先生、モルック同好会のことで、他の先生からいろいろ言われているよ」と聞かされていて。

 僕たちがアップしているわけじゃないけど、SNSでモルック同好会のプレー動画がアップされたり、校内でモルック同好会経由で許可を取らないでモルックをやっている生徒が結構いるらしい。

 だから、これ以上は悪目立ちしないように気をつけないと。赤城先生にも悪いし。


「ありがとう、山ちゃん。大事にならずにすんだよ」

「こっちこそ。先輩がごめんな。

 これで弱みを握ったから、二度とモルック同好会にはちょっかいを出させないから」

「ありがとう。

 ……いま週に何回か、学校でモルックの練習をしてるから、モルックを体験しにみんなできてよ。いつでも歓迎するよ」

「ありがと。

 バレー部が休みの日があったら、考えてみるよ。

 でもモルック同好会は楽しそうでいいなー。可愛い子がいるし」

「そっちだって女子がいるじゃん」

「うちは、女子バレー部のほうが大会の成績が上でさー。

 俺たち、下に見られてるんだよ」

「でも、山ちゃん。この前、女子に告白……」

「ばっばか! 余計なこと言うなよー」

「えーなになにぃ。聞いてないんだけどー」

 なんか久しぶりだな、このノリ。


「週何回も練習してるなんて、瑠衣もガチだな。

 俺たちも、県大会の上位を目指してるから、お前も頑張れよ!」

「うん! 今度でる大会で優勝するつもりだから、暇だったら見にきてよ」

「そっちこそ、応援にこいよ。大吾もだぞ」

 お互いにエールを送り、今後の再会を約束して別れた。


 そんなトラブルもありつつ、来る日に備えて練習を続けた冬の日々が終わり、3学期も無事に終了した。

 春休みが来て、いよいよ待ちに待った「モルック・フェス」の開催日を迎えることになった。

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