第13話 新たな出会いと驚きの真実
ボウリング系ユーチューバーのプリンスに再会できただけで驚きだったのに。
いま、目の前にユーチューバー「ミッドナイト4」のアユムがいる!
プリンスが、
「やあ、アユム。友人の少年と未来について語っていたところだよ」
と親しげに話しかける。
いや友人って! プリンスと会ったの1年ぶりなんだけど!
僕の名前も覚えてませんよね? プリンス!?
「あれ、君ってどっかで見たことあるよね」
と僕を見て、アユムが話しかけてくる。
えっ! アユムが、僕を知ってくれてる?
あ、ひょっとして? と急いでスマホをいじって、
「この動画ですかね?」
と、ユハさんがバズったモルックの動画を再生させる。
「あーこれこれ。これにユハさんといっしょに映ってたのが君かー。
ユハさんの教え子なんだよね? 高校生?
いい師匠を見つけたねー。
俺たちもユハさんに習いたい!」
なんて、アユムが気さくに話しかけてくる。
「ユハさんのこと、知っているんですか」
「知ってるよー。
前に大会で対戦したことあるけど、全然勝てなくて。
俺たちのチャンネルにも出てほしいって言ってるのに。奥さんが『お酒で炎上した人たちはダメだ』ってOKしてくれなくて。
でもユハさん、いつもこっそり日本酒を飲んでプレーしてるよね?
酒屋だしさぁ、いいじゃんねぇ。
あ、君、今度うちのチャンネルに出てよ!」
なんてことを言ってくる!
さっきから、いろいろと急展開すぎて頭が追いつかない!
「ぼ、僕たちなんて、SNSも配信もやってなくて、無名ですけど?」
「あーいいの、いいの。
俺たち、モルックでいろいろ面白いことやってるけど。
なんかネットで叩かれやすくて。
有名じゃなくても、かわいい後輩とも、ちゃんとコラボしてます!
かわいがって応援してます!
みたいなので好感度を上げたいんだよぉ。
スタッフの連絡先を教えるから、チームのメンバーと考えてみてよ!」
と軽いノリで誘われた。
かわいいって言われたのは引っかかるけど、ミッドナイト4がどんなふうに動画を撮ってるのかは見てみたいかもー。
こんなふうに会話していると、こっちをずっとカメラで撮影している人たちがいるのに気づいた。
ひょっとして「ミッドナイト4」チャンネルのスタッフさん?
「あの、アユムさん、あれって……」
と僕が指差すと、
「ああ、ごめん、ごめん。
松本さん、ちょっとこっちに来て挨拶してよ」
とこっちを撮影してた大人たちを呼ぶ。
何人かいるなかで、一人の女性が挨拶してきて、
「こんにちは。私はBSの番組『モルック魂』のディレクターの松本です。
いまミッドナイト4に密着取材させてもらってて。
私たちの番組、プリンスにも前に出てもらったことあるんだけど」
「僕、見てます、番組見てます!」
「そう、よかった(笑)。
マイナーな番組だけど、モルックの大会に来ると知ってくれてる人がいて、嬉しいわ(笑)」
「松本さ〜ん。この子、映すのなら許可取ってね。未成年だから、親御さんにも」
なんてアユムが言っていると、大会の運営スタッフらしき人がプリンスとアユムを呼びにきた。
二人とも大会のゲストとして、トーナメントにはシード枠で参加するようだ。
「じゃあ、俺ら行くね。
あっ、ねー、斉藤。この子の連絡先を聞いておいて、俺たちのチャンネルに出てもらうから」
「少年、また会おう!」
と言って、アユムとプリンスが去って行った。
斉藤さんという女性は、ミッドナイト4のチャンネルのスタッフさんで、連絡先を聞かれたので答える。
すると、『モルック魂!』のディレクターの松本香さんという人からも、名刺を渡されて「今度、番組でミッドナイト4の特集を流すんだけど。君たちにも取材させてほしい」と言われて、出演同意書というものを渡されて、いろいろと説明を受けた。
それで「いま少しインタビューをいいかな」と聞かれてOKすると、その場でカメラを回しはじめた。
てっきり、ミッドナイト4について聞かれるのかと思ったけど、「モルックをはじめた理由」から聞かれたので、「じ、実は『モルック魂!』の視聴者プレゼントで、モルックの道具が当たったのがキッカケなんです」と答える。
「えっ、ウチの視聴者プレゼントがきっかけで始めたんだ!
それは嬉しいな!」
「それで、驚いたことに同じクラスにもう一人、視聴者プレゼントでモルックの道具が当たった子がいて、その子とモルックをやることになったんです」
と、今まで誰にも言ってこなかった、とっておきの話を披露する。
てっきり驚いてくれると思ったんだけど、松本さんは不思議そうな顔をして、
「えっ、それって番組プレゼントでモルックの道具が2つも当たったってこと?
本当に? 2つもプレゼントしたっけな?
あれって、公式の道具だから値段が結構するんだよなー。
違う番組で当たったんじゃなくて?」
と、こっちが驚くような話をしてくる。
「いまは番組予算が少ないから、視聴者プレゼントはスポンサーのスポーツ用品メーカーにお願いして、いただいたものなのよ。だから1つだけだったと思うけど?」
「そうなんですか!」
そうなんだ……。
やっぱり、僕のモルックの道具は偽物なんだろうか?
そこで、僕はずっと気になっていたことを質問する。
「あの、僕が当たったほうの道具だけ、モルック棒に番組ステッカーが貼って無かったんですけど。
そんなことってあるんですかね?」
「番組ステッカーって? なんのこと?」
「番組プレゼントで当たった二つの道具のうち、僕が当たったほうにはモルック棒に『モルック魂!』の番組ステッカーが貼ってなかったんです」
と僕が言うと。
またまだ不思議そうな顔をして、
「モルック棒に、番組ステッカーが貼ってあったの?
プレゼントした商品は、スポンサー企業からいただいたものだから、そんなことしてないと思うよ。
届いたのって新品だったでしょ?
スポンサーから送っていただいたものを開封せず、そのまま当選者に送ったんだと思うんだけど」
と丁寧に答えてくれた。
そういえば、モルックの道具はビニール袋に包まれていた!
スポンサーからもらった新品をそのまま当選者に送ったのなら、ステッカーが貼られてるほうがおかしい!
でも、そうだとすると偽物は僕の道具じゃなくて、大智さんが持っている道具ってことになる。
もし僕のほうが当たったもので、大智さんのほうが偽物だったのなら、なぜ大智さんはそんなウソを僕に言ったんだ……。
その時、遠くから僕を呼ぶ声が!
「香坂くーん! もうすぐ試合がはじまるよー!」
大智さんが、僕を呼びにきたんだ。
少し遠くから、僕の姿に気づいた大智さんがこっちにむかって手を振っている。
「いたいたぁー。もー何度も連絡したんだよー」
と遠くから呼んでいる大智さんと、その後ろの谷口さんと大吾も、僕を手招きしている。
「待っててー! すぐ行くよー!」
そう返事をして試合会場に行こうとすると、ディレクターの松本さんに呼び止められた。
そして、
「ねえ、香坂君だっけ?
あの背の高い女の子って、プリンスの妹さんだよね?」
という、衝撃の一言を僕に言ってきたのだった!!!
大智さんが、プリンスの妹……。妹!!!
「プリンスに番組に出てもらったときに、いっしょに来てたよ、あの子。
長身できれいな子だったから、覚えてる。
ひょっとして、あの子にモルックの道具が当たったの? すごい偶然ね!」
と、僕に聞いてきたけど。
僕は頭がフリーズして驚いた表情を浮かべて、
「大智さんがプリンスの妹……?」
と、なんとか声を絞り出した。
その僕の反応を見た松本さんが、慌て出す。
「あれ、もしかして知らなかった?
しまった! プリンスが、秘密にしていたのかな?
ユーチュバーって身バレを嫌ってて、個人情報の扱いがいろいろ面倒くさいからなー。
ごめん! いま聞いたことは内緒にしておいて。お願い!」
と慌てて言って、「じゃー、またね!」と言って立ち去っていった。
「香坂君、早くー! もう試合始まっちゃうよー」
と、先に試合会場に向かって移動し出した3人に向かって、
「ごめーん、いま行くー」
と返事をして、ノロノロと試合会場に向かって歩き出した。




