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第11話 モルック同好会、誕生!

 休み明けの、学校の放課後に。

 僕と大智さんのクラス担任の小倉舞佳先生に、みんなで相談に行くことにした。


 職員室のドアを開けて、いた、いた、小倉先生。

 小倉先生は、女子フットボール部の顧問を担当していて、生徒に人気のある先生だ。先生と仲のいい、大智さんが話しかける。


「舞佳先生。

 私たち、同好会を作りたいんですけど、相談に乗ってもらえますか」

「へー、君たちで新しい同好会をやりたいの? なんの?」

「モルックっていうスポーツです」


「あー知ってる、知ってる。テレビとかやってたけど、最近流行ってるんだよね?

 ボウリングみたいなやつだよね。

 確かにうちの学校には同好会はなかったかな。

 うちの学校の場合、同好会を作るには、書類を申請してもらって生徒会と学校の承認が取れればOKなはずだよ。

 部活と違って、活動費は出ないし部室もないけど、部より簡単に作れるから」

 と親切に答えてくれる、小倉先生。


 それで、同好会と部活の違いや同好会を作るための条件なんかを教えてくれた。

 同好会の、部員ではなく会員は、5人以上の登録が必要で、顧問の先生も必要だという。

 ただ、鶴谷城高校の場合は、生徒が部と同好会を兼任することはOKだし、人数さえ集まれば、幽霊部員でも黙認されているようだ。

 顧問の先生のほうも、部との兼任はOKで、先生に定期的に活動報告だけ行えば、ずっと活動を見てもらわなくても大丈夫みたい。


 活動費や部室はないけど、同好会を作れば、空いてる教室やコートを学校に申請して借りるのがやりやすくなる。

 小倉先生は、女子フットボール部以外に、いくつかの同好会の顧問を担当してたので、1年2組の赤城先生を紹介してもらって顧問をお願いすることになった。

 赤城先生は、まだ若い女性の先生で、モルックには興味なさそうだったけど、相談しに行ったら引き受けてくれることになった。


 会員数については「幽霊部員でいいなら」と、大智さんの友達の鈴木葵さん、大吾と同じクラスの井口斗真君がモルック同好会入ってくれることになった。

 鈴木さんは大智さんと谷口さんの間ぐらいの身長で、三人で並ぶとバランスがいい。井口君も小柄だけど、僕よりは背が高いかな。大吾が言うには「幽霊部員に最適なやつ」だそうだ。


 こうして、書類を提出するための準備ができたので申請したところ、生徒会から承認するかどうか決めるために話を聞きたいとの連絡があった。それで、メンバー4人で生徒会室に行ったんだけど。赤城先生も同席してくれれた。


 生徒会室では、生徒会長をはじめとする生徒会役員数人から、いろいろと質問を受けた。部長、ではなく会長は、もちろん大智さん! ということになったので、大智さんが代表して生徒会からの質問に答えることになった。


 鶴谷城高校は、部活動が活発なことで有名で、最近は生徒会活動も活発らしい。

 生徒会長からは「文化部に比べて運動部がおとなしい学校なので、こういった活動は大歓迎だよ」と言われた。


 申請書類には、同好会を作りたい理由や活動内容などが書いてて、特に質問されたのは「安全性」だったので、生徒会室に持ってきたモルックの道具を使って、その場で実演してみることにした。

 机をはじっこに運んでスペースを空けると、部屋の真ん中にスキットルを並べてモルックのデモンストレーションを行う。

 狭い部屋の中で、数回モルック棒を投げてスキットルを倒してみたけど、とくに危なくはなさそうだ。


 すると、生徒会からは「危険性はなさそうだけど、万一生徒にモルック棒やスキットルが当たったりしたら責任問題になる」ので、屋内での練習は禁止で、あくまで屋外で充分なスペースを確保して行うのなら許可していいかも、という話の流れになった。


 それ以外には、

・騒音や器物の破損に気をつけること

・校内での練習は必ず顧問の先生に事前の報告すること

 などの確認が行われて、さらに生徒会からは、

・モルックを通して学校や地域への貢献を意識すること!

・入りたいという生徒がいたら話を聞くこと!

ということを言われて、

「応援するので、できれば部活への昇格を目指してください」

といったことをお願いされた。


 同好会になるってことは、そういう責任とかも発生するんだ。

 いまは、モルックをもっとうまくなるために活動したいだけなんだけど、そういうことも考えていかないといけなくなるのかなぁ。


 後日、「モルック同好会を承認する」という連絡が、生徒会からあった!

 これで、鶴谷城高校、モルック同好会の誕生だ!

 これで、堂々と学校でモルックができる!


 さっそく、学校での練習日程を組むことにしよう。

 大吾はバレー部があるので、基本的に練習には参加できない。残念だけど。

 谷口さんも文芸部があるので、週2~3回の練習日程にして、みんな参加できるときだけ参加することにした。

 学校内のコートの使用は超激戦なので、学校の空きスペースになっているところを探して、週の最初に申請することにした。


 そして、学校での初練習の日を迎えた。

 最初ってことで、バレー部の練習が休みになる日を選んで、全員参加!

 顧問の赤城先生、幽霊部員の佐々木さん、井口君も今日だけは練習を見に来てくれた。

 放課後、学校のジャージを着て、使用許可をとった校庭のグランドに集まった。

 学校の隅っこを選んだんだけど、意外とグラウンドの横を生徒が行き来するので、少し恥ずかしかった。

でも、これは遊びじゃない! 同好会活動なんだ!



 目の前には、モルックの道具が2セット置かれている。

「へー、これがモルック!

 実物を見るのは、はじめてだわ」

と、顧問の赤城先生が興味深そうに、モルック棒やスキットルに触る。


「番組ステッカーが貼ってるけど、これはなに? こういうものなの?」

「これって、番組の視聴者プレゼントで当たったんです……。

 その番組のステッカーです。

 モルックの道具が当たったので、『みんなでモルックをやってみよう』って話になって」

と大智さんがこれまでの経緯を説明する。


 そこで大吾が、もう一つあるモルックの道具を指さして、

「こっちは瑠衣が持ってきたんだよな? どうしたの?」

と僕が用意した道具について聞いてくる。

「実モルック同好会を作ることになったって親に言ったら喜んでくれて。

 お祝いで買ってくれたんだ」

とウソをつく。

 いまさら僕も同じ番組のプレゼントで当たったというのはちょっと……。

 なぜか番組ステッカーも貼られてないし。


「はー、そうなんだ! いいなー。

 うちの親なんて、モルックを知らなかったよ」

と大吾。

 他のみんなにもうらやましがられて、少し恥ずかしくなる。


 でも、なんと!

 谷口さんと大吾も、モルック棒だけは購入したので、全員がマイ・モルック棒を持つことになった。

 大会のときは、運営側が用意するモルック棒やスキットルを使うことが多いんだけれど。これで、練習がしやすくなった。


 僕たち以外の3人は、実際にモルックをプレーしているのを見たことがないので、最初は試合をやってみせることにした。

 最初の試合は、僕と大吾だ。

 いいところを見せたかったので、気合いを入れてブレイクショットを、低く、速く、強く、転がす。よし、11本倒した!

 あ、でもしまった。⑫ピンがいい感じの位置に飛び出てしまった。


 続いて、大吾が投げて、⑫ピンを倒す。まあ、あの位置になったら、大吾なら外さないよね。

 これで、だいぶ遠くまでピンが飛んだけど、僕も⑫ピンを狙って投げてヒット! 倒した!

 さらに遠くまで飛ばせて、これで⑫ピンを狙えなくすることができた。

 試合は一進一退で進んでどっちもミスがなく、50対48で僕の勝利!

 だいぶいっしょに練習してきたからか、あお互い息の合ったプレーができるようになってて、スピーディーかつ見応えのある試合になったんじゃないかな。


 次は、大智さんと谷口さんによる、女子二人の試合だ。

 僕たちの試合とは違って、ゆっくりと、静かな試合だったけど、緊張感のある点の取り合いになって、「ふわり」や「縦投げ」も出て、これはこれでモルックのお手本のような試合で、最後にはミスも出たけど、50対38で大智さんの勝利!


 練習試合を見ていた、赤城先生が驚いた様子で、

「みんな上手すぎない?

 それにモルックって意外と激しいスポーツなんだね?

 番組で見たやつだと、もっと楽しい感じだったけど」

と聞いてくる。

 先生の横でうんうん、とうなずく鈴木さんと井口君。


 それを聞いて大智さんが、

「モルックの小さな大会や体験会とかは、ワイワイした感じですけど、大きな大会はとっても真剣な雰囲気になります。

 モルックは全国大会や世界大会まであって、上のレベルの人は信じられないぐらい投げるのが上手なんです」

と答える。

 自分たちで言うのもなんだけど、僕たち、真剣にやってます!


 モルックの道具が二つに増えたので、見学していた三人にも、谷口さんが手伝いつつモルックを体験をしてもらう。

 その横で、マイ・モルック棒を握りしめ、ガシャの練習と、6メートル以上先に置いた1本のスキットルを倒す遠投などの練習をしてみる。

 

 モルックは「コツーン!」とか「ガチャッ」とか、木と木が当たる結構大きな音がするからか、何人かの生徒にグランドの横からチラチラ見られて、練習するのは恥かしかったけど。

 大きな大会に出場したら、もっと多くのギャラリーがいるんだ。恥ずかしがっている場合じゃない!

 そう思いながら、閉門時間までの2時間、ワイワイしながらも、真剣に練習を続けた。



 それから、生徒会からまた連絡があって、モルック同好会の結成を、学校のホームページで記事にしたいってことで取材を受けることになった。

 大智さんを中心に、メンバー全員でいろいろな質問に答えて、練習風景の動画を取ってもらったりした。

 同好会の目標を聞かれたので、「大きな大会で優勝すること」を目標に掲げる。


 後日、学校のホームページで同好会の結成が紹介されると、意外と学校内で話題になって、クラスの友だちにちょっとからかわれたりした。

 まあ、ホームページに同好会の会長として、大智さんの写真が大きく載ったのが、話題になった理由なんだと思うけど(苦笑)。


 ただ、同じタイミングで、この前のモルック大会で、ユハさんがモルック棒を振って「リラーックス!」「エンジョーイ!」って僕を応援している動画が、ネットでちょっとバズったんだ。

 試合の様子や優勝インタビューの動画が、大会のホームページに載ったんだけど、誰かが、僕たちを応援してるユハさんの動画だけ切り取って、ネットにアップし直したようだ。


「リラーックスッ!」「エンジョーイ!」と叫んだユハさん姿の後、僕が投げて⑩ピンを倒すところまでが動画になっていたので、めざといクラスの友だちに見つかって、さらにからかわれることになって、ちょっと困ってしまった。


 ただ、そのうち動画はユハさんが応援しているだけの動画になって、動画にスポーツやアイドル、合格発表などの短い動画がくっついて、いろんなものをユハさんが応援する動画として、さらにバズることになった。

 一生懸命に短い棒を振り回しているイケオジの外国人が、「リラックス」や「エンジョイ」などと大声で言っているのが、面白かったみたい。

 ネットの流行は、よくわからないけど。


 生徒会の人たちもユハさんの動画を見たようだけど、勝手にアップされたものだって説明したら「しょうがないね」って話になって、むしろ「学校のジャージだったら、宣伝になったのに」と惜しがってくれたりした。


 それから学校での練習を続けているけど、遠くから見ている人の数が増えた気がする。

 メンバーが一年生だけだってことは記事になったから、先輩から声をかけられたりはしなかったけど、何人か試しにモルックを投げてみたいって言ってくる生徒もいた。

 それで、モルックの練習時間に体験してもらったりしたけど、その子たちは体験しただけで満足したようで、「入りたい」って言ってくる人まではいなかった。


 でもなんだか、周りの人が僕たちを見る目が少し変わったような気がする。

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