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現代ダンジョン サモナーが行く  作者: 金林檎


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第六十一話

「お待たせ!ごめんね、文化祭の準備をしてたから」


「気にしなくていいよ。押しかけちゃったのはこっちの方だし」


 予想していた通り文化祭のじゅんびをしていたようであり箱に武器が敷き詰められており金倉にとっては数打ち品と言った感覚なのだろうが素人目で見てもかなりの品質であるのが分かる。元々の腕もあるだろうが夏休みの修行で更に腕が磨かれたようだ。


 金倉はテーブルの上に出来上がった装備を出してくれる。


『氷巨人の着流し』ランクA

 防御力60 耐久度50

 スキル

 氷河属性、超金剛力、超頑強


『氷巨人の刀』ランクA

 攻撃力60 耐久度50

 スキル

 氷河属性、凍結、超金剛力


 注文通り十六夜の装備が出来上がっており貧弱な装備が立派なものとなる雪原の様な真っ白な着流しに白刃の刀と偉い変わりようで金倉によって容姿も整えられてかなりのイケメンに仕上がり金倉も満足している。


「いやー、元がいいと弄り甲斐があるねー」


 どこから取り出したのか鋏で無造作に伸びていた髪を切り揃えて無精ひげも剃って美容院も顔負けな腕前で命が止める暇もなくさっさと終わらせてしまった。幸いにも十六夜はされるがままであった。


「随分、手慣れてるんだな」


「言わなかったっけ?私の実家、美容院なんだよ。昔から手伝いで常連さんの髪切ってたから」


 なるほど、手慣れていたわけだ。道具も東京に来る時に自分の髪を整える為に持ってきたものだと言う話であり今でも自分の髪は自分で切っているらしい。それで道具も揃っているのかと納得した。


「良かったら命くんの髪も切ってあげようか?友人価格で安くするよ?」


「金取るのか」


「そりゃ、そうだよー」


 そうやって他愛のない話をしながら近況を報告し合う。金倉は命のお陰で販売をする為の場所は確りと設営できたので今は文化祭で売りに出す武器の制作をしていると言う話で命が持ち込んでくれた高ランクの魔石で作られた一点物からだれもが手を出し易い安価なものまで幅広く揃えており準備は万全なのだが文化祭で客が来るかが心配であった。


「実演はするつもりだけどこればっかりはねー」


 金倉は知らないが命の使わなくなった装備がオークションに出されるようになりその製作者である金倉の名は学校中に広がっており金倉の作品を安価で買える機会など滅多になく客が押し寄せるであろう。その事を伝えようか迷う所であり今の金倉に行ってもそんなことはないだろうと疑ってしまうだろう。


 金倉といい那須といい、自分の能力を低く見過ぎであり本当にクラスの出し物が展示会で良かったと思う。絶対、二人とも大勢の客を捌けないだろうから最初から手伝えそうであるが命の体は1つしかなくどうしたものかと考える。


「片方はバトラーに手伝わせるか……那須は絶対人見知りするだろうから金倉の手伝いをさせるか」


 バトラーならば見た目も人間と瓜二つだし精密操作のスキルもあるし金倉の手伝いも無難にこなせるだろう。金倉をバトラーに任せて命は確実に大勢の人が押し寄せるであろう那須の手伝いをすることにする。


 獅子ギルドが購入したレシピが形となり市場に流れておりそのレシピの製作者である那須の名声は更に増しており那須にコンタクトを取ろうとする者が後を絶たないと言う話で那須が人見知りであるということで安城を通して書面で連絡を取っているがかなり数のギルドや企業がコンタクトを求めていると言う話だ。


「どうしたものか……」


「ん?香蓮ちゃんの話?」


「そう。俺も交渉事は素人だからな。どうしたものか……」


 今は一応、安城が窓口をしてくれているが頼りっぱなしというのも申し訳ないのでどうにか出来ないかと思うが根っから探索者である命はこういうのを考えるのは苦手であり信二や朝比奈に相談しようかなと考えている所だ。


「詳しい人に任せるしかないんじゃない?命くんが背負いこみすぎない方がいいと思うよ」


「そうは言うけどな。那須が交渉なんて出来ると思うか?」


「香蓮ちゃんは人付き合いのステータスを薬師に振り分けちゃってるから」


「だよなー」


 人見知りで慣れた筈の命にも遠慮がちな那須が交渉なんて出来るはずがなく命が代理人をしている訳だが流石に命だけでどうにもならない事態に陥りそうであり大人しく詳しい人に委ねるしかないだろう。


 世話になったとはいえ愛染も信二もタダでこちらの要望を聞いてくれるとは思えず、那須を取り込もうと考えるだろう。天下の二大ギルドから誘いがあるのは凄まじいことであるが那須の性格を考えると慎重に選ばざるを得ないし命が決める事でもない。


「一度、確り話し合うか……」

 

 那須のこれからに関わる事でありじっくりと話合わなければならないだろう。まぁ、今はそれよりもどう、文化祭を乗り切るかの方が重要であり大勢の人間が来ると言う命の予想を那須は半信半疑であったが根強く説得し今は売りに出すポーションの増産をしている。


「無事に終わればいいんだけど……」


 いかに広く客を募集しているとはいえ探索者学校の文化祭に参加できるのはそれなりの立場の人間であり探索者もかなり高ランクな人ばかりだと聞いており問題は起こらないと思うが何が起こるかが分からないので用心しておいて損はないだろう。


 準備は万全となりどことなく厳粛だった探索者学校は一気にお祭りの雰囲気となりどこか浮ついている。まぁ、文化祭なのだからと何時もは厳しい教師も多めに見ている様で生徒達は文化祭に向け徹夜しているものまで居る。


 そして全校生徒が体育館に集められる。壇上に立っているのは校長ではなくこの学校にある部活や委員会を纏めている生徒会でありマイクを握るのは生徒会の長船玲おさふねれい。生徒会長として相応しい風格を持った人物で探索者としてもかなりの実力者であると聞いている。


「長ったらしい挨拶は顰蹙を買いますので手短に。此処に文化祭の開会を宣言します」


 その言葉に会場に居る全校生徒が歓喜の声を上げる。三日間に及ぶ、祭りの時間が始まるのだった。命は教室に顔を出すことなく金倉の工房に向かう。道中、出店の屋台が並んでおり多くの生徒が客引きをしており一気にお祭りムードになっている。


「凄い人……」


 金倉の工房は武器を求める生徒だけでなく外部の人間もかなり居り、大きな列をなしており命は申し訳なく思いながら金倉の工房に入ると多くの客に追われている金倉の姿があった。


「命くん、助けて!」


「那須の様子も見てこないとだから!」


「薄情者ー!」


 涙目になりながら助けを求めてきて命はバトラーを召喚して金倉を手伝わせる。本当は手伝ってやりたいが金倉よりも那須の方が心配であり走らないようになるべき速足で向かうとまだ、回転していないと言うのに那須の工房の前に多くの客が並んでおり命が来るまで開けないようにという忠告を守っているようだった。


「み、命くん!ど、どうしよう!」


「取り敢えず、落ち着け。その危なっかしい物を下ろせ」


 あまりの人に混乱していて毒々しい色のポーションを手に持っており今にも撒き散らさんという状態で那須を落ち着かせる。多くの客が待っているので手短に済ませなければならない。


 落ち着きを取り戻したが多くの人が居るという事もあり緊張している様子でありどうしたものかと考えていると深く息を吸って気合を入れている。


「が、頑張る!」


 あの那須が自ら人と関わろうとしているのを見て感動してしまうが那須の覚悟を無にしないために開店すると案の定、人がなだれ込んで那須はプルプルと震えながら今にも命の後ろに隠れようとしているが頑張って耐えている。


「すげー品質!本当に一年生の作ったもんかよ!」


「な!うちのギルドの連中が作るのよりも品質が高いぜ」


 多くの客が陳列されているポーションの品質に驚いており誰もが籠の中に商品を詰めていき命達はあっという間に会計に追われる。幸い、袋詰めはセルフでしてもらうようにしており会計だけに集中できるのだが休む暇なくやって来る客を捌き、那須は減った品を陳列している。


 数十分もしない内に棚から商品が消えていき用意しておいたものが底を尽き始め那須は増産体制に入り、命はやってきた客に商品の説明をしたりと大忙しでポーションの材料がなくなって閉店する事にはクタクタになっていた。


「み、水……!」

 

 水も飲めないほど忙しくて砂漠の住人の様に水を求める。命はコップに魔法で水を入れて喉を潤す。予想以上の人であったが何とか捌くことが出来て那須のポーションを求めるものがこれだけ居るとは思わなかった。


「お、お疲れ様。これ、疲労回復のポーション」


「ありがとう」


 そんな今の状況にピッタリなポーションがあるんだなと思いながら一気に飲むとハーブティーを飲んでいるような爽やかな口当たりでポーションとは思えないほど飲みやすい。飲み終わってから疲労回復のポーションなんてあったかなと脳裏によぎる。


「これって……」


「うん。新しく作ったの」


 笑顔を見せながら爆弾発言を投下して来る。あれだけ必死に新しいポーションのレシピを売りつけたと言うのにまた、新たなポーションを開発したとは流石に予想できず天才にもほどがある。


 レシピを購入してしまってその売上の何割かを得られるようになって那須はかなりの資産を持つこととなり衣食住どれも充実している那須は研究用の素材を買う位しか使い道がなく金が増えれば増えるほど扱える素材が増えていき必然的に作れるポーションの数も増えていくという事になる。


 残酷な現実に思わず現実逃避したくなってしまうが命がこの少女の面倒を見なければ誰が見るのかという事になり安城に相談してまた、買い取ってくれる先を見つけなければならない。


「これから、新しいポーションを開発する時は事前に行ってくれ」


「う、うん。分かった」


 命が那須から解放されるのは一年後であり新入生として入って来る一人の少女が那須と意気投合し錬金術師でありながら商才を持っており彼女によって救われるのだがそれはまだ、先の話である。

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