第二十七話
『火竜の鱗』ランクB
『火竜の宝玉』ランクB
『火竜の逆鱗』ランクB+
ファイヤードレイクの巣は宝の山であり魔石が山のように積まれており召喚モンスターに協力してもらってバックパックに詰めるが全て収まりそうになく鑑定を使いながら出来るだけ高品質のものを選んで運び出す。パンパンのバックパックを背負いながらポータルに触りダンジョンを脱出する。
「ふぅ、涼しい……」
暑苦しかった火山地帯から解放されて感じたのは涼しさであり対火のポーションやエンチャントの効果も切れているので余計にそう感じる。重々しいバックパックの魔石を必要分だけ残して換金して軽くする。もう、日は沈んでおり真っ暗であり適当にタクシーを捕まえて学校へと戻る。
戻ったことを事務に伝えたりと色々と細かい処理を終わらせてから寮へと帰り部屋に入ると直ぐに眠ってしまう。
「マジか」
何時もの日課である新聞部の朝刊を見ていると驚くべき記事が書かれている。獅子王琴乃、千代田ダンジョン踏破という大きな見出しで最近、学校で見なかったのは千代田ダンジョンに潜っていたからで巨大な墳墓型の千代田ダンジョンを踏破するのは簡単ではなく高位のアンデットはアインの様に物理耐性を持つものも少なくなくソロの獅子王では苦戦すると思ったがこんな短期間で踏破してしまうとは思わなかった。
獅子王はまた、探索者として命の先を進んでおり体育祭からどれだけ強くなったのか興味はあるが上ばかりを見上げていてもきりがないの。命自身も着実に成長しており次に潜る世田谷ダンジョンの五階層の情報を調べる。
「火山地帯の次は坑道……一周する感じかな?」
環境自体は過酷なものではないが出現するモンスターのレベルは二階層とは桁違いでBランクのモンスターの中でも上位に位置するミノタウロスでトロールを超える筋力に巨大な武器を扱う厄介な相手でかなりの体力自慢でタフな戦いになりそうだ。
過酷な環境でないのなら準備もそんなに必要ではなくダンジョン探索で得た魔石を使ってバトラーの防具やフローガの馬具を新しく作ってもらわなければならず金倉の工房に顔を出さなくてはならない。
「そういえばなんか新しく召喚できるのかな?」
召喚魔法がレベルアップしていたので新しいモンスターを召喚できるだろうかとステータス画面を表示する。
デビルNew!
ステータス
筋力D
体力D
敏捷D
魔力C
スキル
浮遊、闇魔法、選択可能
エンジェルNew!
ステータス
筋力C
体力D
敏捷D
魔力C
スキル
浮遊、光魔法、選択可能
エレメントNew!
ステータス
筋力D
体力D
敏捷D
魔力C
スキル
選択可能、物理攻撃無効、魔法強化
デビルとエンジェルはそれぞれ扱う武器が選べて、エレメントは主となる属性を選べるようで選んだ属性によって何になるかが決まるらしい。少し、物理に偏っていた自覚はあるので新たなモンスターは魔法タイプがいいなと考えていた所でエレメントが魅力的であるがエンジェルとデビルにも興味をそそられる。
「召喚!」
ノワールNew!
デビル
ステータス
筋力D
体力D
敏捷D
魔力C
スキル
浮遊、闇魔法、杖術
シャインNew!
エンジェル
ステータス
筋力C
体力D
敏捷D
魔力C
スキル
浮遊、光魔法、細剣術
バジレウスNew!
イフリート
ステータス
筋力D
体力D
敏捷D
魔力C
スキル
火属性、物理攻撃無効、魔法強化
ノワールはニヒルな笑顔を見せる少年の様な容姿で真っ黒なぴっちりとした衣装を着ておりシャインは穏やかそうな少女でゆったりとした神官服を着ている。バジレウスは不定形な体に中心に炎が灯っており触れるとほのかに温かい。一気に三匹召喚した事に後悔はなく金倉に頑張ってもらおうと後を任せるしかない。
「ドラゴンの素材が手に入ったって本当!」
工房にやってきて迎えてくれた金倉はとても興奮しているようで命が持ってきてくれた魔石や素材を今か今かと待ち望んていたようでテーブルに広げられた素材の山に大興奮している。最下級の火竜とは言え正真正銘のドラゴンの素材であり限られたものしか扱えないドラゴンウェポンを作る素材になるとのことで鍛冶職人の金倉のテンションは天井知らず。
「新規の子もいるからその子たちの装備もお願いしたいんだ」
「任せて!最高のものを作るよ!」
金倉と共にノワールや成長したフローガの採寸をしてサイズを書き込んでふむふむと考え込んでいる様子。かなりの重労働であったが金倉は息も切らしておらずアヴァリスの重鎧を作るような職人なのでこの程度の作業は慣れっこなのだろう。
「量が量だから完成にちょっと時間が掛かるねー。出来るだけ早めに仕上げるつもりでいるけど」
「時間が掛かっても問題ないよ。金倉が満足できるようにしてくれ」
この量の依頼となると金倉一人では時間が掛かるのはしょうがないことであり今更、他の職人にお願いしようとも思わない。暫く、ダンジョン探索が続いて授業に出る機会も少なくなっていた所でありこの機会にクラスに顔を出すことにしよう。命は金倉に見送られながら久しぶりに登校する。
「おはよう。柏崎くん」
「久しぶりだな。獅子王」
生憎と宍戸は不在の様でわざわざ、命に話しかけてくる奇特な者はいないと思っていたのだが本当に久しぶりに獅子王と顔を合わせた。命が登校する時は決まって授業に参加していないことが多かったのだが恐らく千代田ダンジョンを踏破して時間が空いたからであろう。
「千代田ダンジョン踏破おめでとう」
「うん、ありがとう」
表情を変えずに答える姿に相変わらずクールだなと思い、獅子王は窓の外を見つめている。こうして間近で見て獅子王がとてつもなく成長しているのが嫌というほど伝わってくる。鋭利な刃物のような鋭い雰囲気で周りを寄せ付けず意図していないのだろうが魔力が滲み出ている。
「強くなったね」
「獅子王程じゃないよ」
称賛は素直に有難いが獅子王の成長ぶりに比べれば微々たるものであり命の最高戦力であるアインであっても今の獅子王には敵わないだろうと察せられるほど実力が離れているように感じる。
「柏崎くん。おはよう!」
「おはよう。樋口」
獅子王の他に命に話しかけてくれる変わった人が此処にもいて何時もの様に笑顔を浮かべながら挨拶してきてくれる。その時、クラスから視線が集まっており特に樋口のファンクラブらしきものの視線が痛いほど突き刺さっておりひそひそと話し声が聞こえる。
「何で、聖女様があんな地味な奴と……」
「あれでも体育祭で活躍してたんだぞ?」
「羨ましい……」
クラスメイトの強い視線が命に集中しておりレベルアップしているため身体能力だけでなく聴力も底上げされているのでひそひそと話している内容も聞こえてしまっているのだが反応するのも面倒なので聞こえないふりをしておく。笑顔で命に話しかけている樋口に無言だが話を聞いている様子の獅子王とクラスの中心人物が命に話しかけていることが面白くないのが一人いた。
「女に囲まれてハーレム気分か?いいご身分だな」
クラスでの最大派閥とも言える小林でありヤンキーの様にこちらに近づいてきてガンを付けてくる。小林は命の事が気に食わないようで何かにつけて絡んでくる。何か、気に障ることでもしただろうかと考えるがこれほど絡まれるほどのことをしたとは思えない。
「小林も初心ダンジョンを踏破したって聞いた。おめでとう」
「はっ!この俺様があんな小さいダンジョンにいつまでも足止めされる訳ないからな!」
胸を張るが実際、凄いことであり初心ダンジョンを踏破するという事はこの学校に通う者にとって大きなステータスであり、卒業してからも高く評価されるとのことで皆が煙たがっている小林の経済力も命は大きな力だと認めており上昇志向の高い小林を嫌いになれない。
「うちのパーティーは選び抜かれた逸材で構成されてんだ。お前みたいに気味の悪いモンスターなんかよりもよっぽど強いぞ!」
「それは凄い」
アイン達を馬鹿にされて少し、イラっと来たが小林と相手をする時は気持ちよく話を聞いてやらないといけないのでパチパチと拍手してやって気分を良くさせる。すると小林は気持ち良くなって絡みに来たことも忘れて元の場所へと帰っていく。扱いやすくて何よりだ。
「うーす。授業の前にちょっと話すんぞー」
何時もの様にヨレヨレの白衣を身に着けた陣内が入ってきて全員が席に座る。
「えー、夏休みも近づいて来たところだがうちの学校では夏季演習をやるからなー」
ディスプレイに表示されたのは無人島らしきものでついにこの説明が来たかと前々から知っていたが詳しい説明は初めて聞く。体育祭、ギルド見学に並んで重要な行事と言えるものでモンスターが生息する無人島で七日間生き残ると言うサバイバル訓練でありその過酷さは凄まじく脱落者が続出するという大変危険なものらしい。
「参加するかどうかの判断はお前らに任せる。しかし、参加したら簡単に終わるとは思わないことだ」
普段の適当な態度とは違う真面目なもので先達として警告をしているのだと分かる。それだけ危険という事だがこの夏季演習を乗り越えたものは探索者として一皮剥けるという話でありこれからの探索者人生に得難い経験になることは間違いない。
「まー、死にはしねーから安心しろ」
その言葉に多くのクラスメイトが毒気を抜かれる。難しく考える必要はないとのことであり当然、命は参加を表明し夏季演習はポータルでランダムに転送される為、パーティーを組んでいない命にとってまさに独壇場とも言える環境であり召喚モンスターのレベル上げを急がなくてはならない。
久しぶりに授業をしっかり受けてやはり探索者にとって必要なことを教えてくれて素直に勉強になり毎日通いたいのだがダンジョでレベルアップする方が命にとっては重要で少ない機会だがしっかりと学ぼうと気合を入れて授業に臨む。
「柏崎くん、一緒にお昼どう?」
「すまない。ちょっと授業の内容を纏めたいからまた今度で」
「なら仕方ないね!」
教室に残っている命に樋口が声を掛けてくれたのだが久しぶりの授業でかなり進行が遅れてしまっていることに気付いて内容を纏めている所で昼食は簡単に済ませる予定で流石に食堂に行っている暇はなく申し訳なく思いながら断る。聖女様の誘いを断ったと驚きの声を上げているクラスメイトの声を無視しながら朝にバトラーに作らせておいたサンドイッチを片手にノートに内容を纏める。
宍戸なんかは勉強が嫌だと言っているが学べば学ぶほど自分の力になってくると言うもので勉強は嫌いではなくこういった黙々とした作業は得意な方で探索者になる前は随分とダンジョンについて学んだものだ。
体を動かすよりもこういった作業の方が好きでいずれ探索者になるために勉強を欠かしたことはなく実家にはいずれ探索者になったらやりたいことを記したノートが山の様にあり何となく捨てれずにいて保管している。




