第四十一話
ハイオーガソルジャーを討伐してそう遠くない場所にボス部屋は存在しておりボス部屋の門番の様なモンスターだったのかもしれない。
「パーティーを変えてっと……」
アインはそのままにアヴァリス、ブラン、フォボス、バジレウスを召喚する。バジレウスの強力な高い魔法耐性があっても大きなダメージを与えられるものであり巨体から繰り出される攻撃はそれだけで脅威でありメンバーに入れても問題ない。
ボス部屋を開くと全身鎧を身に着けた大きなオーガの姿があり身の丈ほどの大太刀と頭から生えている二本の角がオーガではなく鬼の様である。
夜叉大将
スキル
上級刀術、重装、金剛力、憤怒
鑑定した結果、目の前のモンスターはオーガではなく鬼であり中でも上位種である夜叉の中でも更に上位のモンスターで気を入れ直す。オーガと鬼は同一視されているモンスターであるがその戦い方は真逆でどちらも高い筋力を持つのは同じなのだが力で押してくるオーガと違い、鬼は武器を用いた巧みな戦い方をして来る。
「こんなことならフラウも連れてくればよかったな」
鬼はオーガほど魔法耐性は高くなくどちらかというと物理耐性を持っており魔法耐性対策に組んでいたパーティーが無駄になったがそれなら別の戦いをするだけだ。
「アース・ランス+アース・ブラスト」
放たれた槍が砲弾の様に炸裂する。しかし、夜叉は大太刀で軌道を変えると言う離れ業を簡単にやってのけ迫り来るアインの斬撃も弾き、バジレウスの尾撃を受け流している。
まるで達人の様な動きでありその技量はとんでもないもので今まで出会ったことのないモンスターで今までモンスターは力任せの攻撃しかしてこなかったが目の前の夜叉は明らかに人間に近しい動きをしており高い知能を持っているのだろう。
「マッド・フィールド」
ならばと足場を沼地に変えて動きを阻害しようとしたが夜叉はすり足のような動きでアヴァリスやアインの猛攻を凌いでおり単純な攻撃では対処されるだけで戦い方を変えなければ。
「テンペスト・サイクロン!」
拘束用の竜巻ではなく攻撃性を持った台風であり凄まじい風圧が夜叉を襲い、あまりの風に踏ん張りも効かないようでそれでは自慢の技術も使い物にならずバジレウスのブレスが直撃する。
甲冑に身を包んでいたためダメージは軽減されたが所々、焼き焦げておりブレスの強力さが伺える。
「カタカタ」
痛みで制止する隙をアインは見逃さず漆黒に染まった刃が夜叉の片腕を甲冑ごと切り落とす。腕を失ったと言うのにその動きは失われず大太刀を存分に振るい向かってくるアインの首を切ろうとするがそれを阻んだのはフォボスの進化したブレスであり一瞬にして夜叉の体を凍り付かせて拘束する。
凍り付いた夜叉を砕かんとアヴァリスの拳が振るわれるが凍り付いたはずの夜叉は氷から抜け出してアヴァリスを弾き飛ばす。
「剣閃まで持っているのか……!」
大太刀に宿っているのは間違いなく魔力であり氷河の氷を破ったことからかなりの練度であるのは疑いなく恐らくアインのものよりも上で体が淡く光っておりスキルで強化されている様だ。
片腕を奪ったからと安心していたはやられるのはこちらの方であり警戒して挑まなければならない。
「キー!」
今まで沈黙を保っていたブランが駆けだして高速で飛来するブランに向かって斬撃を飛ばすがブランはそれを簡単に避けて瞳が怪しく光り複数のバットステータスが一斉に夜叉に降り注ぐ。混乱、麻痺、石化、即死と状態異常耐性を持たぬ夜叉は即死を除くバットステータスに掛かってしまい身動きが取れなくなる。
「カタカタ」
「ギャ!」
必ず殺すとアインとアヴァリスの渾身の攻撃が放たれるが攻撃の直前、バットステータスから抜け出して必殺の一撃を持ち前の技量で最小限の被害に抑えた。
大太刀に回していた魔力を瞬時に体に回して魔力を鎧の様に纏って威力を殺した。普通の魔法職よりも魔法の扱いに長けている命でもあんな一瞬で魔力を動かすことは出来ず、魔力の扱いに長けたモンスターだからできる芸当と言える。
「とんでもない技量だな」
戦士としての技量だけでなく他のモンスターよりも魔力の扱いに長けており片腕を失っていると言うのに全く、戦力が落ちる様子がない。
「アース・ウェーブ」
ならば対処が出来ない、質量で攻撃するまでであり。津波の様に土の波が襲い掛かり、流石の夜叉も自分の身の丈を超える攻撃を捌ききることは出来ず斬撃を飛ばして抵抗するが減った先から補充していき足元の砂が腕の様な形になり夜叉の体を拘束する。
夜叉の高い筋力で抵抗されているためかなりの魔力を消耗するが動きを止めるのが目的であり魔力を流し続ける。
「グォォ!!」
魔力が収束された灼熱がブレスとして放出される。普通のブレスとは違い、強力な炎属性がユニークスキルにまで昇華されたものでその威力は絶大で夜叉を拘束ごと焼き尽くす勢いだ。
≪レベルアップ!スキルレベルがアップしました。召喚モンスターのレベルがアップしました≫
柏崎命
レベル12→13
スキル
大地魔法20→21、人魔一体8→9、統率9→10、鼓舞9→10、水魔法→氷魔法New!
アイン
デス・ジェネラル
レベル3→4
ブラン
フォレストオウル
レベル1→2
アヴァリス
オーガロード
レベル1→2
フォボス
マナガルム
レベル1→2
バジレウス
ファイヤードレイク
レベル3→5
「ストップ。魔石まで燃える」
「グォ?」
周囲が燃え上がっており水魔法で炎を打ち消して戦利品を拾い上げる。
『夜叉大将の兜』ランクA
攻撃力60 防御力60 耐久度50
スキル
心眼、剣閃、明鏡止水
何やら凄そうなスキルが並んでおりアインに手渡すと早速、装備してアインは西洋風の鎧を纏っているが意外と似合っている。
今まで一番苦戦したと言っていい相手で人間を相手しているような感覚でもしも、獅子王を相手にしたらあんな感じなのかと思うが獅子王は更に手強いような気がする。
「五階層でこれか……皆が神の加護を求めるのも納得だな」
とてつもない疲労感を感じて今日の所は帰ることにしよう。道中で得た、魔石を換金し金にして折角だから両親にお土産でも買って帰ろう。本当は稼いだ金をそのまま渡したのだが子供の金を受け取れないと断るのでこうして形を変えないと受け取ってくれない。
丁度、バスが来たので乗り込む。命の実家は街から離れており長い間、揺られることになりバジレウスを召喚できれば空を飛んでそう掛からず帰れるのだが魔法はダンジョンの中や許可された場所でしか使えないと定められそう簡単にはいかない。
「タクシーでも使えばいいんだけど……」
気軽にタクシーを使っても問題ないほど稼いでいるのだが、生来の小市民性がそれをさせずバスがあるのだからとタクシーを使わずにいる。家に近づいていくにつれて同乗している人の数も減って最初は立っていたが今では座れている。
鍛えているので立ったままでも問題なかったがダンジョンで激戦を終えたばかりなのでなるだけ体を休めたかった。
「五階層であれだから六階層からは一体何が出ることやら……」
一応、調べているので何が出てくるかは知っているがボスが夜叉だったという情報はなく出雲ダンジョンをクリアした事例は少なくボスの情報はあまり出回っていない。出現するモンスターの傾向からボスを予想できるが今回の様にガラッと変わる可能性もあるので注意が必要だ。
「ただいまー」
思ったよりも早く帰ってこれて両親は仕事で家を留守にしている様だ。今に土産を置いて部屋に入り、装備を外してベットに横たわる。
今回のダンジョン探索は何個か改善点があった。魔法耐性持ちへの対抗手段もそうであるがパーティーも今考えたら最適とは言えなかった。
「でも、レベル上げしたかったしな……」
クラスチェンジが出来ていない面子のレベルを上げたかったと言うのもあるが今思えばそれに拘らず物理攻撃を主体としたものでパーティーを組んでいたらもっと楽だったろう。六階層は五階層よりも難易度が高いだろうしレベル上げに拘らず攻略を優先したいがレベル上げをしたという思いもある。
「どうするかなー……」
レベル上げに最適なダンジョンでもあればいいが夏ということもありどこのダンジョンも混み合っているだろう。出不精という訳ではないが流石に人で混み合っているダンジョンに行きたいとは思わない。
その点、出雲ダンジョンは大きいだけあって人が多くいても混みあわないだけの規模をしておりそこまで手狭という感じはしなかった。
「命ー、帰ってるのー」
「帰ってるよー。テーブルにお土産があるから自由に食べてー」
「あら、悪いわね」
廊下に顔を出してそう伝える。買い物に行っていたのか買い物袋を抱えており冷蔵庫に荷物を詰めている。手伝ってやりたかったがその前に装備の手入れを終わらせたかった。
激戦で色々な部分がダメージを受けており金倉から簡単な応急処置の仕方を教わっているのでスキルがなくても補修作業は出来る。最初はかなり苦労した作業であるが今では慣れてきて金倉からも褒められるレベルとなっており装備は魔石から作られているから補修には魔力を消費し高い魔力操作のスキルを持つ命にはうってつけの作業だ。
「いつもながらこれだけの装備を手入れするってなると流石に緊張するな……」
命が装備しているのは高ランクのAランク装備であり売れは数千万、下手したら億に届くかもしれない代物であり手入れする手も震える。小市民気分が未だ、抜けない命にとっては未だに慣れない作業である。しかし、手入れには限界があり定期的に整備に出さなければならないが金倉に見せることは出来ない。
鍛冶師に見せなければならないので市内に行って整備を専門としているものに見せに行くのが手っ取り早いがと考えているとスマホに連絡が入る。
「金倉?」
スマホには夏休み中はこのギルドに見てもらうと言うよと幾つかの鍛冶ギルドの名前が書かれており有難いことだ。
「出雲市内のギルドはっと」
金倉が教えてくれたギルドが幾つか存在しており早速、明日にでも見てもらうことにしよう。




