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現代ダンジョン サモナーが行く  作者: 金林檎


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第二十一話

 ギルド見学は一週間ほど続き、それぞれ招待されたギルド本部で寝泊まりすることになり命はあの地獄の特訓が終わり案内されたのは質素な部屋で寮の部屋とは比べ物にならないものであったが命は寮の部屋が気に入っていないのでこういった質素な部屋の方が寛げる。


「柏崎くんもこの部屋だったのか」


「随分と疲れてる様子だな。新道寺」


 見るからに疲れた体を引きずって部屋に入ってきたのは新道寺で彼も随分とこっぴどく扱かれたようで直ぐにベットに横たわっている。余裕満々といった様子だった新道寺がこれほど疲労困憊なのだから彼が受けた特訓もかなり過酷なものだったのだろう。


「なまじ色んな属性が使えるものだから全部同じ練度じゃないとって全部が横並びになるまで扱かれたよ……ふふ、流星は躱せないって」


 遠い目をしており流星の異名を持つ桐生は星魔法という特殊な魔法の使い手で流星と名付けられたのも星魔法の強力な魔法によるもので単純な火力でいえば魔法職の中でもトップクラスと言えるもので要塞と呼ばれる朝比奈の防御すらも突破する強力無比なものである。


 そんな兵器の様な魔法の応酬に新道寺の魔法は無力で吹き飛ばされるしかなかったと遠い目で語る。それから用意された夕食を食べて眠りについた。


 命達が眠っている時、会議室には愛染と命達を指導した三人が集まっておりディスプレイには訓練中の命達の姿が映し出されている。


「それでどうだった?彼らは」


「うちは凄いってもんじゃなかったわ。詠唱破棄も無言詠唱も直ぐに覚えるし、まぁ魔法の腕はへっぽこだったけど」


 頬杖を突きながら朝比奈が答える。あの厳しい試験も十分にこなした為、かなり根性があり明日からの訓練もし甲斐があるというものでふふふと不敵な笑みを浮かべている。


「樋口くんは素晴らしい逸材だ。彼女ほど神聖魔法に対して適性のあるものを私は知らない」


 高難易度だとされる蘇生魔法を行使することができそれだけでも今すぐ一角獣ギルドにスカウトするべき逸材であり、まるでスポンジのように伊織から技術を吸収する樋口の才能に長年神官職をやっている伊織も驚いている。


「若も随分成長したよー。お姉さん譲りの多重魔法もできるし私の流星にも数秒間だけど対抗してたし伸びしろは十分だね」


 魔法の中でも最難関と言われる多重魔法デュアルマジックは新道寺桜の得意技で複数の属性の魔法を同時に放つという単純な様でとんでもない難易度を誇り脳みそが2つ無いと出来ないと言われるほど演算力を必要とし複数の属性を掛け合わせた魔法はとてつもない威力を発揮し通常の魔法とは比べ物にならない威力を誇る。


「うちのが凄いって言ってるでしょ!」


「何を言う。モンスターも連れていないサモナーに何が出来るというのだ」


「言ったわね!」


 もう、我慢の限界だと伊織の胸倉を掴み上げ喧嘩が起こり何時もの事なので愛染も桐生も放っておいている。愛染は興味深い様子でディスプレイを眺めておりその瞳は値踏みするかのようであり一角獣ギルドの副ギルド長ほどの人物が彼らをどう評価するのだろうか。


「素晴らしい……!此度も予想通りだったな」


「【預言者】ですか」


「あぁ、我ら一角獣ギルドの躍進は彼女の預言のお陰だ」


 一角獣ギルドの秘中の秘と言える預言者の存在。それはギルドの中でも限られたものしか存在を知らないもので彼女はギルド長がどこからか連れてきて将来的に成長するであろう探索者の卵を預言によって示し一角獣ギルドは預言に従って探索者の卵を支援することで彼らと深い関わりを持ち大体の確率でギルドに引き入れることができ一角獣ギルドの躍進に繋がっている。


 しかし、そんな彼女でも未来が不透明だと言われている者が存在している。


「柏崎命……彼女でも見通せなかった人間か。彼の活躍が楽しみだ」


 未来を見ることが出来るという預言者ですら未来が見えないという事は彼が活躍し大成するかは謎に満ちているが訓練での彼の動きを見て愛染は確信している。彼はこの世界で大きな翼をはためかすことになると。


 そして夜が明けて命と新道寺はギルドの食堂で朝食を摂っており部屋は質素ものだったが食事は学校のものと遜色ないレベルのクオリティで食堂には樋口の姿もありこちらに手を振っている。


「おはよう!二人とも!」


 満面の笑みで何時もの事で慣れている命は兎も角、耐性のない新道寺は顔を赤くしており新鮮な反応だ。樋口と一緒に朝食を摂ることになり命は無難に日替わりのから揚げ定食で新道寺も同じもので樋口は日替わり定食の大盛りで女子が食べるには多そうだが嬉しそうに食べている。


「昨日の訓練はきつくてさー」


「そうかな?そんなにだったけど」


「まぁ、樋口は神官職だから俺たちみたいにはいかないか」


「それ差別だろ!」


 騒ぐ新道寺だが命は納得していた。神官職である樋口に必要なのはどんな状況であってもパーティーメンバーを癒すことであり既に普通の水準を超えてしまっている樋口に求められるのは精々が体力作り位なもので過酷な戦闘を強いられる命達とはメニューが違っていて当然のことだ。


 朝食を終えて命達は昨日の様に訓練場へと集められてまた、昨日の様な地獄の訓練が行われる。

 

《スキルレベルがアップしました》

 

 柏崎命

 スキル

 大地魔法10→13、魔法強化18→20、魔力回復15→18、魔力操作20→22、付与術10→12


「し、死ぬ……!」


「大袈裟ねー。人間そう簡単に死なないわよ」


 一瞬、三途の川が見えたような気がした。それくらい訓練はハードで今回は迫り来る岩壁を打ち壊すというものでこれが信じられないほど固く、破壊力のある火魔法を使おうものなら横っ腹にハンマーで叩きつけられ大地魔法しか使ってはいけないという事で魔力を総動員してやっと1枚壊せたがそれが連続して来るので何度も壁に叩きつけられながら訓練を続けた。


 防御力を上昇させるアース・エンチャントがなかったらと考えるとぞっとする。


「このくらい強くなれたらダンジョンでも生き残れそうね」


「ダンジョン?」


「聞いてなかったのかしら?訓練が終わったらうちのギルドが所有するダンジョンに潜ってもらうのよ」


 ダンジョンは普通、協会が管理しているものだが力あるギルドが管理しているという例もあり、一角獣ギルドが所有しているギルドともなれば通常のダンジョンとは比べ物にならず命が行った世田谷ダンジョンよりもランクが高いものに間違いなくそんなダンジョンを探索させるとは正気の沙汰ではない。


 しかし、久しぶりにダンジョンに潜れると聞いて命は未知のダンジョンを探索できるという喜びが溢れる。自分はつくづくダンジョンに魅せられているのだと実感する。ダンジョンに潜れるのならば地獄の訓練にも耐えられるというものであり訓練が終わると会議室に集められて資料を手渡される。


「一角獣ダンジョンについて……」


 そこには命がこれから潜ることになる一角獣ギルドが保有しているダンジョンについて詳しく記されており、ダンジョンの構造は基本的な階層ダンジョンで1階層からB級モンスターが現れるという話であり、保有しているダンジョンである為か詳しく出現モンスターの事が書かれておりこれは本腰を入れて挑まなければやられるのは自分になりそうだ。


「装備を支給することもできますが?」


「いえ、自前の装備で行きます。何時もの通りの方が気が楽なんで」


 一応、装備も持ってきており手早く装備する。


『死毒蠍の長剣』ランクB+

 攻撃力55 耐久度50

 スキル

 劇毒、金剛力、剛撃


 『死毒蠍の大楯』ランクB+

 防御力65 耐久度80

 スキル

 剛皮、再生、甲殻


 クイーンの猛毒とデススコーピオンの猛毒を掛け合わせて作られたのが猛毒よりも強力な劇毒で強い再生力を持つトロールですら耐えられない強力無比なもので新たなメインウエポンを手に入れることが出来た。


 命は職員に案内されてダンジョンの入り口へと向かう。厳重に管理されているようで多くの見張りが居り一角獣ギルドの者以外は入れないようになっている。


「それではご武運を」


 職員に見送られてダンジョンに入る。世田谷ダンジョンとは違い、始めからベストメンバーで挑んでおりそうでなければやられるのは自分の方でダンジョンの危険性を理解しているのか召喚モンスター達は命を守るように側を離れない。


「低く見積もっても初心ダンジョンの五階層クラス……流石は一角獣ギルドが所有してるダンジョンだな。レベルが違う」


 肌に感じるくらいダンジョン自体の魔力が強く、入り口にいるだけで無数のモンスターに睨まれているような感覚があり今までのダンジョンが子供に思えるくらいの威圧感で今まで以上に気合を入れなければならない。


 ダンジョンの中はアマゾンの様な熱帯雨林で視界を木々が覆いじっとりとした空気で地面はぬかるんでいて歩きにくく戦いにくいなと感じながらも進んでいくとモンスターが現れる。


 ナーガ

 スキル

 槍術、巻き付き、連携


 Bランクのモンスターの中でも群れを成して襲ってくる厄介なモンスターで一糸乱れぬ連携が特徴で各々、武器を扱うことから普通のモンスターよりも知能があるため危険度が増している。


「アース・ウェーブ」


 地面が盛り上がりまるで津波のように土がナーガ達に迫っていく。ぬかるみをスイスイと動く蛇の体でも逃れられない範囲でナーガは土に飲み込まれて土はナーガ達を拘束する。


 成長した命の大地魔法は師匠である朝比奈も認めるほどの練度で命の繊細な魔力コントロールは大きな武器であり土の波を発生させるしかない魔法で相手を拘束する凶悪なものへと変わり拘束されたナーガは成す術がなくアイン達が次々と止めを刺す。


《レベルアップ!召喚モンスターのレベルがアップしました》

 

 柏崎命

 レベル16→17


 アイン

 デス・ナイト

 レベル3→4

 

 ブラン

 ハンターオウル

 レベル2→3

 

 フラウ

 ハイピクシー

 レベル2→3


 アヴァリス

 レッドオーガ

 レベル2→3


 フォボス

 フロストウルフ

 レベル2→3


 パーティーメンバーが一斉にレベルアップする程の経験値に一角獣ギルドが保有するだけのことはあると納得する。ナーガの魔石は性能のいい防具になるという話でありナーガの種族特性か水耐性を得られるとして市場でも高く取引されていると聞いたことがある。


 「さて、進むか」


 ぬかるんだ地面を歩く。これはダンジョン探索が終わったらブーツを洗わないといけないなと思いながら。

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― 新着の感想 ―
余裕満々といった様子だった新道寺がこれほど疲労困憊なのだから彼が受けた特訓もかなり過酷なものだったのだろう。 『余裕満々』ではなく、『余裕綽々』か『自信満々』。 意味的にどっちでも通じそうですし、お…
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