表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/33

第12話 再会

 モルック同好会の結成から数日後。

 高校一年生の長い夏の終わりに、同好会結成後の初の大会出場として、これまでで一番大きな、東京で開催されるモルック大会に出場することにした。


 今回は、東京の郊外のグラウンドで、百チーム以上が参加する大会で、リーグ戦から決勝トーナメント戦への勝ち上がりをかけて戦うことになる。


 休みの日に朝早くから、ふだんはフットサルなどに利用されている試合会場に集合した。今日はあくまでチーム「ホワイト・ウッド」としての活動なので、いつもの4人で現地に集合だ。

 開始時間前に集まったのはいいものの、第一試合まで時間があったので、「トイレに行くついでにいろいろ見てくるよ」とみんなに言って、リーグ戦の試合会場を離れた。


 少し歩いた先にあったトイレを利用して、今日はいろいろな出店もあったので、「みんなに何か買って帰ろうかな」と思って、うろうろしていると。

 少し向こうに立っている、どこかで見たことのある、長身でガタイがよく、妙に姿勢のいい、自信に満ち溢れた男性が目に入ってくる。


 あ、あれっ! どこかで見たことある人のような……。

 あれって、プリンスさんだよな!?

 レッドのド派手なユニフォームに、髪に金メッシュ、デカいサングラス。

 中学時代に、僕がボウリングで惨敗した人で、現・ボウリング系ユーチュバーのプリンスさんだ。間違いない。


 なんで、プリンスさんがこんなところにいるんだ?

 あ、ボウリングだけじゃなくてモルックもやってるから、プリンスさんもこの大会に出場するのかな?

 なんて考えながらプリンスさんをチラチラと見ていたら、バチっと目があってしまった。

 そうしたら、プリンスさんがこっちに向かって笑顔で一直線に走ってくる!

 えっ、なんで!


「やあ、少年! ひさしぶりだな! 会いたかったよ!

「プ、プリンスさん、おひさしぶりです!」

「アグネスちゃんさんじゃないんだから、プリンスでいいよ! 水くさいな!」

 僕、この人のことがちょっと苦手かも。


「僕のこと、覚えてくれていたんですね。プ、プリンス」

「当り前じゃないか! 最後に会ったのは去年の秋ごろかな?

 急にボウリング場に来なくなって、僕も大学進学で春に地元を離れたので、会えなくて残念に思ってたんだよ」


「プリンスも、この大会に出るんですか?」

「ああ。大会主催者から招待されて、シード扱いで決勝の二回戦から登場するんだ」

「ゲストなんですか! すごいですね!

 あの、プリンスのユーチューブチャンネル、登録して見てます」

「知っててくれたんだ。ありがとう!

 僕も、君の動画を見たよ!

 ユハさんといっしょに映ってるやつ!」

「あ、そうなんですね。ありがとうございます」


「お互い、モルックをはじめてるなんて奇遇だね!

 ボウリングは続けているのかな?」

「いえ、最近はあまり……」

「そうか、残念だな。

 今高校一年生だっけ? またはじめてみたらどうだい?

 僕も地元のボウリング場には最近行けていないけど、またいっしょにプレイしたいな」

 プリンス、まさか自分に負けたから、僕がボウリングを辞めたとは夢にも思っていないだろうな。


「あの、配信を見たんですけど。プリンスってプロボウラーを目指しているんですよね?」

「ああ。大学でボウリング・サークルに所属して、学生ボウリング大会に出場したり、ボウリング場でアルバイトしたりしているよ。配信も、プロボウラーを目指すための活動の一つなんだ」

「それなら、なんでモルックの動画もアップしているんですか?」

と前から気になっていたことを聞いてみると。


 プリンスがちょっと考えている様子から、

「……まだ時間は大丈夫かい? 向こうで座って話さないか」

と別の場所で話すことを誘ってくる。


 一試合目までまだ時間があったので「ちょっとだけなら」と、いっしょにグラウンドのすみっこ、自動販売機と長椅子のあるところまで移動する。

 プリンスが飲み物をおごってくれて、長椅子に座って話を聞くことになった。


「僕は子供のころからスポーツが得意だったんだけど、特にボウリングにハマってね。

 最初は家族4人でボウリング場に通ってて、そのうち近所の仲間と通い出したんだけど。中学、高校になってもボウリング場に通い続けたのは僕だけだった。

 それで、プロボウラーを目指そうと思ったんだけど……」


 そう話して、少し遠くを見るような目をしてから、僕にこう問いかけてきた。

「少年は、ボウリングの競技人口って知っているかい?

 わからないよね。

 一説では1400万人、日本の人口の一割以上って言われている。そして、プロボウラーが男性で700人以上、女性がその半分ぐらいらしい。

 プロボウラーは、プロになるための試験も条件も、とても厳しいもので、狭き門だ。

 それなのに、プロとして賞金だけで稼げている人は少ない。

 人数が少ない女性プロボウラーのほうが人気があって、女性のほうが大会が多くて、女性プロボウラーの番組も放送されている。

 男性が大会の賞金だけで活動をするのは難しくて、プロとして活動するためにスポンサーが必要だったり、ボウリング場の社員になったり、ボウリング教室の先生をしている人が多くて、簡単に目指せるものじゃないんだ」


 そうなんだ。

 ボウリングは好きだったけど、僕はとてもプロボウラーを目指そうなんて思えるレベルじゃなかったから、そういうのは全然知らなかったな。


「ただ最近は、配信でボウリングを解説するプロボウラーが増えていて成功している。僕もそっちで稼いでプロボウラーとして活躍できないかと思って、配信を始めたんだ。

 だけど、まだプロじゃないから、なかなか登録者数や再生数が伸びなくてね。

 それで試しにいろいろな動画を撮って上げていたら、モルックのプレー動画が評判が良くてね。それで、『今はモルックだ!』と閃いて」

とゴクっとスポドリを飲む、プリンス。


「さっき言ったように、ボウリングは競技人口が多い、国民的スポーツだ。

 でも日本でボウリングがブームになったのは大昔の話で、僕たちが生まれる前のことなんだ。

 野球やサッカーのように、プロスポーツとしてたくさんの人に見てもらうのは、いまはなかなか難しい。まあ、これはほかのスポーツも同じで、ボウリングだけじゃないけどね」

 プリンス、いろいろと詳しいなー。それに、話に熱がどんどん入ってくる。


「モルックは競技人口もまだ少ないし、プロと呼べる人もまだ少ない。でも、僕の配信への反応はボウリングの配信よりずっとよくて、これからどんどん伸びていくスポーツなんだと思う。

 だったら、物を投げて得点を稼ぐスポーツの『二刀流』で稼げる男になろうと思ってさ!

 ボウリングやモルックの大会で勝てる実力をつける、ってことはもちろん必要だけど、それだけじゃプロとしてはやっていけないんだ。

 スポーツの強さとエンタテイメントとしての面白さ、その二つを兼ね備えたスタイルで、ボウリングとモルックをもっともっと盛り上げたいんだ!」

と僕を見つめながら、内に秘めた想いを赤裸々に語ってくれた。


 プリンスさん、そんなことを考えて行動してるなんて、本当にすごいなー。

 なんかちょっと変な人だと思っていたけど。

 高校に入ったばかりで、将来とかなにも考えていない僕とは大違いで、大人なんだだなー。


 なんて僕が感動してると、「そ・こ・で・だ」と言って。

 正面から僕の左右の肩を両腕でガシっと掴んだプリンスさんが、

「少年、僕の仲間になってくれないか!」

と真剣な顔で言ってきた!


 はい?


「ボウリング場で見かけたときから、君には高いポテンシャルを感じていた!

 まだ開花していない才能と独特のスター性、オーラ、それを君は持っている!

 僕の仲間になってほしい!」


 なんだって!! 何言ってんだこの人!!!

 だいたい仲間って何をするの?

 チームのメンバー? あるいはユーチュバー?


「き、急にそう言われても……。僕まだ高一だし」

と、急展開すぎる話にうろたえるしかない僕。

「実は僕、最近モルック同好会を作ったばかりで。

 今日もその同好会のメンバーと大会に参加していて。

 モルックをたくさん練習して、大きな大会で優勝したいって活動を始めたばかりで……」

 と、合っていない間に、僕に起こった変化を手短に説明する。


 そうしたら、プリンスは、

「オーケー。僕が少し急ぎすぎたようだ。

 もちろん、まだ先の話として考えてみてほしい。

 まずは、今日の大会を楽しもう!」

 とさわやかな笑顔で、肩を掴んでいた腕を離して、僕を解放してくれた。

「わ、わかりました……。

 考えておきます」


 こんな、あまりに急すぎる事態に動揺しながらも、そのままプリンスと話をしていると。

「プリンス、こんなところで何してるの?」

と、声をかけてくる人がいた。


 高身長でド派手な格好をしたイケメンで、オーラを放っていたその人は、えー! ユーチュバー「ミッドナイト4」のアユムじゃないか! 本物だ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ