第八十四話
命は世田谷ダンジョンを完全踏破して次は千代田ダンジョンに挑むつもりであるのだが、千代田ダンジョンは階層型ダンジョンとは違い、墳墓型ダンジョンという珍しいもので多くの罠が仕掛けられており斥候能力を有していない命が無警戒で立ち入ったら罠の餌食になるのが目に見えている。
だからこそ、闇雲に挑むのではなく学校でスカウト術を学んでからの方がいいだろうと完全踏破の話題が収まったのを確認して学校に通うことにする。
「此処がスカウト授業をやる教室なのか」
案内されたのはアスレチック場の様な場所であり多くの生徒がアスレチックに挑んでおりこれでスカウト術が学べるのだろうかと思いながら先生に声を掛けると教本と鎖に縛られた宝箱を渡されて指導が始まる。
「スカウトはセンスと敏捷のステータスが重要なんだ。まぁ、反復でも覚えられないことは無いが効率は良くないな」
教本を開きながら手順を教えてくれる。ダンジョンにある罠はそれこそ無数に存在し罠師という専門職が設けられるほどで専門職は罠を解除するためのスキルを有しておりそれこそセンスがなければ難しいと言うのが教師の言だ。
幸いなことに千代田ダンジョンで確認されている罠はそんなに多いものではないので反復してその身で覚えるしかない。魔法に関しては自分でも結構やれる方だと自負しているがスカウト術となると流石にそう簡単には行えず結構な時間、授業を受けなければならないだろう。
「やっぱ、難しいな……」
スキルの補助を受けないと言うのはこんなに難しいものなのかと思いながら命は罠を解除するのに悪戦苦闘してしまう。センスがものを言うと言うのは良く言ったものでこれは得意なものはスラスラと解けてしまうものだな思いながらも構造をよく観察しながら挑んでいく。
「力が入り過ぎっすよ」
「え?」
声を掛けられて振り返ると小柄な少年が立っており赤い髪を尻尾の様に後ろに纏めており服装も制服を着崩しておりどこか不真面目そうな雰囲気を纏っている。少年は命の腕を掴み、こうするのだと手を動かすとかちりと錠が開いた音がして宝箱を縛っていた鎖が解かれる。
「こういった仕掛けは癖があるもんなんす。それを見抜いてやればこのくらい余裕っすよ」
「君は?」
「霧山赤也っす」
その名前は安城から聞いたことがあった。取材の時に何となく、安城に注目している生徒は誰かと聞いた時に名前が挙がっていた人物だ。特定のパーティーを組まずに色々なパーティーを練り歩いてスカウトとして絶大な成果を上げるという事で傭兵と言われている生徒だ。
「噂は聞いてるよ」
「恥ずかしいっすね……俺も柏崎さんの事は知ってますよ。数年ぶりに世田谷ダンジョンを完全踏破した人だって」
お互い知っている様で気恥ずかしい気分になる。霧山は不真面目そうな見た目からは想像が出来ないほど丁寧に命に罠解除のイロハを教えてくれる。罠解除にはセンスが必要だと言われたが霧山はセンスだけでなくきちんとした理論に基づいたものでセンスだけでないしっかりとした知識を持っている。
「柏崎さん。筋がいいっすよ、これなら簡単に覚えられそうです」
「教え方がいいからさ」
霧山も指導で罠を解除するのに便利なスキルである精密操作のスキルを取ろうと教えを受けている所であり霧山からもうすぐ覚えられるとお墨付きをもらっている。精密操作は罠解除だけでなく魔法の扱いにも影響して来るスキルなので命としては覚えておきたいスキルの1つであった。




