第七十六話
流石にエルダーリッチは出てこず、出てきたのは普通のリッチでありエルダーリッチに比べたら簡単に倒すことが出来て命はボス部屋の前に辿り着く。ボス部屋の前にはあまりモンスターが寄り付かないと言う話であるが念のために結界を張って休憩する。
これまでの激戦で魔力を大きく消費してしまっており指輪の魔力もかなり減ってしまっている。周囲の魔素を吸収してはいるもののあまり量は増えておらず一時間ほど休憩することにする。
「ヴァンパイアナイトは兎も角、エルダーリッチとはな……流石に予想できないって」
エルダーリッチとの戦いは正に死闘であり下手をすればこちらがやられかねなかった。アインの防御力を貫通する攻撃力に多彩な魔法と十六夜の攻撃を弾く魔力障壁とアヴァリスが防御貫通のスキルを持っていなければどうなっていたか分からない。
命は朝、バトラーが作ってくれたサンドイッチと珈琲を飲みながら生き残っていることを喜ぶ。それだけエルダーリッチは強敵で六体という普通では有り得ない戦力があったからこそ勝てたのだと思う。
ボスであるスペクターロードはエルダーリッチよりも強いだろうか。そんな気持ちを抱きながら珈琲を飲み進めて指輪を見て魔力の貯蔵量を確認する。
「大分溜まって来たな。流石は深層、周囲の魔素が比べ物にならない」
半分近く貯蔵されておりこれならば全力戦闘をしても十分過ぎるくらいであり深層の魔素は命が思っているよりも濃いようで想像以上の回復具合である。召喚モンスターにエンチャントを付与して準備を整えるとボス部屋の扉を開ける。
中央に居るのは真っ白な半透明の体に身の丈ほどの大きな鎌を手にしており纏っている魔力はエルダーリッチと同等でありあのクラスの相手とまた、戦わなければならないと言う事実に溜息を零したくなる。
スペクターロード
スキル
防御貫通、透過、大鎌
「フリィー」
開幕早々にフラウの雷撃が放たれるがスペクターロードは器用に大鎌を盾代わりにしてそれを防いで大鎌を大きく振るうと漆黒の突風がこちらに向かってくる。暗黒魔法の一種であろうと予想して迎撃する。
しかし、命は嫌な予感がして少し、遅れたタイミングで石壁を形成すると迎撃したバジレウスの尾撃を突風が透過して僅かに遅れた石壁にぶつかる。情報にあった透過のスキルであり防御だけでなく攻撃にも転用できるとは思わなかった。
これが魔法攻撃だから良かったもののあの大鎌で透過のスキルを使えば体力自慢のアインであってもタダでは済まないだろう。
「厭らしいスキルだな……」
ユニークスキルであるため、連発が出来ないのが救いであり警戒しながら戦闘をしなければならない。前線で戦う、アヴァリス達に警戒を促しながら命も魔法を行使する。
「ダークネス・チェーン」
高い魔力耐性を有しているスペクターロードに並の魔法では大したダメージを与えることは出来ないのでその動きを止める様に動く。漆黒の鎖は蛇の様に地面を這い、不規則に動きながらスペクターロードを捕らえようよするが大鎌を振るい鎖を破壊する。
そう簡単にはいかない様であるが意識を別のものに行かせるのが目的であり間を縫って十六夜を一刀を振るう。神通力だけでなく剣閃も纏った高速の一撃であり大ダメージは必至である。
「ちっ、避けたか」
直撃するかに思えた一刀は空を切り、無効化されてしまいお返しにと大鎌が思いっきり振るわれる。遠心力も加わった強烈な一撃であり十六夜はその抜群な距離感覚で後ろに下がりそれを回避する。あらゆる防御を貫通すると言う強力な一撃も当たらなければ意味がなく紙一重で躱す十六夜の間合い管理は凄まじい。
十六夜ばかりに構っては居られず躍り出たのは空中を飛ぶ、シャインであり透過が使えないのを理解しており容赦なく聖炎を叩き込む。ヴァンパイアナイトを一撃で葬ったアンデット特攻スキルであるが流石はボスであり大ダメージは受けているが倒すには至っていない。
「グラビティ・プリズン!」
「フリィー!」
大ダメージを受けて動きが止まっているスペクターロードに命はフラウと呼吸を合わせて重力呪文を行使する。フラウのグラビティ・ランスは回避されたものの命のグラビティ・プリズンは回避できず重力の檻に閉じ込められる。
「グォォ!」
動きを止めたところにバジレウスの必殺の一撃という黄金パターンで止めを差す。しかし、レベルアップアナウンスは聞こえてこず爆炎の中からスペクターロードが現れて大鎌を命目掛けて振るう。
「透過してグラビティ・プリズンとバジレウスの紅蓮を突破したのか!」
寸前の所でアインが間に入り、大鎌を受け止める。防御貫通のスキルによってかなりのダメージを受けている様で命は瞬時に距離を取って冷静に状況を分析する。
バジレウスの紅蓮が直撃する寸前に透過を発動させて紅蓮を回避すると同時にグラビティ・プリズンの影響下から逃れたと考えるべきであり神がかり的なタイミングをこなしており命の周りを召喚モンスターが固める。
「フン!」
「ギャ!」
背後から迫った十六夜がスペクターロードの背中を切り裂き、続けざまにアヴァリスの拳が深々と突き刺さり透過を発動させる暇を与えない。バジレウスの鋭い爪が振り下ろされてスペクターロードは大鎌で受け止めるが圧倒的な質量の攻撃を受けきることが出来ない。
「ヤ!」
その間隙を縫ってシャインの聖炎がまともに当たり強力なアンデット特攻を持つ一撃によって遂にスペクターロードは倒れる。




