第三十二話
日差しが差し込み目覚める。激戦を二回も繰り返して疲労が溜まっていたが一晩眠るとすっきりとしておりそれが若さなのか探索者だからなのかは分からないが気持ちのいい目覚めだ。取り敢えず顔を洗って意識をはっきりとさせてから身支度を整える。
「今日はどうしようかな」
昨日とは違ったルートに行ってみたと言う思いがありノワールとシャインを送還してフローガを召喚してパーティーも移動に最適なパーティーへと変えて出発する。森を抜けて草原に辿り着き、草原を抜けていくとまた森に入り拠点の近く程は入り組んでおらず背の高い木が立ち並んでいる。
ノーム
重槌、土属性
ウンディーネ
呪歌、水属性
「エレメントか。それだけ魔力が濃い場所ってことか?」
属性の濃い場所にしか生息しないエレメントがこんなにいるという事はそれだけこの無人島の魔力が濃いと言う事であり草木に至るまで魔力が込められているのだからエレメントがいても可笑しくない。フローガに合図を送るとそのまま突撃してバトラーが追従してモンスターを迎え撃つ。
バジレウスのブレスがノーム達に炸裂して大きなダメージを与えてフローガが思いっきり突撃する。接近することでモンスターが向かってくるのだが側にいるバトラーとアインがそれを捌いていき命も魔法で援護する。
「かった。流石土の精霊」
ノームはフローガの突撃も命の魔法も効いていないようで自慢の重槌で攻撃してきてその小さい体とは思えない威力で地面に穴が開いている。ウンディーネも水魔法でこちらを牽制してきながら味方を回復させたりと面倒な戦い方をしており厄介と思ったフォボスがウンディーネに襲い掛かり雷のブレスを吐きその喉笛を掻き切る。
《召喚モンスターのレベルがアップしました》
フローガ
ナイトホース
レベル2→5
バトラー
ビスクドール
レベル3→6
意外と手こずってしまったがフローガ達のレベル上げには最適な相手であり森の中を進んでいく。
「落ち着くな」
コンクリートジャングルの都会ではあまり得られない大自然でダンジョンでも自然は見れるがこれまでの大自然はそうあるものではなくモンスターがいなければピクニックでもしたいところだが虎視眈々とこちらを狙ってくるモンスターの視線を感じながら無理そうだなと諦める。
エレメントの魔石は魔法の媒介として重宝し高値で取引されているものでありこの無人島のエレメントは世田谷ダンジョンのものよりも品質が良く高値で売れそうだ。
「は?何だこれ?」
少し開けた場所に出るとそこはまるで災害にでもあったかのような光景であり地面は抉れ木々は倒れており一体何があったのかと思う光景でありとてつもない魔力の残滓が残されており誰かが此処で戦っていたのは分かるがこんな惨状を作り出すモンスターと一体誰が戦ったと言うのか。
「酷いな」
かなりの激戦だったようで見るだけで相対しただろうモンスターの強さが伺える。そんなのを相手できそうなのは獅子王くらいだと思いながら地面を見ると色濃い斬撃痕が残されておりやはり獅子王なのだと半ば確信する。
命が戦ったスペクターにも負けないレベルのモンスターだろうと思いながら陣内が危険だと言っていた理由が今になって分かった。スペクタークラスのモンスターが他にもいるという事でありどんな魔境なんだと思いながらこの無人島に後六日もいなければならないのだと思い至り気合を入れ直す。
シルフ
スキル
短槍、風属性
フロスト
スキル
爪撃、氷属性
「大集合だな」
魔力に惹かれて多くのエレメントが集まってきているがその中心に立っているノームの様な外見の小さなモンスターを見て全身に怖気が走る。その外見には似つかわしくない莫大な魔力を内包しており召喚モンスター達も警戒している様子で直感する。獅子王と戦いこの惨状を作り出したモンスターなのだと。
スプリガン
嵐属性、巨大化、魔力暴走
「何で、こんな化物どもと戦わないといけないんだよ!」
昨日のインペリアルタイガーやスペクターといいこの無人島に来てから面倒事に会ってばかりであり今回は単独ではなく複数匹のエレメントを連れてであり戦闘態勢に入ると濃い雨雲が発生して強烈な雨と雷が振り初めて指向性を持ってこちらに雷が降って来る。天候を操るレベルのモンスターとはエレメントの中でも最上位に近いモンスターでありスペクターは別のベクトルで出鱈目なモンスターだ。
「フローガ!」
「ヒーン!」
間断なく降り注いでくる雷を避けていきエレメント達が放ってくる魔法をアインが防御してくれる。とてつもない魔法の連続でフローガに騎乗していなければ蜂の巣にされていた所であり逃げてばかりでは事態は好転せずバトラーを送還してアヴァリスを召喚するとアヴァリスは閃光で即座にスプリガンに向かっていきその拳を振るおうとするとスプリガンの姿が巨大化しアヴァリスが子供に思えるほどの巨躯でその攻撃をものともしない。
「化物が!」
思わず悪態をついてしまいたくなる状況で必死にスプリガンを抑えてくれているアヴァリスの為に魔法を放ってくるエレメント達を黙らせる。
「アース・ランス+アース・バリスタ!」
かなりの魔力を注入し巨大化した槍を複数作り上げてそれらを高速で発射する。巨大な質量を持った槍はエレメント達に突き刺さり行動不能になるいものも現れるがそれでも攻め手を緩めず瞑想で魔力を強化したフラウの渾身の雷魔法にバジレウスの強力なブレスが追撃しエレメント達を一掃する。
厄介なエレメント達を倒すことは出来たがそれ以上に厄介なのが残っておりパーティーでも随一の筋力を誇るアヴァリスの攻撃がまるで通用していない。幽鬼のイヤリングを装備しており防御力を貫通するアヴァリスの攻撃は勿論効いているはずだがそれを意に介していない無尽蔵の体力がスプリガンにはあり嵐といいアヴァリスを超える筋力といい出鱈目にもほどがある。
「アイン!」
「カタカタ」
体力自慢というのならばそれを削り取るまで。アヴァリスよりも小さいアインの攻撃を屁でも思っていないのか抵抗することなく受けるがそれが間違いだった。全身に命を蝕む劇毒が巡り無尽蔵に思えた体力を急速に削っていく。空に展開されていた嵐は消耗するスプリガンと呼応するように収まっていく。
「ブォォォ!」
しかし、それでもスプリガンは倒れることなく迫り来るアヴァリスを撃退している。獅子王はこんなのを一体、どうやって倒したのか。そんな疑問を抱きながらそれでも活路を見出そうとスプリガンを観察し続ける。
劇毒に侵されながらも倒れることはなくその理由は放出していた魔力を内に抑え込んで劇毒の進行を遅らせているからだと察しそんな芸当が出来るものなのかと思いそんな事をしていたら魔法も行使できないのは当然であり魔力を乱してやれば劇毒の進行が早まり倒すことが出来るだろうがそんな術はない。
「劇毒で体力が削れてるのは確かなんだから後は真っ向勝負しかないか」
初めよりも弱っているのは確かでありあの巨体を維持するもの魔力が必要でありそう長くは持たないだろう。アインも閃光で戦闘に参加し雷を纏った剣閃を放つが今度は警戒されているようで攻撃を受けようとせずとてつもない突風がアインを襲い近づけまいとしてくる。
「フレイム・バーン!」
単純な炎をぶつける魔法であり純粋な火力で押しスプリガンの注意を引く。対して効いて様子はないが注意を引くことには成功してスプリガンは嵐を展開してきて物凄い突風と雷が襲い掛かりフローガを疾走させて避けていく。
目論見通りであり劇毒を抑えるためには魔力が必要で命の様な小物に攻撃されれば苛立って魔法を使うものだと思っており嵐を展開して目に見えて消耗しているようで命にばかり構ってはいられずアインの攻撃を避けなければ劇毒が更に進行するし体力を消耗した状態ではアヴァリスの攻撃も脅威と言える。
「フリィー!」
膠着状態を打開させたのはフラウのエンチャントでありアインとアヴァリスに雷属性のエンチャントが施されて敏捷のステータスが上昇して明らかに動きが変わる。スプリガンもアイン達の攻撃を凌ぐのが厳しくなり自分を中心に竜巻を発生させて距離を取らせる。しかし、大量の魔力を消耗して劇毒は進行し黒い血を吐き巨大化が維持できない位、消耗している。
「仕留めるぞ!」
「カタカタ」
「ギャ!」
アヴァリスがアインの肩に触るとの体が光に包まれて姿が消える。閃光のスキルは自身を光に変えて高速で移動すると言うものであり竜巻を通過して直接、スプリガンの目の前に躍り出てそれぞれスキルで強化された一撃を混乱しているスプリガンに叩き込む。
嵐や竜巻が消えてスプリガンが地面に力なく倒れており勝利したのだと分かる。
《レベルアップ!スキルレベルがアップしました。召喚モンスターのレベルがアップしました》
柏崎命
レベル6→7
スキル
召喚魔法31→32、大地魔法16→17、炎魔法6→7、統率6→7、鼓舞1→3、魔法強化23→24、魔力回復22→23、魔法操作26→27
アイン
デス・ナイト
レベル13→14
フラウ
ハイピクシー
レベル11→13
アヴァリス
レッドオーガ
レベル12→13
フローガ
ナイトホース
レベル5→10
バジレウス
サラマンダー
レベル10→15
灼熱New!
《クラスチェンジ条件が満たされました。クラスチェンジ先を選択してください》
「やっと倒せた……」
スペクター戦とは別ベクトルで苦労させられた戦いで今回もアインの劇毒に助けられて劇毒が効かなければ無尽蔵な体力を削りきらなければならず今以上に苦戦していたことだろう。嵐魔法も巨大化も健在で下手したら負けていたかもしれなかった。
「お疲れ様」
「ヒーン」
フローガには随分と無理をさせてしまい労わるように撫でてやる。フローガの機動力がなければ迫り来る雷の対処で精一杯で攻撃に転じるのも難しかっただろう。フローガから降りてドロップ品を確認する。レアドロップはモンスターのランクが高いほどドロップ率が上がるという統計が取れておりスペクターと同格のスプリガンならば当然、レアドロップも存在している。
『嵐精霊の指輪』ランクA
攻撃力60 防御力60 耐久度50
スキル
嵐魔法、雷鳴、魔力暴走
「わーお、流石はスプリガンのレアドロップ。出鱈目だな」
嵐魔法は雷魔法と風魔法が合わさった上位属性であり雷鳴は言うに及ばず、異色なのは魔力暴走で説明を見ると魔力の制御を意図的に崩すことで威力を倍増するというもので珍しいスキルであることは言うまでもなく大きな収穫と言える。




