第六十五話
新たにクラスチェンジしたフローガの性能を見て見たかったがそれよりも前にゲームの終了が知らされて命の体が光で包まれると元のグランドへと自動で転移される。怪我をしている者は多いが死人は出ていない様で流石に生徒会が主催する出し物で死人が出たら大事だろう。
「えー、只今、集計しておりますのでしばらくお待ちください」
スタートしてからノンストップで駆け抜けていたので命はゆっくりと休憩することにする。本当ならばバトラーに珈琲でも淹れてもらいたい所であるがそれを我慢して持ち込んでいた水を飲んで喉を潤す。
ゆっくりしていると集計が終わったようで五位から順位が発表される。
「二位柏崎命さん。一位獅子王琴乃さん」
名前を呼ばれて壇上へと上がる。三体もエリアボスを倒してお宝を手に入れたから優勝は貰ったものだと思ったが僅差で獅子王の方がお集めたお宝の量が上であり直ぐに見切りをつけて大物狙いにしたのがまずかったらしい。
二位の報酬は高性能なアイテムボックスであり手提げかばんサイズで際限なくアイテムを収納できるものであり命が空間魔法を付与したバックパックよりも性能が良いもので複数使い分けよう。
「それではこれで無人島ゲームは終了となります。皆さま、ご参加ありがとうございます」
深々と頭を下げて長かったゲームが終了する。参加者は皆、満足そうにしておりこのイベントをするのにどれだけ準備をしたのだろうと思いながら命もグラウンドから出ていく。
因みに優勝賞品は有名鍛冶ギルドのオーダーメイド券であり多くの参加者が求めてやまないものでありオーダーメイドとなるとかなりの値が張るだけでなく予約にも時間が掛かるのでそれを省略できるのだから優勝賞品としてかなり豪華だろう。
文化祭最終日にはグラウンドでキャンプファイヤーをするらしく参加者が出て行ったのを確認して文化祭実行委員がキャンプファイヤーの準備をしており命はその準備を眺めながらゆっくりしている。
「残念だったね。柏崎くん」
「生徒会長」
階段の上に座っている命に話しかけてきたのはイベントを主催していた長船であり他の生徒会メンバーが文化祭実行委員と共にキャンプファイヤーの準備で忙しそうにしているというのに暇そうだ。
「エリアボス狙いにシフトしたのは良かった。ただ、獅子王さんのモンスターの討伐速度が群を抜いていた」
六体もの召喚モンスターを抱える命を上回るほどの討伐速度とはどうやればそんなことが出来るのか効いてみたいくらいだが単独でグランドトリケラトプスを討伐するような人であり命の考えが及ばない所にいる。
「にしても六体のモンスターとはユニークスキルか余程、良い装備にでも恵まれたのかな?」
「詮索はマナー違反では?」
「ふっ、安城の言った通り用心深い男だ」
意外な名前が出たが安城ほどの男が生徒会長である長船と交流を持っていない訳がないと思い至る。安城の事は信頼しているので命の情報を他人に漏らすようなことはしないと思うが長船なら召喚王の指輪に気付いていても可笑しくない。
探索者学校の生徒会長という全生徒のトップに立つだけの事はあるなと改めて思い知らされる。まぁ、命も隠している訳でもないがこんなにも簡単に見抜かれるとは思わなかった。
「面白い。もっと早く君の事を知っていたら生徒会役員にスカウトしたんだがな。安城の秘密主義も大したものだ」
「恐縮です」
もしも、スカウトされたとしても命は生徒会には所属しなかっただろう。生徒会に入ることは名誉なことであるが見るからに忙しそうでありさっきのイベントも一学期の頃から準備をしていたであろうことは疑いない。
その激務を簡単にこなせてしまうからこそ長船はその地位に居る訳で命は拘束されるのはあまり好きではなく生徒会に入るよりもダンジョン探索の方を優先したい。生徒会の仕事をしながらダンジョン探索をやっている長船は尊敬してしまう。
「振られてしまったか……まぁ、僕の任期もそう長くないからな。君のスカウトは次の生徒会長にしてもらおう」
「遠慮したいですが……」
「ははっ、君の様な逸材を見逃すとは思えんな」
そういって長船は颯爽と去っていく。本気で勘弁してもらいたいがあまり頑なに断り過ぎるのもかえって失礼になるしどうしたものかと考えるが差し当って喫緊の問題でもないので先送りすることにする。
日が沈み、見事に組まれた木組みに魔法で火を灯して一気に燃え上がる。もしもの時の為に水魔法を使える魔法職が控えているので安心してキャンプファイヤーを楽しむことが出来る。
「どこに居るかと思ったらこんな所に居たか」
「随分と文化祭を楽しんでるみたいだな」
「おう!お祭りなんだから楽しまなきゃ損だぜ」
両手一杯に食べ物を抱えており文化祭を満喫している様子だ。宍戸に幾つか食べ物を分けてもらって静かにキャンプファイヤーを眺める。ここ最近、文化祭の準備とかで忙しくこんなにのんびりすることがなかったので気分が和らぐ。
「二位とかスゲーのな」
「裏技を使った結果だけどね」
召喚王の指輪によって同時召喚可能数が増えたからこそ短時間でエリアボスを三体も討伐という結果を生んだがそれでも獅子王には敵わず、本当にどこまでも先を行っているなと思う。
何時も命の前を立ちふさがり一瞬、煩わしいと思ってしまったこともあったがあの天然振りを見せられたら毒気を抜かれてしまった。自分は自分のペースでやるだけであるが今度は負けないと来年の体育祭に向けて鍛錬を続けている。
「お、ダンスしてるぜ。行かねえの?」
「そんな気にはなれないな」
キャンプファイヤーを囲ってダンスを始めておりお約束な展開であるが誘う相手もいないしここで眺めているだけでいい。宍戸もそんな相手は居ない様でモグモグと口一杯に食べ物を詰めておりまるでリスの様である。
「男二人で何、黄昏てんの!」
振り返ると宍戸に負けないくらい食べ物を抱えた金倉と那須が居り、二人とも文化祭を満喫できたようだ。寄って、寄ってと命達の隣に座る。ベンチではないのでかなり手狭であり四人でゆったりとキャンプファイヤーの火を眺める。
「あっという間だったね」
「人に黄昏るなって言ったばかりだろ?」
「私だってしんみりする時くらいあるっての!」
夏休みが明けて二学期が始まってから準備を進めてあっという間に時間が過ぎてしまった。クラスの展示の準備はあっという間に終わりあまり準備した感がないが金倉と那須の準備には手伝っており文化祭準備に多く時間を割かれた。
祭りの後の雰囲気と言った感じであり何だか寂しい感じであり今日が過ぎればいつも通りの日常が戻って来る。
「折角だし踊らない?」
「そ、そんないいよ!」
「折角のお祭りなんだら!」
そう言って遠慮している那須を無理矢理、引っ張ってキャンプファイヤーの元へと走っていきダンスの輪に入っていく。
「青春だね~、俺らも行くか?」
「行ってきなよ。荷物見るから」
「悪ぃな、じゃ、行ってくるぜ!」
宍戸もテンションを上げながら輪に加わっていき楽しそうにダンスを踊っている。まさに青春といった感じであり蚊帳の外と言った感じであるが幸せそうな人々の笑顔を見るだけで満足である。
「明日はどこに潜ろうかな?」
命の脳内は明日からどのダンジョンも潜ろうかということで埋まってしまっている。昔からダンジョンに関して人一倍の関心はあったが探索者高校に入り、実際にダンジョンに潜るようになってその思いは増してしまっている。
自分でも行き過ぎだとは思うが憧れは止められないと言うしこのままでいいと思っている。




