第22話 予選決勝だ!
モルック・フェスに参加するための予選の決勝戦。
相手チームは、モルック大会の動画で見たことある大学生のチームだ。
大学生のフットサルチームが、モルックにハマって作ったチームで、最近どこかのモルック大会で活躍しているを見たことがあった。
ユーチューブにチャンネルを作って練習や試合動画を見たことがある。モルックの大会の常連で『モルック魂!』にも、この前出演していたチームだ。
相手チームの選手は、いかにも体育会系! ってかんじでパワーファイターのようだ。
決勝の前に、「もっと気合を入れよう」となって、みんなで掛け声を出す!
「美帆、瑠衣、大吾、茉莉!
チーム、ホワイト・ウッド!
リラーックス!! エンジョーイ!!!」
よし、これで気持ちが入った!
決勝戦は、先に2勝したチームが優勝(時間無制限)するルールだ!
1試合目は僕たちのチームが先攻だったけど、激戦のすえ、47対50で相手チームに取られてしまった!
後がない2試合目では、相手チームの先攻だったけど、逆に僕たちのチームが34対50で取り返して、一勝一敗のタイブレークに持ち込む! 先攻有利のモルックでこの展開はなかなかないぞ!
運命の3試合は、僕たちのチーム「ホワイト・ウッド」の先攻で始まった。
美帆ちゃんが1ターン目のブレイクショットを投げる! ゆるガシャで12本全部倒した!
相手チームも1投目はガシャで、11本倒してくる。まずは、12対11。
2ターンで目は、まだガシャで僕が投げて点を稼ぐ。7本倒せた。
相手チームも、強めのガシャを投げて9本倒して、これで19対20。
3ターン目は、大吾が飛び出した⑫ピンを狙って投げる。よしゲット! 12点追加!
でも、相手チームも⑫ピンを狙って上手に倒してくる。これで、31対32!
もう⑫ピンが遠くなりすぎて倒しにくくなったので、ブレーンの茉莉ちゃんから、⑩か⑨ピンを倒して上がりを目指そうと指示がくる。
目の前にあるスキットルの位置だと、相手も⑩か⑧ピンで上がりを目指すだろうから、まずは⑩を倒した上で、さらに⑩ピンを倒しづらい位置まで飛ばしたい。
4ターン目の美帆ちゃんの投てきは⑩ピンを倒せたけど、ほかのピンも倒れてしまい、3点になってしまった。
一方、相手が⑩ピンを倒してきて、これで34対42!
やばい! 次で相手チームに⑧ピンを倒されたら負けてしまう!
5ターン目、僕の投てきで⑧ピンを遠くに飛ばす! 当たったけど、また周りのピンが倒れてしまって得点は4点だけ!
それで、相手チームが⑧ピン狙いで50点を目指して投げたけど、ミスして2点! これで38対44。
6ターン目は、大吾の番だ。⑫ピンを取りに行くのはリスクが高いので、大吾が相手の上りピンの⑥ピンを飛ばす! ⑥ピンにあたったけど、他のピンも倒して2点になった。
相手がその⑥ピン狙いで投げるたけど! 3本倒してしまい、これで40対47!
相手の上りの③ピンは簡単に取れそうだ!
7ターン目。美帆ちゃんの番。⑩ピンは取るのが難しそうだ。③ピンを取れないように隣の⑦ピン③ピンを寄せる感じで斜め投げで、⑦と③ピンを倒して、2点!
それで、相手チームが③ピンを狙うけど、2本倒してしまった! 危ない! 3本倒されたら終わってた!
これで、42対49!
①ピンは倒しやすい位置にある!
8ターン目、ここで僕が決めないと負けてしまう!
いまは④ピンと⑦ピンの間にはさまれているけど、上りピンの⑧ピンを狙うしかない!
「リラーックス、エンジョーイ」
と小さくつぶやいて、体に力を入れすぎず、⑧ピンを倒せるモルック棒の軌道をイメージして、柔らかく、だけど全身を連動させて、力強く縦に持ったモルック棒を空中に解き放った!
縦方向にくるくると回ったモルック棒は、④ピンと⑦ピンの間に挟まれた⑧ピンだけをはじいて、他のピンを倒すことなく地面に着地した。
よしっ! ⑧ピン、ゲット! これで2勝した、僕たちが優勝だ!
僕のウイニングショットで優勝したんだ!!
これで、モルック・フェスのトーナメントに出場できる!
湧き上がる歓声の中で抱き合うチーム「ホワイト・ウッド」!
そして、なんと! 大吾が僕を肩車してきた!
さらに歓声が沸く! 大吾の肩の上に座って、両手を空に突き上げる僕!
うぉぉぉぉー! やったぞー!
肩車から降りたら、猛烈に恥ずかしくなったけど。
この勝利は、僕だけの手柄じゃないし(笑)。
それまでの緊張と疲れでその場にへたり込んだ僕に、大吾が手を差し伸べる。
立ち上がって、もう一度抱き合って、お礼の言葉を述べる。
「大吾、僕と一緒にモルックをやってくれてありがとう!
バレー部を辞めたときも、ボウリングを辞めたときも、なにも言わず、いっしょにいてくれて……。大吾がいなかったら、ここまで来れてなかったよ」
すると大吾は、
「瑠衣、俺は……」
と、なぜか、うれしそうな、申し訳なさそうな、変な顔をする。
隣にいた美帆ちゃんにも、
「モルックに誘ってくれてありがとう!
こんなに夢中になれたことなかったよ。
結果を出せて最高だよ!」
茉莉ちゃんにも、
「いつもチームを支えてくれてありがとう!」
と、感謝の言葉を述べたんだけど、なんか、みんなリアクションが薄くない?
けっこう勇気を振り絞って、お礼の言葉を言ったんだけど(笑)。
相手チームのリーダーから、「おめでとう!」と声を掛けられる。
「君たち強いね!リベンジさせてよ!今度うちのチャンネルに出てほしい」
と言われる。
今回はぎりぎりで勝てただけだ。
チャンネルへの出演は学校に聞いてみてOkならでたいし、逆に大学生がどんな感じでモルックを練習しているのか知りたいので、合同練習をお願いしたいな。
優勝決定後、ミッドナイト4のメンバーに呼ばれて、学校の校庭の台に登って、
「優勝はチーム『ホワイト・ウッド』!」
と表彰された。
それで、ミッドナイト4の歩さんが、
「このチームが、モルック・フェスのトーナメント戦に出場します!」
と宣言してくれた。
その様子は、モッドナイト4のユーチューブ・チャンネルと、BSの番組『モルック魂!』の中でも紹介される予定で、それぞれのスタッフさんから、インタビューを撮ってもらったりした。
こうして今日の予選会は、チーム「ホワイト・ウッド」の優勝で幕を閉じたけど、まだ大会は終わらない。
そこから、ミッドナイト4のエキシビジョンマッチが数試合行われた。
どうやら、ミッドナイ4が開催したクラファンに申し込んだものの、春のフェスには日程的に参加できない支援者に向けて、今日この場で「いっしょにモルックができる券」や「ミッドナイト4とチェキ」といった特典を使ってもらうらしい。
今日の予選大会が終わるまで時間ができたので、学校内に用意されていた控室で休みを取ることにしたんだけど。
あれ! 大吾が真莉ちゃんに声をかけてを、控室を出て行った。
前から思っていたけど、あの二人って、ひょっとして(ドキドキ)!
幸い、美帆ちゃんもどこかに行ってて部屋にいなかったので、僕は二人の後をつけるという誘惑に勝てず、こっそり後をつけることにした。
廃校を利用した控室の周辺にはひと気がなくて、少し距離を空けて二人の後をつけると、校舎を出て角を曲がったところで、二人でなにか話しをはじめたので、周りを気にしながら、耳をそば立てる。
ひそひそ声で、良く聞こえないなと思ったそのとき、大吾が急に大きな声で、
「いつまで、瑠衣に黙ってないといけないんだよ!」
と叫んだ。
すると茉莉ちゃんが。
「まだそのタイミングじゃないって! 大吾もわかっているでしょ!」
と大声で返事する。
「もう耐えきれないんだよ!」
と大吾。
「それを言ったら、私だって……」
と深刻そうな声の茉莉ちゃん。
なんか、僕が期待したようなと話とはちがうみたい。
すると、ひそひそ小声になり、
「瑠衣に悪い」
「美帆に聞いてみる」
といった声が、なんとか聴きとれた。
うん!? これって僕に内緒の話が、他の3人にあるってことだよね???
すると、このタイミングで「本日の予選会はこれで終了で~す!」というアナウンスが流れて、スマホには美帆ちゃんから「帰ろうよー」というメッセージが。
急いで、二人より先に控室に戻ると、美帆ちゃんの隣にミッドナイト4のアユムさんがいて、なにか話をしていた。
「アユムさん、モルック・フェスを開催できるなんて、本当にすごいですね。
スポンサーを集めるのとか、大変だったんじゃないですか。
スポンサーの会社に行って、お願いしたりするんですか?」
って何を話しているの? 美帆ちゃん?
「いや、その辺りは代理店を入れてやってもらってる。
俺は話を詰めるときに、メーカーの担当者とオンラインで、チャッチャと会話するだけ。簡単だよ」
とアユムさん。
「すごーい。あ、瑠衣くん。どこに行っていたの?
もう控室をでないといけないみたい。
茉莉と大吾君にも、連絡したんだよ」
と美帆ちゃん。
「瑠衣くん、優勝おめでとう!
予選から勝ち上がってくるなんて感動したよ!
本選で絶対、戦おうね!」
とアユムさんが言って、控室から出ていった。
それで、戻ってきた大吾と茉莉ゃんと、4人で控室を出て、最寄り駅に向かって歩いて帰ろうとしていると、
「キャー!瑠衣くんですよね。
私たちファンなんです。握手してもらえますか!」
といきなり高校生っぽい女の子たちに、話しかけられた!
「僕、そういうのじゃないんで」
としどろもどろに握手は断わって、応援してもらってることのお礼だけ言って、その場をごまかした。
すると横にいた美帆ちゃんに、クールな視線と表情で、
「瑠衣くん、人気だねー」
とか言われて。
「いやっ! 見本ちゃんのほうが全然人気あるでしょ!
最近、学校でいろんな生徒に告白されてるけど、断ってるって噂を聞いてるよ!」
と心の中でつぶやく。
この日は。帰りが遅くなったし疲れていたので、駅でみんなとお別れして家に帰って、すぐベットに寝転がる。
無事に予選通過できて、本当によかった。
公式の大会じゃないけど、初めて大会で優勝できて、うれしい……。
横になりながら、ぼーっと、モルックをはじめてこれまでのことを振り返す。
楽しい思い出がたくさんあるけど、ちょっとひっかかったことも考えてみる。
・番組の視聴者プレゼントで、モルックの道具が当たったのは僕で、美帆ちゃんの道具は当たったものではない
・ミッドナイト4とプリンス、美帆ちゃんのモルックの道具にはBSn番組『モルック魂!』のステッカーが貼られている
・プリンスと美帆ちゃんは兄妹で、それを周囲に隠している
・ミッドナイト4とプリンス、美帆ちゃんは知り合いのようだ
・美帆ちゃん、大吾、茉莉ちゃんが、僕に何かを隠している
・隠しごとには、ミッドナイト4も関係している?
こんなものかな?
いろいろ気にあることが増えたけど、今日は1日何試合もモルックの試合をして、疲れたり、優勝の余韻をかみしめて、ゆっくり休むことにした。




