第八十二話
東京観光を満喫してベンチの上で休憩していると見覚えのある金髪の男性の姿がある。
「貴方は……」
『時計塔ダンジョンで会ったボーイじゃねぇか!』
流暢な英語を話しながら人の良い笑みを浮かべているのは時計塔ダンジョンで出会ったアメリカ人で装備を着けていない所から見て観光でもしているのだろう。
「観光ですか?」
『世田谷ダンジョンだったか?あれの最終階層にドラゴンが出るって話を聞いてな。挑むついでに東京を観光してるんだ』
両手一杯に出店の食べ物を抱えておりかなり満喫している様だ。多くの探索者が避けて通る世田谷ダンジョンをわざわざ来日してまで挑むとは余程の自信があるのだろう。
「流石はドラゴンスレイヤーですね」
『知ってたか』
「当然ですよ。貴方はかなりの有名人なんですから」
初めて会った時は単なる気の良いアメリカ人としか思わなかったが何処かで見たことがあると言う既視感を感じていてダンジョンから帰還した時に改めて調べると彼のプロフィールが明らかになった。
ジョン・ワイルズ。弱冠20歳でドラゴンを討伐したアメリカの新星でその容姿と彗星の如く輝く彼の姿から綺羅星の異名を持つ人物で身の丈ほどのバスターソードを操り、あらゆるモンスターを一刀両断する怪力の持ち主としても知られておりこんな人気の多い場所に姿を晒していい人物ではない。
「良いんですか?変装もせずにこんな人込みに居て。バレたら偉い騒ぎになりますよ?」
『ふっふっふ、有名人にはこういった時の為のアイテムがあるのだよ!』
そう言いながらジョンは首にぶら下げているブローチを見せてくれる。それは非常に高価なものとして知られる認識阻害のアイテムで安いものでも数千万の値が付くもので品質を見るにかなり高いもので億に届くかもしれない。
『社長がくれたもの何だが、知り合いとか顔を合わせた人間には効果が薄いらしい。ボーイが俺を見つけられたのも顔を合わして話したことがあるからだな』
「そうなんですか……」
認識阻害とはいえ、完璧なものではなく欠点があるらしい。社長というのはジョンが所属しているアメリカ有数の企業であるスタードライブ社でジョンを初めにアメリカの有力探索者を多く抱える企業で莫大な資金力を有していると言う話でありその社長ともなれば認識阻害のアイテムを保有していても可笑しくないだろう。
ジョンは実力、知名度も併せ持ったスター探索者でありそのパーティーも超一流であり前に見た装備も命の目が飛び出るほどの莫大な資金が投入されたに違いない。
『っと。そろそろ行かないと。じゃあな、ボーイ』
そういってジョンは去っていく。話していて気持ちのいい人だなと思い、綺羅星と言われている超一流の探索者とは思えないほど親しみやすい人で上に立つ人間は何処か性格がねじ曲がっていると聞いたことがあったがそんなことは無いらしい。
何となくでやって来たが思った以上の出会いがありたまにはこうして出歩いてみるのも悪くないなと思いながら命は寮へと帰る。
「まさか、柏崎くんとお知り合いだと思いませんでした」
『そういえばアンジョーの後輩って話だったな』
いつの間にかジョンの隣に立っているのは安城であり相変わらずの胡散臭い笑みを浮かべており安城とジョンは両親同士が友人という事もあり昔からの付き合いであり来日するにあたって安城からかなりの情報を仕入れている。
「面白い子でしょう?お気に入りなんです」
『アンジョーが気に入るなんて珍しいこともあるもんだ』
昔から幅広い交友関係を持っている安城であるが自分からお気に入りという相手が居ることもジョンは不思議であり珍しさに目を丸くしている。
「あなたよりも若くドラゴンスレイヤーを成し遂げている人ですからね。もう2年、早く生まれたかったですよ」
『へぇ、ミコトだったか。覚えておこう』




