第四十五話
早速、命は使用に車を出してもらってロンドンの代表的なダンジョン【時計塔ダンジョン】へと向かう。ロンドンの象徴であった時計塔がダンジョンへと変質したという経歴があり魔法モンスターの落とす素材から世界中から探索者が集まっておりダンジョンの受付には多くの探索者が並んでいる。
「柏崎様はこちらに」
「え?並ばなくてもいいんですか?」
「旦那様が取り計らってくれておりますので」
並んでいる人達を横目にゲートへと通される。車の中で装備に着替えているので準備は万全で召喚モンスターを召喚しておく。時計塔ダンジョンは初見であり一階層からAランクモンスターがでるとのことで古参メンバーで固める。
「では、お帰りをお待ちしております」
彼女は待合室で待機しているとのことで恭しくお辞儀をされて見送られる。
ダンジョン内はとても広い空間でカチカチという時計の針の音が響いておりあまり大きな音ではない筈なのに耳の奥に響いてくる不思議な感覚で召喚モンスターも警戒している様子。
「結構、人が居るな……」
自分達の他にも探索者の姿があり結構な人数がいると言うのに狭いとは感じないのでどれだけ広いのかと思っているとこちらにモンスターが向かってくる。
ブラック・マジシャン
スキル
暗黒魔法、魔力暴走、魔法強化
現れたのは真っ黒なローブを纏った人型のモンスターで顔はローブに覆われて見えていないが持っている杖は素人である命から見ても最上級な者であるのが分かる魔力と輝きをしておりブツブツと魔法の詠唱が聞こえてきてアヴァリスが雷光と共にモンスターの目も前に現れて拳を振るうが阻まれる。
「ギャ?」
アヴァリスの拳を阻んだのは分厚い氷の壁で鑑定のスキルでは暗黒魔法以外の魔法は持っておらず詠唱をしているブラック・マジシャンではこんな魔法は行使できないので必然的に別のモンスターの仕業であるのは明白だ。
「フレイム・ボール」
ブラック・マジシャンの後方から氷の槍が放たれて詠唱破棄された炎魔法が迎撃する。後ろの方からぞろぞろとモンスターが現れる。
フロスト・マジシャン
スキル
氷河魔法、魔力暴走、瞑想
フレイム・マジシャン
スキル
灼熱魔法、魔力暴走、付与術
「このクラスの魔法モンスターが徒党を組むか……」
さっきの攻撃も迎撃出来たが割とぎりぎりで冷や汗を流す。魔力暴走によって強化された魔法は命から見ても驚異的でそれを放たせないようにと指示を飛ばす。
ブランがバットステータスを多重に付与して詠唱途中のブラック・マジシャンを行動不能にしアインが電気を纏わせた一閃でその首を飛ばすと詠唱途中だった魔力が行き場を無くしてその場で爆発する。
幸いにも被害はなく爆発を盾で防いでおりどうせならアインの死霊魔法で死体を操って戦力にするつもりだったが宛てが外れた。灼熱魔法が広範囲に放たれてフォボスのブレスがそれを押し留める。炎と氷が激突して水蒸気が周囲を包む。
「ノクトビジョン」
暗視の魔法であるがこういった目の前がホワイトアウトした時にも使われるので雪山のダンジョンなどでも使われる魔法で相手が魔力を練っているのを感知する。
アインとアヴァリスにも同じ魔法を付与してアヴァリスは迷うことなく移動しアインは雷撃を放ち、ローブ越しのくぐもった声が聞こえてきて命中したようだ。
「フリィー」
疾風を発生させて水蒸気を散らす。アインの雷撃を受けて身動きが取れなくなった所をアヴァリスによって頭を潰されている。アインが手を翳すと頭を潰されたフロスト・マジシャンの体が動き出して魔力を練っており残ったフレイム・マジシャンに向かって魔法を放つ。
アインの死霊魔法によるもので素体が強いので消費魔力が大きいのか数発、魔法を行使させた後に魔法を解除し向かってくる魔法の対処に追われるフレイム・マジシャンに切りかかる。
剣閃が纏われた斬撃でフレイム・マジシャンは魔石へと姿を変える。
≪レベルアップ!スキルレベルがアップしました。召喚モンスターのレベルがアップしました≫
柏崎命
レベル14→15
スキル
鑑定13→14、炎魔法8→9、無言詠唱3→4、詠唱破棄3→4
フラウ
フェアリープリンセス
レベル2→3
「道中のモンスターでこれか……流石は時計塔ダンジョン」
もしも、もう一体いれば戦況はどうなっていたか分からなかった。今までのモンスターとは比べ物にならないレベルで周りの探索者も苦戦している様子でありイギリスを代表するダンジョンなだけはあると落ちた魔石を拾い上げる。
かなりの魔力が内包された魔石で今までもAランクの魔石は何度か見てきたがこれほどまでも魔力を持ったものは初めてでありこれが魔法職が求めてやまない素材なのかとじっくり観察したいがモンスターが襲ってこないとも限らないのでバックパックに入れる。
「おーおー、休む暇もない」
テンペスト・マジシャン
スキル
嵐魔法、魔力暴走、魔力強化
ライトニング・マジシャン
雷魔法、魔力暴走、詠唱破棄
アース・マジシャン
大地魔法、魔力暴走、無言詠唱
ぞろぞろとモンスターが現れて先程の三体のモンスターに加えて新たなモンスターの姿がある。まさに千客万来で気合を入れ直す。
「フリィー」
相手に魔法を撃たせないために重力の檻がモンスターを包むが仮にもAランクモンスターでフラウの重力魔法を魔力で中和して重力の檻から脱出する。魔力にあんな使い道があったのかと思いながらも逃れようとするモンスター達をブランとフォボスが襲い掛かる。
魔法障壁とも言うべき障壁によってブランの爪撃が弾かれるがブランの瞳が一際、輝いてアース・マジシャンが倒れる。最も凶悪なバットステータスである即死によるもので魔法モンスターは高い魔力を持っているが状態異常に対する耐性はそう高くないというのを聞いたことがある。
効けば凄まじいがそんなに成功率が高くないスキルでありまともに決まった所を見たのは初めてかもしれない。障壁が無くなってフォボスは物凄い勢いでモンスターに迫っていき足を食い千切り機動力を奪っていく。
「氷華」
氷の花が咲き誇り周囲を氷が覆いつくす。瞑想によって魔力のステータスを上昇して放たれたものでモンスター達の足を一気に封じる。そうなったらアインとアヴァリスの独壇場で輝く剣を振るうアインと氷漬けされたモンスターの体を粉砕していくアヴァリスが戦いに幕を下ろす。
≪召喚モンスターのレベルがアップしました≫
アイン
デス・ジェネラル
レベル5→6
アヴァリス
オーガロード
レベル3→4
「魔力障壁か……普通に魔法で壁を作るよりも安上がりだな」
先程の戦闘でモンスターがやっていた魔力で障壁を作ると言う発想は命にはないもので思わず真似してしまう。半透明のシールドの様な見た目で込める魔力の量に応じで固さも増す様で即座に身を守る際にはこっちの方が使い勝手は良さそうだ。
それと魔力を放出して重力魔法を中和させるあまりに高度な技術で流石に真似できそうにない。流石はAランクモンスターで魔力の扱いはモンスターの方が長けているとは思っていたがまさか、フラウの重力魔法を中和するなんて芸当をやって来るとは思わなかった。
「にしても、よくあの数を倒しきれたな……」
Aランクモンスターが六体と普通ならば撤退を考える案件でありそれを撃破できたのは自信に繋がる。当たれば逃れることは出来ないと思っていた重力魔法をあんな方法で抜け出すとは思ってもおらず多くの学びを得た戦いだった。
『よう、ボーイ!中々、クールだったぜ!』
見るからにアメリカンと言った風貌の男が話しかけてきてテストで出てくるような英語しか知らない命は何を言っているのか分からないのだが学校で支給されている端末には翻訳機能が入っており声を録音して何を言っているのか翻訳してくれる。
「どうも、貴方も探索ですか?」
『わざわざアメリカからな!どいつもこいつも強くて嫌になるぜ!』
陽気に笑う男は革鎧を着ており所謂、軽鎧というスタイルて手には大きなバスターソードを抱えておりその逞しい体に似合った装備と言える。男はポーションをぐびぐびとビールの様に勢いよく飲み干して嫌そうな顔をしている。あまりいい味はしていないようで一般で売られているポーションは性能第一で味は度外視されている。
命の場合は那須がその辺を考慮してくれている様で飲みやすくしてくれている。ポーションの不味さは万国共通なのだなと思いながら仲間らしき人物が男を呼んでいる。
『おっと、呼ばれてるみたいだ。ボーイも気を付けて進めよ!』
「えぇ、そちらも気を付けて」
人の良い笑みを浮かべながらこちらを気にかけてくれて胸が温かくなる。そういえばダンジョンで人と交流したのは初めてだったなと思いながら気持ちを改めて探索に集中する。
『ジョン!勝手に持ち場を離れないでって何度言ったら分かるの!』
『まぁ、ナタリア。ジョンも悪気があった訳じゃないんだから』
『ジョンはパーティーリーダー何だからちゃんとしてもらないと!』
パーティーに戻ったジョンは案の定、パーティーメンバーに起こられてしまっており弓を抱える金髪の美女に怒られており他のメンバーがなんとか宥めている。
『すまん、すまん。どれらいのが居たもんで思わず見に行っちまった』
『どえらいの?』
歴戦の探索者であるジョンの目からしてもこのダンジョンのモンスターとは比べ物にならない魔力に思わず偵察に行ってしまった。久しぶりに身震いさせられてしまった。
アンデットは今まで何度も倒してきたがあのクラスのスケルトンが人に使役されているのを見て流石に目を疑ってしまった。アンデットだけでなく似た、レベルのモンスターがパーティーを組んでいるのだからワイルドハントでも発生したのかと疑ってしまった。
『あんな虫も殺せなさそうな優男があんな化物どもを使役してるなんてな……』
『何か言った?』
『なんでもねー!』
ジョン・ワイルズ。アメリカでその名を轟かせる世界でも数人しかいない成龍を完全討伐した龍殺し(ドラゴンスレイヤー)。
彼と命が再び、まみえるのはそう遠くない未来の話である。




