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現代ダンジョン サモナーが行く  作者: 金林檎


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第四十九話

 目を覚ますと自分に割り振られた客室であり理恵が運んでくれたらしいと聞いて少し恥ずかしく思いながら昨日、風呂に入る前に眠ってしまったのでさっとシャワーを浴びて体がさっぱりとした状態となり寛いでいると朝食の時間になったと知らされる。


「柏崎くん。時計塔ダンジョンの一階層を踏破したらしいじゃないか。おめでとう」


「あら、そうなの?凄いわねー」


「恐縮です」


 にこやかに祝福してくれる。気恥ずかしく思いながら食事をしながら雑談をする。獅子王と樋口は留守にしている様で獅子王はダンジョンに潜っており樋口は依頼の負傷者の治療がかなり長引いているらしく出先で泊まっているらしい。


「そうだ、君たち。オークションに興味はあるかな?」


「オークションっていうと金持ちが良くする?」


「まぁ、身も蓋もない言い方だがそうなるね」


 話によればロンドンで大きなオークションが行われるらしくその招待状を貰ったとのことで興味があるのならば一緒に来ないかという話でありオークションには多くのアイテムが並ぶと言い、買うのは難しいかもしれないが色々とアイテムを見るいい機会だ。


「折角のお誘いですので有難く」


「はいはい!俺も行く!」


「はっはっは!元気がよろしい。オークションは今夜行われるようだから時間を空けておくれ。琴乃や樋口くんには私の方から話しておこう」


 和やかに食事が行われて命は理恵に車を回してもらい探索者ギルドへと向かう。受注していた依頼書を達成したのでその判を押してもらう為であり少し待って受付に行くと前回、依頼を受ける際に受付をしてくれた受付嬢で出会った。


「依頼達成の判子を貰いに来ました。これが素材です」


『えっ、本当に?』


 素材をテーブルに乗せると受付嬢はあからさまに困惑している様子だが、少しすると平静を取り戻して受付を済ませてくれる。


『では、登録証を』


「はい」


 こういった依頼で手に入る金銭は全て探索者になる時に作った口座へと送られて探索者はそれに紐付けされてクレジットカードを発行されて学校に入学する時に渡されている。このクレジットカードは広く流通しており使えない場所はないと言われるくらいでそれだけ探索者協会が力を持っているという事である。


 数千万もの金を手に入れて宍戸なら有頂天になるだろうが装備を一新したら直ぐになくなってしまう額であり命はその点、金倉に素材を提供することで無償で装備を作ってもらっており金はたまる一方で少し前に命の口座を見た母親があまりの額に腰を抜かしていたことがる。


 Aランクの魔石を売るだけでもかなりの金になり金倉に装備を作ってもらわなければならないから取っておいているが昨日手に入れた魔石を売れば数年は遊んで暮らせるだろう額になる。


「オークションがあるから幾つか魔石を売ってもいいな……」


 装備製作に使わなかった魔石が幾つか存在しており金持ちばかりが参加するオークションで目的に物が買えるか分からないが金はいくつあっても足りないだろう。そう考えて命は魔石換金所へと向かい手持ちのAランク魔石やBランク魔石など様々な魔石を換金する。


 総じて七千万位となり一気に金を手に入れて口座にある金と合わせれば5億近い金額を有しておりこれならば何か1つくらいは落札できるかもしれない。


 観光という気分でもないので換金を終わらせると直ぐに別荘へと戻り、連日のダンジョン探索での疲れを癒すことにする。


「ん?もう、こんな時間か」


 日本から持ち込んでいた各国のダンジョンに関する研究資料を纏めた本を読んで寛いでいると日が沈んでしまっておりついさっき、昼食を取った感覚だったのだが時間が流れるのは早い。


「柏崎様。ご準備を」


「分かりました」


 オークションは結構、豪華な会場で行われるらしく最低限のドレスコードが存在しており衣装は獅子王家が出してくれると言うので命は理恵にされるがまま身を任せてタキシードの様なしっかりとした衣装を身に着ける。


 ロビーに向かうと同じような格好をした宍戸とドレスを身に着けている樋口と獅子王の姿があった。

 

「ネクタイ、こんなぎっちりしめなくてもいーだろ」


「外すなよ。見苦しくなるから」


「分かってるよ」


 堅苦しい衣装に難色を示しているが口だけで樋口はひらひらとしたドレスに落ち着かないのか顔を赤くしている。


「似合ってるよ。二人とも」


「あ、ありがとう。こんなの着たことないから落ち着かなくって」


「ん。何事も慣れ」


 獅子王は流石に着慣れているのだろう。立ち振る舞いからして自然体なものでスカイブルーのドレスが一層際立っている。大型のリムジンに乗せられて会場へと向かう。


 リムジンなんて乗ったことがないので少し、落ち着かなったがそれ以上に落ち着かない様子の樋口とあまりの豪華さに興奮している宍戸の姿を見て、かえって落ち着く。


「獅子王はどこのダンジョンに潜ってたんだ?」


「大英博物館」


 英国の三大ダンジョンの1つでありダンジョン内が白亜紀の世界となっている特異なダンジョンで現れるモンスターは全てが恐竜で低ランクとは言えドラゴンの一種である恐竜はとても強大な敵でどの個体も凄まじい大きさをしておりタフなのでかなり凶悪なモンスターと言える。


 そんな地獄の様なダンジョンに恐らくたった一人で挑んでいるのだから獅子王の強さはどれだけ伸びているのか想像できないが際立った怪我とかがない所を見るとほぼ、無傷で切り抜けていくことになる。


「凄いな……宍戸はどうだった?」


「大英図書館に行ってきたよ。まぁ、ソロだし一階層をちょろっとだけどな」


 大英図書館は魔法スキルを持たない者でも魔法を行使できるスクロールという素材を落とすことで知られており多くの錬金術師や戦闘能力を持たない職業のものがこぞって求めるアイテムでかなりの金稼ぎになったらしい。


「私は凄い大変だった。部屋中に怪我人が居てその手当に奔走させられて眠る暇さえなかったんだもの」


 樋口の仕事はとても過酷だったようで今の時代、怪我人などそれこそ無数に出てくるであろう事は明白であり回復魔法の持ち主はそう、多くなく貴重であり樋口レベルの神官職などそういうものではなく容赦なくこき使われたことだろう。


 そうやって和やかに話していると会場に到着してとあるオペラハウスを貸し切りにしたらしくそこの劇場でオークションが開催されるらしい。信二は当然、VIP席に通されて命達はご相伴に預かることになった。


 VIP席は機密性を有した一室でそこに信二と理恵が先に座っていて命達が挨拶をすると気にすることはないと席に促される。


「オークションは初めてだという事だから説明しておこう」


 こういったオークションではアイテムを鑑定するのは禁止されており参加者には鑑定防止の眼鏡が渡されて命達も入室した際に渡されており出品アイテムの名前だけが発表される形式の様で見るものの目を試されるものとなっている。

 

 ただ、金を積むだけではいい物は変えないという事でありよくできたシステムだ。


「私はこのオークションの出資者の一人でな、現役時代にはダンジョンで手に入れたアイテムをよく出品したものだ」


「ふふ、懐かしいですわね」


 人に歴史ありという事でありそうこうしている内に照明が消えてオークションが開始される。


『皆様、お待たせいたしました。オークションを開始させていただきます!』


 開始を告げるのは燕尾服に兎の仮面被った男でこれだけの観客の前に立っていると言うのに全く緊張している姿を見せず遠目からであるが立ち振る舞いからしてかなりの実力者であることが伺える。


『出品者の皆様に感謝すると共に此処に集まっていただきました皆様に感謝を申し上げます』


 恭しくお辞儀をして早速、劇場にアイテムが運び込まれる。布で包まれており司会役の男が布を掴み一気に引き抜く。


『さて、最初の出品物は『暗黒竜の天鱗』!100万円からスタートです!』


 照明に照らされたのは漆黒の鱗でありその大きさから成龍の鱗であることが分かり鱗の中でも最も価値が高いとされている天鱗でありその価値の高さは計り知れずあまりの上物にオークション会場の人間は感嘆の声を上げる。


『150万!』


『200万!』


 オークションが開始され凄まじい熱気が会場を包み込む。鑑定が封じられているので本物が同課は分からないが単純な見た目だけでも芸術的価値のあるものであり好事家が好みそうな代物だ。


「うーん、暗黒竜の天鱗か……」


「どうです、あなた?前に竜の鱗が欲しいと言っていましたけど」


「偽物ではないとは思うがこれから先、何があるか分からないからな……これは見逃しだな」


 獅子王夫妻は真剣に購入するかを考えている様で宍戸なんかはかっけーと大興奮であり獅子王はマイペースに備え付けのお菓子を頬張っている。


『550万で落札されました!おめでとうございます!』


『よっしゃ!』


 どこかで見たことのあるような金髪の男が落札したようで喜びの余りガッツポーズをしておりオークションはまだまだ進む。


『砂漠虎の外皮です!』


『死霊鬼の大鎌です!』


『鬼神の大槌です!』


 次々と出品物がはけていき会場のボルテージは落札される度に上がり今度はワゴンで箱が運ばれてきて箱の中にはとても古びた指輪が収められており今にも風化しそうな状態の悪さで会場のテンションが一気に下がる。


『えー、中東で発掘されたソロモンの指輪だそうです。さー、50万円から!』


「あんなの誰が落札すんだよ」


 誰も手を上げるものは居らず司会役の男も困っている様子で隣にいた宍戸もあまりの古臭さに本物ではないと決めてかかっており命はその指輪がどうしても気になってしまう。確かに見た目は古びていて触ったら今にも崩れそうな見た目をしており理性でもあんなものは誰も落札しないと思ったが指輪が一瞬だけ光ったのを見逃さなかった。


「100万」


「マジかよ、命!?」


「本当にあんなの落札しちゃうの?」


 心配の声が上がるが命をこれまで導いてくれた直感を信じることにする。十分ほど経ったが他に落札に声を上げるものはいなかったのでそのまま、命が落札になり落札された出品物がVIP席に送られてくる。


『こちらがアイテムですが……本当に宜しかったので?』

 

「はい。問題ありません」


 オークション関係者も念のため、聞いてくる。この品は見て分かる通り目に見えた外れ品であり名前の響きが良かったので出品物に加えられたものでまさか落札されるとは思いもしなかった。


「ソロモン王の指輪……俺の予想が正しかったらこの指輪は」


 七十二の悪魔を使役したと言う、王の名前であり命は迷うことなく指輪を自分の指にはめ込むと風化寸前だった指輪が美しい銀色にサファイアの宝石が煌めく姿へと変わりあまりの変わりように驚くが重要なのは性能だ。


『召喚王の指輪』ランク不明

 攻撃力なし 防御力なし 耐久度∞

 スキル

 召喚魔法、上限解放、魔力貯蓄


「何だこれ……」


 これが命の生涯にとって一番の決断でありあの日、この指輪を落札したことに感謝しない日はないと後に語る命のメイン装備の1つとなるアイテムとの出会いだった。

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