第四十二話
「えっと……この道だったかな?」
命は出雲市内に来ており今いるのは路地裏であり金倉が教えてくれたおすすめの工房に向かっている所でおすすめされて工房の名前は聞いたことがなかったが金倉がおすすめしてくれるという事は相当なものだろうと納得して深い路地を歩いている。
「……此処かな?」
少し寂れているが立派な店構えであり呼び鈴と言ったものはなく昔ながらの工房で鍛冶の音が響いており如何にもな雰囲気をしている。ノックすると鍛冶の音が消えて足音が聞こえてこちらに近づいている様だ。
「どちらさんで」
現れたのは職人らしからぬ筋骨隆々な肉体に眼帯を付けた強面の男で手には大きな槌を持っている。どう見ても職人とは思えない風貌であるが紹介してくれた金倉を信じる。
「金倉莉音からの紹介で……」
「金倉?あぁ、遠藤の弟子か。入んな」
中に通されて内装を見てみると店構えと違って最新の設備が取り揃えてあり目の前の男でなく多くの職人が槌を振るっている姿が見える。若い人も作業しており扱っている素材の魔力から結構な腕前であるのが分かる。一番若手な者でそうなのだから見るからに親方と言った男はどんなものなのか気になる。
「それで?何をして欲しいんだい」
「装備の整備を」
「何だ、そんな事か。二宮!」
受付に案内されて用件を伝えると親方が声を上げて奥から作業着姿の同い年くらいの青年が現れる。癖っ毛のある黒髪を無造作に伸ばしており如何にも野暮ったいと言う印象を受けるが彼から感じる魔力は大したもので普通に魔法職でも通用する位ある。
「整備の仕事だ。お前でも出来るだろ」
「はいー。お任せをー」
のんびりとした口調で大丈夫かと思ったが親方が信頼して任せているのだから最低限の仕事は出来るのだろう。二宮に後を任せて親方は後ろに下がって、命は二宮に持ってきてた装備を渡す。
「これは、また。結構な装備ですねー」
学生である命が持つには過ぎたものと思えるくらいの装備で悪知恵の働くものならば奪おうと思う代物でありここに来るまでも結構な視線を集めた。ある程度の相手ならば制圧する自信があるが戦士職が相手となると流石に難しく最近はそういった手合いを処罰する法がしっかりしているとはいえ気を付けなければならない。
「きちんと手入れされてるみたいですから今日中にお返しできますよー」
「それは有難いです」
「では、出来上がったたご連絡しますから連絡先をー」
連絡先を教えて命は出雲市内を散策することにする。路地から出ると夏休みということもありかなりの人でダンジョン街ということもあり防具を着た探索者が多く歩いておりこれから出雲ダンジョンに向かうのだろう。ベンチに座って人間観察をしているだけで暇を潰せそうであり日本人だけでなく海外の探索者も居る。
「あ、あの人見たことある」
群衆の中で一際、目立っている者が居り、その背に身の丈ほどの大剣を抱えており燃えるような真っ赤な髪は群衆の中に埋もれない。確か、炎剣だとか呼ばれている有名な探索者で巷で話題となっている探索者配信者であり今もカメラを回している様で周りを見るとそういった手合いが多くいる。
「配信者か。最近、多いよな」
最近の若者に人気らしく中にはカリスマと言えるほど人気を博している者もいるようでかなり稼げるらしい。常に危険と隣り合わせなダンジョン探索でカメラを回しているなんて大したものであるが中には配信中に亡くなるケースも少なくなく危険であるのは知れ渡っているが成功してしまえば並みの探索では得られない金を手に入れることから若者を中心に流行っているらしい。
「宍戸がやりたいとか言ってたけどうちの学校、そういうには厳しいからな」
SNSに関して厳しく指導されておりダンジョン探索配信など許されておらず破った者には厳しい罰則が生じる。命は幾ら稼げるとはいえ配信者をやる程、自己顕示欲があるわけではなく今の学校に通ってなかったとしても配信者はやっていないだろう。宍戸は面白そうだし稼げるからと配信者をやってそうではあるが。
整備が終わったと連絡が来て、工房に戻ると新品同然に整備された装備が並んでおり鑑定で見てみると減っていた耐久度は元に戻っておりその仕事ぶりは金倉と遜色ないものでこんな場末な工房に居るような人材ではないと思うがそれを口には出さない。
「いやー。良いものを触らせてもらいましたー。新人なもんで大層なものは触らせてもらえなかったもので……」
「この腕で?」
「はいー。入ったばかりの若輩者ですー」
大手の工房を任されても可笑しくないと思うがそんな逸材が新人として扱われているとはこの工房も底が知れず、新人ではない者の腕はどれくらいなのだろうかと思いながら夏休み期間の設備はこの工房で行うことにしようと思いながら装備を受け取る。
「自分は二宮長信といいますー。柏崎さんの担当をさせてもらいますので、これからよろしくお願いしますー」
「あぁ、よろしく」
握手してニコリと笑う二宮の名前を覚えておく。金倉が紹介してくれただけいい仕事をする職人がいる様で出来栄えも文句なしでこのままダンジョンに潜ることにする。
相変わらず社に人が殺到していく中、ポータルに触れて前回進んだ場所まで転移する。出てくるモンスターの傾向から前回の様な魔法耐性を持つようなモンスターは現れないのでアインを護衛役としてクラスチェンジが行えていない面子を召喚しパーティーを組む。
「ナーガの中でも精鋭と言えるホワイトナーガだからな……タフな戦いになりそうだ」
六階層に現れるのは一角獣ギルドが保有するダンジョンで戦ったこともあるハイナーガよりも上位と言えるホワイトナーガで全ての個体が武装、連携し強力な魔法を操るという厄介なモンスターだ。
ホワイトナーガが厄介なのはその特性上、群れで行動するという事で前回のハイオーガの様に単独でいるという事は先ずないと考えてよく複数体で連携して襲い掛かって来るだろう。
「こっちも連携をシビアにしていかないと……」
召喚して間もないのもいるのでスキルの補助を受け流れであるが自分がきちんと導かなくてはならない。ハイオーガの時よりも楽になるかと思ったがスペックを見るとそう変わらず、魔法耐性がないのだけが救いだ。
「来たな」
ホワイトナーガ
スキル
上級槍術、連携、氷魔法
鑑定のスキルで見てみると上位属性持ちがぞろぞろ居り、持っている武器も一級品ばかりで売ればかなり値の付きそうなものばかりであるがモンスターを倒した際に消えるので持ち帰ることは出来ない。
「シャー!」
リーダー格と思われる個体が指示を出して一斉に動き始めて統率の取れた動きでこちらに襲い掛かって来る。蛇の特徴的な地を這うような動きで間合いをうまく掴ませないようにしながらリーチの長い槍や弓矢での攻撃を加えてくる。
リーダー格に向かっていこうとしたロイドの動きは封じ込められて空中で飛行するノワールとシャインも魔法で迎撃されて攻めあぐねている。
「氷華」
ホワイトナーガの周囲に氷の花弁が咲き誇り、行く手を遮る。ユニークスキルである為、威力は申し分なく炎魔法で溶かそうとするものの思ったようにはいかず氷に足を取られているのもいる位であり周囲の温度が一気に下がり白い息が出る。
「ガルァ!」
凍り付いた地面を物ともせずロイドは疾走して氷に足を取られているホワイトナーガの首を嚙みちぎり一気呵成にホワイトナーガの集団に飛び掛かる。ノワールとシャインも負けてはおらずそれぞれ神聖魔法と暗黒魔法を振りまきながらアグレッシブにホワイトナーガを翻弄しておりバトラーの援護もまた、絶妙でロイドを狙うホワイトナーガの動きを牽制したりといぶし銀な働きをしている。
「アース・ランス+アース・ボンバー」
かなりの魔力を流して四方から土の槍が襲い掛かりホワイトナーガは迎撃するがそれが間に合わずに突き刺されている個体も居り、突き刺さった先から槍が爆発して周囲のホワイトナーガを巻き込んでダメージを与える。
随分と魔力を注ぎ込んだので爆発も派手であり味方を巻き込まないようにと範囲拡大は最小限に抑えたがそれでもホワイトナーガの戦列を乱すことは出来て、後衛に大きなダメージを与えること出来て援護が出来ないような状況となっている。
「フレイム・ストーム」
炎の渦巻きがホワイトナーガを包んで態勢を立て直す時間を与えない。バチバチとアインの長剣が迸り、雷撃が放たれて混乱しているホワイトナーガに降り注ぎ、ダメ押しの一撃を与える。ここが攻め時であり帝王獅子のベルトを装備しているアインは疾走のスキルで驚異的な速さで間合いを詰めて長剣を振るい、残光が残っていることから剣閃を纏った斬撃でバッタバタとホワイトナーガを薙ぎ倒していく。
「最近、俺の護衛ばっかだったけど……ここまでとは」
そう思えばクラスチェンジしてから本格的にアインを攻勢に出したことはボス戦位であり夜叉はあまりに強敵過ぎてアインの実力があんまり見えてこなかったのでホワイトナーガ相手に無双しているアインの姿を見るとタンクとしてだけでなく戦士としても超一級でそうでなければ夜叉とあれだけの攻防は出来なかっただろう。
≪レベルアップ!スキルレベルがアップしました。召喚モンスターのレベルがアップしました≫
柏崎命
レベル13→14
スキル
召喚魔法35→36,大地魔法21→22、炎魔法7→8、指揮10→11
バトラー
オートマトン
レベル8→9
ノワール
レッサーデーモン
レベル8→9
シャイン
ドミニオン
レベル8→9
ロイド
モーントレーヴェ
レベル6→7
意外と余裕をもって戦うことが出来たが群れを相手取るのは結構面倒であるがホワイトナーガは必ず群れているらしく面倒だと思いながらこれからも群れを相手に戦わなければならない。
「噂をすれば影と言うべきか……」
群れを成してホワイトナーガがこちらに向かってきており迎撃する。




