第20話 予選を突破するぞ!
モルック・フェスの予選突破を目標に、学校内外で練習する日々を過ごして。
いよいよ待ちに待った、来春開催のモルック・フェスのトーナメント出場枠をかけた予選会の日を迎えた。
それはクリスマス直前の休日、東京の郊外にある学校の跡地を借り切った場所で大々的に行われた。
といっても予選なので、あまりお金をかけられないらしく、参加希望者は先着順で、参加料を払ったうえでモルックの道具を持ってこられるチームに限るという条件付きだった。
それでも応募するチームが多かったようで、先着順で決まった128チームで朝から一次予選リーグを戦う。そして一次予選リーグを勝ち抜いた32チームで、さらに二次予選リーグを行い、二次予選を勝ち抜いた8チームで、昼からのトーナメント戦を行って本選出場の一般枠を争うことになる。
集まったチームは、モルックの配信をやっている大学生チームやモルックの大会でよく見かける有名な社会人チームも入れば、ただ目立ちたいだけで奇抜なコスプレをしたチームとか、賞金目的で申し込んだんだろうってチームもいて、さまざまだ。
一日でこんなにたくさん試合をするのは初めてだけど、最後まで勝って予選を突破するぞ! おー!
いろいろなチームでごった煮にの校庭にある台に乗って、ミッドナイト4のアユムさんが、高らかに開会宣言を行って大会がスタート!
くじ引きで決まった試合コートに散らばって、全部セルフで試合を開始する。
一次予選は、2~4人のメンバーがいる4チームごとに、1試合1セット(20分制限)のリーグ戦で、リーグ一位のみ二次予選に進める。正直、参加チームのレベルがバラバラすぎて、強いチームと当たるかどうかは運次第なかんじだ。
始まった試合を見ていると、モルッカーリを踏んづけて投げたり、いつまでたっても投げなかったり、得点のつけ方がわからなかったり、ルール違反、マナー違反をするチームが続出して、いろんなところで揉めごとが起こっているっぽい。
さすがに、大会の運営が雑すぎないか?
僕たちのチーム「ホワイト・ウッド」は、お揃いの新ユニフォームで大会に挑んだ。上下が白のジャージに、黄緑の帽子にWWのマークなのは変わらないけど、前よりグレードアップしたジャージと帽子にかわいいワッペン。それにグレーの水玉をランダムに縫い付けて、より白樺っぽさを増したものになった。
このユニフォームは、文化祭を見にきた大智さんのお母さんが、黄緑の帽子と上下白のジャージだけだと「白樺に見えない」って言って、4人分のアップリケをつけてくれたんだ。ありがとう、大智さんのお母さん!
ひょっとして、プリンスのド派手な衣装もお母さんが作ったのかな? これで、グッとチームっぽさが増した気がする。
僕たちの1試合目の相手は埼玉の大学生チームで、ミッドナイト4のファンで、面白そうだからと予選に参加したらしい。モルックの経験はほとんどないようで、向こうがモルッカーリを踏み越えて0点を連発したので、余裕で勝利することができた。
まずは1勝目!
2試合目は、体がでかい社会人チームで強そうに見えたけど、ガチャばっかり投げてて一本倒しが全然うまくいかなくて、高得点の加点ができないチームだったので、僕たちはきっちりとポイントを積み上げていき、またも余裕で勝利!
これで2勝目!
3試合目は、若いファミリーのチームで、お父さん、お母さん、子ども、親戚のお燃ちゃんという構成。こちらのチームが先攻になり、1ターン目は僕が投げたけど、ブレイクショットであまり倒せず、相手チームに得点を先行されてしまい焦ったけど。相手の上がりピンをなんとか取れないように、近くにピンを寄せて邪魔できて、相手チームの50点オーバーを誘っうことができた。それでなんとか勝利をもぎ取った!
これで3連勝で、一次予選リーグを突破することができた!
一次予選を勝ち残った32チームが、4チームごとに分かれてさらに二次リーグ戦(1試合2セットで30分の時間制限あり)を行い、トーナメント戦に進む8チームに絞り込まれる。
その、二次予選リーグの第一試合で僕たちのチームにトラブルが襲い掛かった。
第一試合1セット目は、若い社会人チームとの接戦になったんだけど、50対45で僕たちが勝利。2セット目は47対50になって相手チームが勝利した。これで一勝一敗になったんだけど、得点差で僕たちのチームが2点差で勝利! だったはずなんだけど……。
相手チームのリーダーらしき人が、
「一勝一敗だけど、合計点の差で俺たちの勝利だ!」
とまさかの勝利宣言を!
あわてて、僕たちは、
「いや、一勝一敗で僕たちが97点で、そっちが95点なので、僕たちの勝ちです!」
といって抗議する。
でも「そっちの計算が間違いで、僕たちが98点で、そっちが97点で、こっちの勝利のはずだ!」なんて言い出す。
そのままお互い一歩も譲らず、話が平行線になったところで、相手チームから、
「それなら、『モルックアウト』で勝敗を決めよう」
と提案してくる。
モルックアウトとは、モルックで勝敗が付かなかったときに行う、サッカーで言うPK戦のようなものだ。
僕たちは、谷口さんが得点をつけ間違えるなんてミスをするとは思えないから、そんな決め方はしたくない。
しょうがない、スタッフさんにきてもらって判断してもらうしかないかと思っていると。谷口さんが、相手チームで記録係をしていた人と何かしゃべってる。
すると、記録係の人が慌ててリーダーっぽい人に耳打ちすると、急に相手チームが慌て出して、こそこそと話をすると、
「こっちの記録ミスだったようだ。 そっちの勝ちでいいよ」
と吐き捨ているように言って、そそくさと逃げるように、その場を立ち去っていった。態度悪っ!
でも僕たちの勝利が確定してよかったけど、何が起こったんだ?
「谷口さん、相手チームの人と何を話してたの?」
「私、モルックの集計で得点をズルする人がいるって聞いてたから、毎回、相手チームの記録係の人と、モルックの得点を記録するアプリを見せ合って数字を確認していたの。
だから、私が入力した数字が間違ってるはずなくて、絶対に向こうがアプリに付けた点数を改ざんしたんだと思って。
だから向こうの記録係の子に、『得点を付けるアプリには、改ざん防止のために履歴が見られるようになってるので見せてみて』って言って、それを『運営スタッフに報告したいし、SNSにも載せたい』って言ってみたの。
そしたら、向こうが『数字の記入ミスだったようだ』って認めてくれたの」
「すごい! そんな機能がモルックのアプリにはあるんだ!」
と僕が驚くと、
「ううん。ないよ、そんな機能。
そう言えば、相手が数字の改ざんを認めるんじゃないかと思って言っただけ」
「機能ないの!?
もし相手がアプリを見せてきたらどうする気だったの?」
「その時は、『そっちのアプリは機能がついてないんだねー』とか、『アップデートしたら機能が無くなったのかな? 残念~』とか適当なことを言ってごまかしてたわ。
記録係の人、あまり賢そうじゃなかったから、ワンチャン信じるんじゃないかと思って」
谷口さん、大胆なことをするんだね……。
「まあ同好会のメンバーには、記録用に試合の録画を毎回頼んでいるから。
そっちを見れば何点ずつ取っったかわかると思うんだけれど。
確認に時間がかかるし、映り方次第では得点がわからない可能性があるから。
脅かしたほうが早いかなと思って」
えー、谷口さん、なんかすごいこと言ってるんだけど!
「やるじゃん、真莉!」
と大吾が谷口さんをほめて、二人でグータッチしてる。
谷口さん、味方としては心強いけど、敵にはしたくないな……。
そして、その後は、危なげなく予選の試合で勝利を重ねて、お昼前には無事に予選突破を決めました!
まあ、今回の目標は、あくまで予選会の優勝なんで!




