第10話 西柏市でのモルック大会
今回、参加した西柏市のモルック大会は、はじめて参加した大会とは違って、何十組も参加してる大会だ。
この前は対戦チームの選手ぐらいしか見ている人がいなかったけど、屋台とか出店されてて、試合を見にきてるだけの人もたくさんいた。
今回も1試合2セットのルールで、4チームごとのリーグ戦を勝ち抜き戦だ。
リーグ戦は8つのグループに分かれて行われ、上位2チーム×8グループ、計16チームのトーナメント戦で優勝を争う。
今回は2名から参加が可能な大会だったので、まずは僕と大吾でコンビを組んで、予選を戦ってみることにする。
予選リーグの初戦の相手は、「松戸バーミヤンズ」という地元のファミレスでバイトしている仲間同士で結成したチームだ。
ちょっといかついお兄さんたちのチームだけど、じゃんけんは僕が勝って先攻になる。
もうブレイクショットは僕の担当! って感じになってきたので、一投目を投げる。
今回は、モルッカーリに入ったら1分以内に投げるルールもあるんだけど、初めて大勢の人に見られながら投げる緊張からか、なかなか投げるフォームが定まらなくて、何度腕を振ってもモルック棒を投げられない!
それで時間が無くなって最後は焦って投げてしまって、かろうじてピンには当たったけど、4本しか倒れなかった。
相手チームは調子が良くて、1投目からガシャで11本倒す。その後は、大吾が遠いピンを倒しまくったけど、僕が足を引っ張ってしまい、1セット目は大差で敗北してしまった!
そのまま2セット目に入って、今度は大智さんと谷口さんのペアで戦う!
後攻で投げる二人も、練習通りにはなかなか投げれなくて、いつもなら簡単に倒せそうなピンを外したり、周りのピンを巻き込んで倒したりして、得点を重ねていくことができない。
2セット目も負けてしまって、1試合目の敗退が決定した。
それで、「どうしよう!」「みんな落ち着こう!」と焦っていたら、次の試合の時間がきてしまった。えっ、もう!?
2試合目は、「KAMINOTE」という大学生のモルック・サークルの人たちが相手だ。じゃんけんで勝ったので、僕と大吾のペアで先攻になった。
それで今回は、順番を変えて大吾にブレイクショットを投げてもらったけど、8本しか倒せなかった。練習だと、最近は10本以上は余裕で倒せるようになっていたんだけど。
やばい! 調子が出なくて「このままだと負けてしまう!」と焦った気持ちのまま、僕が投げる番が回ってきてしまった。
スキットルが複雑な置かれ方になってて、どのピンを狙えばいいのかわからなくなって、軽くパニックになったそのとき、
「ルイ! リラーックス!」
と大きな叫び声が聞こえた!
ユハさんだ!
ユハさんもこの大会に出場するとは聞いてたけど、人が多すぎて今日はまだ会えてなかったんだ!
モルック棒を縦に握りしめて、大きな体で振り回してるユハさんが、「リラーックス! エンジョーイ!」と応援してくれる。
隣には、楓さんもいる!
そうだ!
「リラーックス」「エンジョーイ」
そう心の中でつぶやいて、深く深呼吸をして、いつもの練習通りに、自分が狙うべきピンをしっかり見て、そのピンが倒れるモルック棒の軌道をイメージする。
体のチカラを抜いて、腕の振りを大きく、全身の動きを連動させて、イメージした軌道をなぞるように、モルック棒を空中に解き放つ!
よし! ⑩ピンに当たった! 10点ゲット!
そこから大吾と2人で点を重ね続け、相手チームが50点をオーバーしてしまったこともあって、2試合目の1セット目、2セット目と連勝して、なんとか初勝利を飾った!
その後も予選リーグの試合を勝ったり負けたりするのを繰り返しながら、僕たちはなんとか予選リーグを突破した!
そこからトーナメント戦に挑んだんだけど、緊張と疲れからか、うまくモルック棒をコントロールできず、トーナメント一回戦負けで終わってしまっのだった……。
その後は、悔しさを胸に閉いながら、試合を見学した。
出店とかあったけど、いまは何かを食べたい気持ちにならない。
トーナメントに勝ち上がったチームの試合をぼんやりと見ながら、自分たちのプレーの何が悪かったんだろう? どうすればもっと強くなれるんだろう? と考える。
気がつくと、もう決勝戦になっていた。
決勝に進出したチームは、おそろいの黒いユニフォームで統一された社会人チーム「ゴールド・ラビッツ」と、ユハさん楓さん夫婦の「東流山日本酒LOVE」だ!
がんばれー! ユハさん! 楓さん!
リラーックス!! エンジョーイ!!!
決勝戦は3ゲーム先取したチームの勝ちというルールだったんだけど、2勝2敗でお互いが一歩も譲らないバチバチした試合展開になった!
僕たちも縦に握りしめたモルック棒を振りながら一生懸命に応援した。
結果は、「東流山日本酒LOVE」チームが最後の試合を制して勝利!
ユハさん、楓さん、優勝、おめでとうございます!
優勝後に、表彰式が行われた。
運動場に設置された表彰台の近くで見ていると、表彰台に乗ったユハさんが、僕たちに気づいて「カモン、カモン」と手招きしてくる。
それで、
「マイ、スチューデント。デシ、デシ」
と手招きした僕と肩を組んで、ゴキゲンな様子で僕たちをみんなに紹介してくれた。
あれっ? ユハさん、酔っ払ってるんじゃ……。
また隠れて飲みながら試合して、それで優勝したの!?
まあ今日の大会は、モルック協会の公式大会とかじゃないから、大丈夫かな……?
あ、楓さんの顔がピキピキしてる。
表彰式のあと、ユハさん、楓さんが何かの取材を受けてて、インタビューに答えてるそばにいたら、またユハさんが「デシ、デシ」「アイム、マスター」とか言うので。
代わりに簡単に、ユハさんたちにモルックを教えてもらっている西柏市の高校生だということを説明したけど、うまく伝わったかなー。
大会後、ユハさんたちと別れてファミレスでドリンクを飲みながら、今日の反省会をする。
「対戦相手は強いチームもあったけど、ユハさんたちほどじゃなかった。
明らかに僕たちが力を発揮できなかったよね」
「ああ、ギャラリーがいて緊張したからか、全然投てきに集中できてなかった」
「1分以内に投げるっていうのも練習したけど、本番は全然違ったね。練習が足りなかったよ」
「いい意味で、もっと意地悪じゃないとダメね。相手チームのほうがピンを取りにくくする妨害がうまかった」
「お互いアドバイスしあって試合するだけじゃダメだ。仮想敵になって、ピンを倒しにくくしたり、ピンを倒せないところまで飛ばしたりしないと、勝ち抜けないかも」
「ただ応援するだけじゃなくて、時間のこととか、狙いやすいピンとかアドバイスして、もっと声をかければよかったね」
なんて話をしていると。大智さんが、
「大会に出るなら、学校でも練習できるといいよね」
とつぶやく。
そうだね、それは僕も思っていた。
大会は全国で開催されているけど、参加費が数千円はかかるし、交通費も考えると頻繁に参加できるわけでもない。
練習場所も、どこかみんなで集まりやすいところを確保しないと。
この前、家の近くの公園で練習してたら、近所の人にちょっと注意を受けたし。
そんなことを話していると大吾が、
「それなら、同好会を結成するのはどうだろう?」と言い出す。
「同好会って? 何それ? 部活のこと?」と僕。
「違うわ。部じゃなくて、同好会。
部活みたいに本格的じゃないけど、ちゃんと学校に認められて、学校内外で活動できるの。
部活ってそう簡単に増やせないから、最初に同好会を作って、活動実績ができたら部に昇格する感じかな」
と谷口さんが教えてくれる。
「同好会を作るには、どうすればいいの?」
と僕が聞くと、
「校則に書いてるよ。
必要条件を満たして書類を申請して認められばいいみたい」
と谷口さん。
それで、学校に申請する方法がよくよくわからなかったので、先生に相談することにして、この日は解散した。




