第五十五話
「本日はよろしくお願いいたします!」
「うん。よろしく」
命は夕陽と共に出雲ダンジョンに潜っており立花はゴーレムとゴブリンを連れており手には弓を握っている。命は念の為にと即応できるようにフォボスを連れておりそれ以外の召喚モンスターはつ淹れていない。
「わー!とってもフカフカですね!」
「ヴァン!」
夕陽はフォボスの毛並みに魅了されており撫でる手が止まらないらしい。まぁ、フォボスを見かけたらやりたくなる気持ちは分かる。撫でているのを横目に夕陽が連れているウッドゴーレムとゴブリンを見る。
ウッドゴーレムは樹木そのものが二足歩行で立っていると言うのが印象的でゴブリンは簡易的な者であるが革鎧を着ており正規品ではないのか少し、粗があるが丁寧に作られているのが分かる。
「この革鎧は?」
「私の友人が鍛冶見習いでして、試供品を譲ってくれたんです」
「成程、それで……」
鑑定するとこの見た目でそこそこの性能をしており貧弱なゴブリンの身を守るのに最適な装備であり金倉ほどではないがいい腕をしている。フォボスを撫でる手を止めて真剣な眼差しとなり何時でも矢を番えられるように矢筒に手を掛けている。
「取り敢えず戦闘を見せてもらおう」
「はい!頑張ります!行くよ、アイアン、ロビン!」
モンスターに向かっていく。ゴブリンやラットと言った低ランクのモンスターで命が介入する程の相手ではない。夕陽は召喚モンスターと連携して危なげなくモンスターと戦っていく話に聞いていた通りの堅実な戦い方で危なげなく倒していく。
特にゴブリンのロビンの活躍が目覚ましく投石にとって相手の出鼻を挫いて夕陽が止めを差す援護を行ったりわざと壁役であるアイアンにヘイトを向けさせたりとゴブリンとは思えないほど賢い立ち回りでハンターの様な立ち振る舞いをしている。
「どうですか?」
「パーティーの利点をうまく活用した上手い戦い方だ。もう少し、積極的に行ってもいいと思うがそれはもう少し召喚モンスターが増えてからかな?次に召喚するモンスターは決まっているか?」
「鬼を召喚しようと思ってます」
命と立花では召喚できるモンスターの種類が異なっている様で命が立花のレベルでは鬼なんてモンスターは召喚できなかったが立花の召喚魔法では鬼の他に色々なモンスターが召喚できるらしい。
夕陽は後ろに命がいるという安心感からか順調にダンジョンを進んでいっている。夕陽の戦闘を見ていて彼女の弱点が見えてくる。
彼女のパーティーには火力が足りておらずアイアンの筋力は確かなものであるが動きが鈍重でラットの様な早い動きのものには攻撃を避けられてしまいロビンも立ち回りは見事であるが投石をメインウエポンとしている為、ダメージは低く主なダメージ源が立花の弓矢となっているがサモナーである立花のステータスは魔法職タイプで筋力もそこまで高くないのでダメージの伸びが悪い。
「もっと確りした矢が使えればいいが値が張るからな……」
矢もピンキリで木の矢から魔石を用いた属性矢など様々であり探索者を始めたばかりの夕陽では基本の木の矢を使うしかない。弓の腕自体は確かなものであるが所々、威力不足で殺しきれていない場面も見られてこれは伸び悩むのも無理はない。
「よし、一旦中断しよう」
「は、はい!」
命はフラウを召喚して周囲に結界を張りモンスターが近づけないようにする。
「分かっていると思うけど夕陽ちゃんが伸び悩んでいるのは火力が低いからだ」
「はい……分かっています」
自覚している様で少し安心する。手っ取り早いのは金に任せて高価な弓矢を買う事であるがそれは新人である夕陽には出来ないことでありならば別の手段を取るしかない。
「君には魔法を覚えてもらう」
「魔法ですか?そんな簡単に覚えられるものなんですか?」
「簡単ではないけどダンジョンって言うのは魔素の塊だからね。地上でやるよりも習得難易度は低いよ」
そういいながら命はその辺に落ちている木の棒で魔法陣を書く。魔法の理論は学校の授業で習っておりどうすれば覚えられるのかというのは頭に入っている。魔法は既に研究が進み、天才だけのものではなくなっており凡人でも覚えることが出来るのだ。
「何を書いてるんです?」
「魔素を吸収しやすいようにする魔法陣。ここはダンジョンだから魔素は幾らでもあるから色々と試せるよ」
魔法陣の中央に夕陽を立たせて魔法陣を起動すると周囲の魔素がまるで蛍の光のようにぽつぽつと光り出していき魔法陣に吸い込まれていく。
「魔素を感じるだろう?それを体に巡らせるようにイメージするんだ」
「はい……」
目を閉じて意識を集中させる。体の中に暖かな何にかが入り込んでいるのを感じて夕陽は命の言う通りに体に巡らせるようにイメージするとグルグルと熱が体の中を循環し腹部に熱の塊が築かれるのを感じる。
その瞬間、脳内に情報が駆け巡り手を翳すと火が灯る。
「おめでとう。これで魔法が使えるようになった」
「これが魔法……」
奇妙な感じであり今まで使えなかったものが急に使えるようになって驚きを隠せない。思った以上に飲み込みが早く、魔力を自覚するのに人によってはかなり時間が掛かると言う話なのだが夕陽は簡単に魔力のイメージを掴み魔法を発現させるに至った。
「それじゃ、今度は付与術を覚えようか」
「えっ?」
「夕陽ちゃんの戦闘スタイルだったら魔法を使うよりもエンチャントさせて放った方があってるからね」
ビシバシ扱いていくつもりであり泣き言は一切許さない。夕陽の才能ならば付与術を覚えるのにそんなに時間は掛からないだろうしと思いながら指導を開始し夕陽は地獄を見ることになる。
「や、やっと出来た!」
やっとの思いでエンチャントを成功させて思わず涙が流れそうになるくらい喜んだ。朝比奈仕込みの命の指導はとても厳しいものであり間違いを犯したら直ぐにやり直しを命じられて一切の妥協を許さないもので成功させるためにどれだけのリテイクを繰り返したか分からずエンチャントを覚える過程で火魔法だけでなく風魔法と水魔法を覚えてしまう程、厳しい物であった。
「これで火力問題はクリアされたな」
「あ、ありがとうございます……」
にこやかに笑う命に夕陽は引き攣った笑みを浮かべる。休み暇なくダンジョン探索を再開することになり夕陽は戦闘効率が見違えて良くなっているのを実感する。風のエンチャントによってアイアンの弱点であった鈍重さがいくらかマシになり目に見えて攻撃の速度が上がっておりロビンの動きも更に機敏なものとなり嬉々として嫌がらせを行っている。
一番はフィニッシャーであった夕陽の矢の威力がとてつもなく上がったことであり前回までは殺しきれなかったモンスターも簡単に倒せるようになり何本も放って漸く、倒せたモンスターも一矢だけで十分だった。
「凄い……」
「君の弓の腕は並のアーチャーにも負けないものだ。威力が補われたらこんなものさ」
サモナーとは思えないほどの弓の腕でありこれがもっと性能の良い弓を手に入れたらどうなるのか気になる所であり今まで以上にスムーズに探索を進めており命の助言に従ってより攻撃的な戦い方をするようになった。
「召喚魔法のレベルが上がりました!これで新しい召喚モンスターを召喚できます!」
夕陽は興奮した様子でサモナーにとって一番楽しい瞬間であり自分も通った道だなと微笑ましい気持ちで見守る。夕陽の召喚したのは言っていた通り鬼でありイメージしていた偉丈夫といった感じではなく端正な体つきの人型モンスターで腰に刀を装備しており頭の角がなければ人間と見惑う容姿であり侍と言った感じだ。
「イメージしてたのと違うな……」
「でも、頼りになりそうです!」
鬼いうとやはりアヴァリスの様な筋肉ムキムキなモンスターだと勝手に思っていたのだが夕陽が言うには人が鬼へと転じたと書かれている様で通りでこんな感じなのかと納得する。
白鬼と名付けられた鬼の活躍ぶりは目覚ましく刀を手に敵陣に突っ込み凄い勢いで敵を一掃しており命の目からしてもかなりの技量であり傷1つ付くことなく敵を倒していく様は圧巻でありアインともいい勝負をするんじゃないかと思わせるほどだ。
「中々、いいな……」
少し、羨ましく感じてしまう位で最近、召喚したモンスターは遠距離や遊撃中心のモンスターばかりで完全な前衛を担えるモンスターを召喚していなかったなと考えており夕陽の指導が終わってから新たに召喚しようかなと迷ってしまう。
それだけ白鬼の活躍は大したもので夕陽のパーティーに掛けていた前衛役を十分に全うしており単純な討伐速度なら一番であり夕陽も負けじと奮起している。
「一気にこんなに進めるなんて……初めてです」
それから数時間が経ってボス部屋前までたどり着くことが出来て夕陽は驚いている。何時もは一階層の半分くらいで矢が尽きて仕方なく撤退することがザラだと言うのに今回は命がいるとはいえボス部屋前まで行くことが出来るなんてと感激している。
「夕陽の実力ならこれ位、当然さ。それよりもボスに挑めそうかい?」
「はい!やってみます!」
やる気十分であり夕陽は迷うことなくボス部屋の扉に手を掛けて勢いよく開く。一階層のボスはゴブリンリーダーであり多くのゴブリンを統率しており厄介な相手だと言えるが成長した夕陽ならば問題なく倒せるだろう。
ボス戦で活躍してのはやはり白鬼で迷うことなく敵陣に乗り込んでゴブリンの首を斬り、夕陽も動き回りながら取り巻きのゴブリンを射抜いていきゴブリンリーダーにも着実にダメージを与えている。
乱戦状態となりロビンの厭らしさが増しており投石で相手の視界を潰したり足を掛けて相手を転ばせたりと着実に相手の足並みを乱すようなことを淡々とやっておりああいった敵の戦意を下げる役割が出来るものはそういない。
「パーティーとして纏まってきたな」
アイアンもその頑強さで多くのゴブリンに攻撃されていると言うのにびくともしておらず夕陽に向こうとするゴブリンを抑えており盾役としての役割を全うしておりどの召喚モンスターも役割をしっかりとこなしており命が少し手助けした多だけで一端のパーティーへと様変わりした。
「この調子なら俺の助けがなくても大丈夫だな」




