第17話 文化祭でモルック体験会!
二学期になってすぐ、生徒会からモルック同好会が呼ばれた。
「何かしたかな?」とびくびくしながら、いつもの4人で生徒会室に行くと、文化祭実行委員の先輩たちがいて、意外な依頼を受けた。
「はじめまして。文化祭実行委員の稚内です。
モルック同好会のことは噂で聞いています。大活躍しているんだってね」
といきなり過大評価をされて、なんだか恥ずかしい。
「生徒会室に来てもらったのは相談があって。
君たち、秋の文化祭でモルックの体験会をやってもらえないかな?」
文化祭でモルック体験会をやる?
モルックはスポーツだけど。どういうこと?
「実は、君たちの活躍のおかげで、文化祭の教室展示で『モルック体験会』をやりたい! ってクラスが何組もあって。
実行委員会としては、モルックはスポーツだけどな……と思うんだけど。『フィンランドの文化を紹介したい』とか言ってくるクラスもあって。
ただ、モルック同好会を承認する際に、生徒会のほうで屋内での活動を禁じたそうだね。文化祭でも、もし見に来た子どもたちに木の棒が当たったりしたら、大変なことになると思う」
屋内でモルックをやっても大丈夫だとは思うけど、確かによくわかってない人たちが狭い教室でやったら、どこに飛んで跳ね返ってくるか、わからないかも。
「それで安全面を考えて、クラスでモルックの展示をするのは却下することになったんだけど。
せっかくうちの学校にモルック同好会ができたんだから、『文化祭で同好会にモルックの体験会をやってもらったらどうか』って意見が生徒会から出てきてね。
やってもらえると、文化祭が盛り上がると思うんだけど、どうかな?」
文化祭って、クラスと文化系の部だけのお祭りだと思ってたけど、運動系でも何かやっていいんだ?
4人でひそひそ話をして、大智さんが代表して
「提案いただいてありがとうございます。やってみたいと思いますが、今日ここにいない同好会のメンバーにも相談して決めて、改めて報告したいと思います」
と言って、いったん生徒会室を後にした。
さっそく、鈴木さんと井口君、顧問の赤城先生にも相談した。
モルック・フェスの予選に向けた練習は行わないといけないけど、文化祭でモルックをアピールすることもやってみたい! なのでモルック体験会の話を受けることに決めて、具体的にどうするかを話し合うことにした。
文化祭まで、もう2カ月ないぐらいだ。
それで、文化祭中に空いているグラウンドを借りて、2つあるモルックの道具を使って、体験コーナーを2コート設置することにした。
同好会のメンバーのクラスや部活について、文化祭での仕事やスケジュールを確認して、モルック体験の指導係・受付係などの役割分担を行う。
モルック体験の会場には、入口のゲートを作って、モルック発祥の地「フィンランド」について調べたことを紹介するボードやモルックの歴史・ルールについてまとめたボードを展示することにした。
やっぱり文化祭だからね! 文化的なこともしないと!
クラス展示の準備の合間に、モルック体験会を準備するのはなかなか大変だったけど、同好会の練習をしている放課後、ときどき「モルックを体験したい」って言ってくる人たちがいて、モルックの道具を貸し出して仲良くなった人もいたので、ボード建てや当日のモルック体験会を手伝ってもらえないかと相談して、OKをもらった。
文化祭まであと数週間となり、同好会の教室はなくて赤城先生が理科の先生だから、理科準備室を借りてボードを作ったり、宣伝用のチラシやポスターを作って、商店街に行ってスポーツ店やボウリング場に貼らせてもらいに行ったりした。
文化祭のパンフレットにも校内地図のグラウンドに「モルック体験会場」と載せてもらったけど、いったいどれくらいの人に気づいてもらえるかな。
まあ、人が集まらなかったら、モルックの試合をみんなでやってればいいか(笑)。
いよいよ文化祭の当日になり、一日目がはじまる。
同好会のメンバーでグラウンドに集まって、体験希望者を待っている。
学校の校門から校舎に行く間にグラウンドを横切るから、モルック体系会に気づいてくれる人がいると思うし、作ったチラシを横切る人に配る気満々で待機していた。
来場時間になって、校門から続々と父兄や他校の学生、地元に住む人たちが入場してきた。
すると、小さな男の子が、ダダーっとこっちに走ってきた。
あれ、モルック体験の希望者かな?
男の子の後ろからご両親と思われる人たちが、遅れて駆けつけてきた。
「もー、あっくん。一人で走っちゃだめでしょ」とお母さんっぽい人。
「ここがモルック体験コーナーですよね?」とお父さんっぽい人。
小学生低学年っぽい男の子が目を輝かせて、きょろきょろしている。
「はい、こちらがモルック体験コーナーです。
3名様ですね。受付をお願いします」と谷口さんが受付を行う。
そして、「こちらへどうぞ」と大智さんが、白線で囲んだモルックの試合コートまで案内して、モルックの基本について説明を始める。
他にも参加希望者がワラワラと入口に集まってきたので、慌てて予定通り、僕と谷口さんが受付を担当して、大吾が二番目に受付を済ませたカップルを、試合コートまで誘導して、同じようにモルックの基本を説明する。
モルック体験は、「モルックとは~」と簡単にその歴史やルールを説明して、参加者には、まず12本並べたスキットルをガシャで倒す、ブレイクショットを体験してもらう。
数人で参加する人が多いので、ブレイクショットを体験してもらったら、そのまま二組に分かれて試合を体験してもらうことにした。
最初に来た男の子が、モルック棒を投げ始めて、全然当たらないけど楽しそうにキャッキャやっているのが見れてほほえましかったんだけど、僕がお客さんの様子をゆっくり見れたのはここまでだった。
なぜか、どんどん参加希望者がやってくる! 急いで受付するものの、一組目のモルック体験がすぐには終わらないから、どんどん人が溜まっていく。
やばい、こんなに人が来るとは思ってなかった!
急いで、モルック体験の時間を一組あたり20分ということにして、予約が済んだ直近の人だけその場に待っててもらうことにしたけど、グランドには人が増える一方だ。
鈴木さんと井口君には、待っている人の列の整理を担当してもらってるけど、試合コートは2つしか用意してないから、予想外の事態に段取りも悪くて、現場は混乱している。
「予約が済んだ人は、予約時間になったら試合コートに集まってください。
それまでは、文化祭の展示や出店をお楽しみくださーい!」
と大きな声で伝えたり、今来た人に状況を説明したりして、なんとか混乱を解消しようとしたけど、どんどん人が集まってくる!
気が付いたら開始から、もう1時間が経っていた。
やばい!
学園祭は10時から17時までの9時間で、最大で9時間×3組×2コート=54組がモルックを体験できるはずだけど、もう予約が30組を超えてしまった!
運動場には数十人の人が集まってしまってて、モルック体験を見学したり、スマホをいじりながら順番が来るのを待っている。
文化祭を見回っている実行委員の人たちが「何事か」と様子を見にきたので、体験会の人数には限りがあること、グランド内では待たないでほしいこと、などをアナウンスしてもらうように依頼したけど、その間も参加希望者が増える一方だった。
どうやら体験会に来た人の中には、文化祭ついでに参加したんじゃなくて、体験会が目当てで来た人もいたようで、校門から体験会場に一直線に来て、モルックを体験したらそのまま帰る人もいたようだ。
モルック人気をなめていたわけじゃないけど、家の近くの学校で無料でモルックが体験できるというハードルの低さに、思いのほか、人が集まってしまったようだ。
それで、午前中でモルック体験の予約を締め切って、順番が来た参加者を呼んで名前を確認して、試合コートに誘導したり、予約が終わったことを知らなくて来た人に事情を説明したり、謝ったりするのを続けた。
お昼休憩を取るつもりでいたけど、とてもじゃないけど会場を離れられない。4人のために、赤城先生や友だちが持ってきてくれたサンドイッチやホットドックを食べたりしながら、高校生になって初めての文化祭一日目は、終了までグラウンドで働き続けて終わってしまった。
他のクラスや文化部の展示を見るどころから、自分のクラスの展示の手伝いにすら行けなかった(ごめんなさい!)。
最後の参加者のモルック体験が終わって閉門の時間がくると、その場に座り込んでしまった大杯さんと大吾。二人はずっと立ちっぱなしで接客していたので、そうとう疲れたはず。
僕と谷口さんも慣れない受付や問い合わせ、体験ができなくて怒る人もいて、そのクレーム対応などで疲れ切って、ぐったりしていたら……。
文化祭の実行委員と風紀委員の人たちが、僕たちのところにやってきた。




