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現代ダンジョン サモナーが行く  作者: 金林檎


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第五十七話

「うへぇ……すげぇ、込み具合だな」


「購買で適当に済ませるか?」


「何言ってやがる!ここまで来たんだから絶対、特別ランチを食って見せるぜ!」


 気合を入れる宍戸であるが物凄い行列であり少し考えただけで自分の分は無いと分かりそうなものであり命は適当に日替わり定食でも頼もうと思いながら列を待つ。これだけの人数を捌いてしまうほど優秀であっという間に命達の番になった。


「特別ランチで!」


「ごめんなさいね。もう、売り切れちゃったの」


「そんなー!」


 命の思っていた通り、やはり完売となってしまっており項垂れる宍戸を他所に日替わりのミックスフライ定食を受け取り先に席に着く。揚げたてのエビフライやアジフライなど多くの種類のフライに味噌汁に白米とザ・定食と言った感じで宍戸を待たずに食べ始める。


 やはり一流の料理人を揃えているだけあって美味しい。食べ進めていると宍戸が遅れてやってきて日替わりBセットを頼んだらしく大盛りのから揚げが盛られている。育ち盛りの男の子らしい大盛りメニューであり腕白が過ぎる。


「結構、早めに来たと思ったんだけどなー。次は絶対頼んでやる!」


「凄い熱量だな……」


 呆れてしまうが何事にも全力なのが宍戸の良い所かなと思いながら味噌汁を飲む。宍戸と他愛ない会話をしていると大きな話し声が聞こえてくる。


「じゃあ、小林は夏休みにハワイに行ってたのかよ!」


「あぁ、うちのグループが経営する高級ホテルにね」


 小林が何時もの様に金持ちアピールをしている様で取り巻きが盛り上がっている。ハワイはダンジョンが当たり前となった現代でも有名な観光地として知られており多くの富豪の別荘があり小林グループはそこで高級ホテルを経営しており探索者としてでなく経営者としても成功しているらしい。


 探索者だけでも稼げるだろうに更に貪欲に稼いでいる様で小林グループの話は方々で聞き、たった一代で巨万の富を築いておりそれを一心に受けてきた小林の性格がこうなのも頷ける。


「俺たちはロンドンに行ったけどな」


 自慢げに行っており流石の小林グループもロンドンに別荘は建てられないだろうと宍戸も理解しておりそこで夏休みの殆どを過ごしたのはいい思い出だ。宍戸はロンドンを気が済むまで満喫しており毎日、あの店が凄かったとか聞いてもいないのに毎日話してくれて観光していないと言うのにロンドンに詳しくなってしまった。


 昼食を終えてから授業を受けて放課後になると命は金倉の工房に顔を出し、そこにはやはりと言うべきか那須の姿もあった。いつも通りの光景であり那須も自分の工房を持っているはずなのにポーション作成の時以外は決まって此処に居る気がする。


「連絡して通り、獅子ギルドに行くぞ」


「ほ、本当に行くの?」


「命くんに任せたら大丈夫だから。頑張って!」


 渋る那須を説得しながら命は共に獅子ギルドに向かう。一角獣ギルドとは違い、何処か実用的な作りで受付にも最低限の人間しか置かれていない。あれだけの資金を持っているならば高級志向に行きそうなものだがそんなことは無いらしい。


「約束していた柏崎です」


「承っております。どうぞ、こちらへ」


 受付に通された先は応接室でそこには年老いた男と若い女の姿があり二人とも如何にもな雰囲気を纏っている職人で那須は命の後ろに隠れてしまっている。


「獅子ギルドの工房を纏めている親方の島崎さんと助手の菊池さんです」


「どうも、初めまして。高名な那須さんのポーションを扱えるとは光栄です」


 老練な職人である島崎はとても温和な笑みを浮かべており職人とは思えないほど腰が低く那須も警戒心が和らぐ。彼の名前は聞いたことがあり職人として多くの武器を作り上げておりあの獅子王誠の武器を打ったのも彼だと言う話でありその温和な表情からは想像できないほどの職人である。


「助手の菊池です。ポーションを取り扱っています」


 菊池の名も広く知られており若き天才薬師として多くのポーションを世に出した人物で流石は獅子ギルドで人材が揃っている。人も揃ったことだし早速話を始めよう。


「これが那須が新たに開発したポーションです」


 取り出されたポーションは海の色の様な美しい色をしておりその見事な見た目に唸る。菊池はポーションを手に取りじっくりと観察する。


「何を使ったんです?」


「べ、ベノムラッドの毒液を……」


「は?あの少量でも死に至るという猛毒を?」


 なんて危険なものを使っているのかと流石の菊池もドン引きであり那須の瞳が職人のものとなり淡々とポーションについて説明する。


「ベノムラッドはその毒を持つが毒に対して耐性がありそれに着目してベノムラッドの毒を無毒化してラッドの魔石を加えることで毒や状態異常に対する耐性を付与するポーションを作り出す事に成功しました」


 今までのオドオドした姿からは想像できないほどの早口であり下手をすれば命を失いかねない作業であり菊池も息を飲む。


「猛毒を扱うからには相応の装備が必要です。どうやったのです」


「ベノムラッドの毒はその魔石で中和できます」


「何と!?」


 那須の言葉に島崎も驚く。ベノムラッドの毒を受けて死亡するケースはとても多くその小ささと速さによって多くの探索者の命が奪われてポーションが間に合わないほどの進行速度で嫌われ者として疎まれておりどうにかしてベノムラッドの毒を中和できないかと多くの薬師や錬金術師が思案したが毒無効のスキルを有した装備を着るしかないと言う結論が出たが毒無効の装備など高価すぎて全ての探索者が持てるものではない。


「……ベノムラッドの魔石で中和できる。成程、毒の持ち主ならばその毒は効かないという事ですか」


「大発見じゃな」


 そのベノムラッドの毒で作り出されたのがこの状態異常耐性ポーションでベノムラッドという厄介なモンスターを倒さなければならないと言う危険はあるがこのポーションが齎す恩恵は凄まじくわざわざ状態異常耐性を持った装備を着なくてもいいという事でありかなり画期的な発明と言える。


「並のギルドでは素材を用意できんかもしれんが我々、獅子ギルドならば問題ないじゃろう」


 世界最強の探索者を要する獅子ギルドは単純なギルドメンバーの力量だけならば一角獣ギルドよりも凄まじいものであり多くの人材を抱えておりベノムラッド如きにやられるようなギルドメンバーは一人としていない。


 交渉はスムーズに進み。那須のレシピを買い取ってくれると言う話となり特許として売り上げの一部を那須に行くように取り計らってくれて一年生とは思えない資産を有することになる。


「何とか纏まったな……」


「あ、ありがとう。何時も……」


「気にしなくていいさ。那須が成長すればそれだけ俺にも恩恵があるんだから」


 那須のポーションにはそれだけの価値がありこれくらいの苦労は気にならない。今回の状態異常耐性ポーションも上手く使えば戦闘の役に立ち大きなアドバンテージとなるだろう。どちらかというと命は文化祭の事が心配であり新しく作ったポーションも並べるだろうから多くの人が押し寄せてくるのは疑いない。


 それを那須が捌ききれるなんて思っておらずクラスの出し物が展示で良かったと心から思う。


「これから忙しくなるぞ」


 文化祭の準備もあるから気軽にダンジョンに潜ってはいられずどれだけ時間が掛かるのだろう。


 後日、クラスでは展示会の為の準備に奔走しておりそれを指示するのは実行委員である小林で自分は動かずに指示を飛ばしているだけであるがその指示が的確なので誰も文句は言わない。


「小林、変わったよなー。前まで金持ちアピールしかしねーお坊ちゃまって感じだったのに」


「成長したって事だろ」


 作業をしながら宍戸と話す。夏休み前とは偉い違いであり命達がロンドンに行って多くの体験をしたように小林も得難い経験をしたのだろう。人間、変わるのは一瞬であり小林がそうであっても不思議ではない。


 魔石を展示するための土台であるテーブルを自作しようと言う話になりDIYが得意な者を中心に作業をしており木材を切るのに戦士職が大活躍であり筋力が低い命なんかはテーブルに被せる布を運んでおり召喚モンスターを使っていいなら活躍できるがあまりいい顔はされないだろうから止めておく。


「樋口さん!それ、重いだろう。僕が持つよ!」


「いやいや、俺が持つ!」


「自分で持つから……」


 樋口はファンクラブの者らしき人達に囲まれてしまっており樋口にいい所を見せようと躍起になっており困っている様子なので間に入ろうかと思ったが命が行くよりも先に動いている者がいる。


「お前ら、作業効率が落ちるだろ。さっさと他の仕事をしろ」


「何言ってんだ!俺は樋口さんを手伝って」


「その作業にそんなに人員は必要ない。少し考えれば分かることだろうが」


 正論で反論する余地を残さない。周りのクラスメイトからの視線に耐えられなくなりファンクラブの人間は離れていき、樋口はお礼を言おうとするが小林は直ぐに去っていき他の所に指示を出しに行った。


「別人だろ」


「夏休みに何があったのやら」


 あまりの小林の変わりように宍戸は引いており命も小林が仲裁するとは思わなかった。夏休み中に父親の友人だと言う探索者に完膚なきまでにボコボコにプライドをへし折られて人生観が百八十度変わったと言うのを知る者は少なく小林の取り巻き達は知っているが周りに吹聴するようなことはしない。


 それだけ小林をボコボコにした探索者が恐ろしかったという事もあるがいい方向に変わった小林に上辺だけでない魅力を感じ付いていくことを決めたからであり彼らの結束は固い。そんな事を知らない周りの人間にとって何か悪い物でも食ったんじゃないかと懐疑的な目で見ており命達もそうであった。


「一体何がったんだ」


 本人に聞きに行くほど親しくはないのでどうしてそんなに変わったのかは謎に包まれているがいい方向に変わったのは確かであり食堂の一件から完全に変わってはいないのも事実である。

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