第二話
ダンジョンには幾つか種類が存在する。主に下に進むごとにモンスターの強さが増していく階層型と巨大な空間を有する墳墓型の2種類であり探索者育成高校に存在するダンジョンは教師やOBによって制覇寸前の状態で留められて探索者の登竜門として一般にも公開されている通称初心ダンジョンと呼ばれている。
命は支給された杖とローブを身に纏いダンジョンの入口に立つ。取り敢えず鑑定をして装備の状態を確認する。
『丈夫な杖』
攻撃力10 耐久度50
精巧に作られた丈夫な杖。無茶な使い方をしても問題ない。魔法使用時の媒介となる
『灰のローブ』
防御力20 耐久度20
駆け出し魔法使いの為のローブ。動きを阻害しないような作りとなっている。
ダンジョンに入りたての者に送られるには少し良すぎるものの気がするが有難く受け取っておこう。取り敢えずダンジョンに入る前に召喚魔法を試してみないと。
「サモン」
そう呟くと目の前にステータス画面が表示されて召喚可能なモンスターの一覧がずらりと並ぶ。
ゴブリン
レベル1
ステータス
筋力E
体力E
敏捷E
魔力G
スキル
投石、打撃
スライム
レベル1
ステータス
筋力F
体力F
敏捷E
魔力C
スキル
物理攻撃無効、溶解
スケルトン
レベル1
ステータス
筋力D
体力E
敏捷E
魔力E
スキル
《選択可能》《選択可能》闇属性
ウッドゴーレム
レベル1
ステータス
筋力C
体力B
敏捷F
魔力G
スキル
堅固、打撃、物理耐性
一通り見てみてスケルトンは使用する武器が選べるようで自由度が高い。召喚可能なのは一体だけでありどうしたものかと悩んでしまう。その間にも他のクラスメイトは次々とダンジョンに潜っていき焦れる気持ちはあるがこれはじっくりと決めなければいけないことで真剣に考える。
「よし、お前に決めた。サモン!」
体から魔力が抜けていくのを感じて体感で半分ほど消費し地面に魔法陣が出現して光と共にモンスターが召喚される。
アイン
レベル1
スキル
剣術、盾術、闇属性
始まりの一を意味する名前を付けたスケルトンに用意しておいた剣と盾を渡すとちゃんと装備する。いよいよダンジョンに潜る時が来て高鳴る鼓動を抑えながら門を潜る。
進んだ先は坑道のようで薄暗く明りも僅かであるがこんなこともあろうかとランタンを持ってきておりアインに先行させて慎重に進んでいく。耳を澄ますと物音が聞こえて警戒する。小さい足音であるが油断はせずライタンの光に呼び寄せられたのか爛々とした目を輝かせる鼠が現れる。
「鑑定」
ラット
ステータス
???
スキル
???
鑑定のスキルレベルが高くなかったのかステータスやスキルを見ることは出来なかったがモンスターの名前は分かった。ゴブリンやスライムといった一般的に弱いとされているモンスターで群れで動くモンスターなのに単独で行動しているのは珍しい。
「アイン。頼むぞ」
「カタカタ」
骨の音を響かせながらラットに向かっていく。応戦してくるラットを盾で受け止めて剣で切りつける。命も黙ってみてみることはせず杖を構えて魔力を集中させる。
「アース・ボール」
杖の先にこぶし大の石が形成され詠唱が終わると同時に発射されてラットの頭を抉り俊敏な動きが止まりアインが剣で突き止めを刺す。ラットの体が粒子となり消えていきその体は1つの石へと姿を変える。
『魔石』
モンスターの力が結晶化されたもの。
《レベルアップ!スキルレベルがアップしました。召喚モンスターのレベルが上がりました》
無機質な機械音のようなものが脳内に響きステータスを確認する。
柏崎命
レベル1→2
スキル
召喚魔法1→2、土魔法1→2
アイン
レベル1→2
初めての戦闘を終えただけでこれだけレベルが上がるとは想定外でこの調子でどんどん進んでいこう。魔石を拾い上げてポーチの中に入れてランタンの明りを頼りに進む。
《レベルアップ!スキルレベルがアップしました。召喚モンスターのレベルがアップしました》
柏崎命
レベル3→4
スキル
召喚魔法1→3、土魔法1→3、鑑定1→2、連携1New!
【連携】
モンスターと息を合わせることが出来る。
アイン
レベル1→4
スキル
剣術、盾術、闇属性、物理抵抗New!
「もうひと踏ん張りだな」
進めば進むほどモンスターのレベルも高くなっておりアインと二人だけだが何とかこなせておりこの経験値効率を考えるとパーティーを組まないで正解だった。
今は第一階層の中盤位だろうか初心ダンジョンは五階層あると聞いていてそれぞれの階層の最奥にボスが存在しており一応はボスを倒すことを目的としているが既にパーティーを組んだメンバーが倒している可能性もあるので命はのんびり進むことにする。
《レベルアップ!スキルレベルがアップしました。召喚モンスターがレベルアップしました》
柏崎命
レベル4→5
スキル
召喚魔法3→5、土魔法3→4、鑑定2→3、連携1→3
アイン
レベル4→5
召喚魔法のレベルが上がったことでもう一体、モンスターを召喚することが可能となりアインに周囲を警戒させて召喚可能リストを眺める。
ゴブリン
スライム
スケルトン
ウッドゴーレム
ウルフNew!
レベル1
ステータス
筋力D
体力D
敏捷B
魔力F
スキル
疾走、噛みつき、危機察知
オウルNew!
レベル1
ステータス
筋力D
体力D
敏捷B
魔力G
スキル
飛翔、爪撃、遠視
新たに二体のモンスターが召喚可能になっていて丁度、遊撃担当が欲しかったところなので有難い。
「サモン!」
「キー!」
ブランと名付けられた白い頭と茶色の胴体を持つ梟が命の杖の上に器用に留まり猛禽類特有の鋭い眼光で周囲を見渡している。頼りになりそうな遊撃役を手に入れて戦闘にも身が入る。丁度、数体のゴブリンが現れて新人の力を見るいい機会だ。
「アイン、ブラン!」
「カタカタ」
「キー!」
命の号令と共に一斉に動き出す。ブランはアインとは比べ物にならない速度で飛行しあっという間にゴブリン達に突撃し片目を鋭い爪で抉っている。遅れてアインも参戦し動揺するゴブリン達を機械のように処理していく。
「アース・バレット」
散弾のように石弾が発射される。土魔法がレベルアップして新たに増えた魔法でダメージではアース・ボールの方が上であるがこういった複数戦闘ではこっちの方が良く向かってきたゴブリン達の出鼻を挫くことに成功し背後を見せたゴブリンをアインが切り伏せていく。
《レベルアップ!スキルレベルがアップしました。召喚モンスターのレベルがアップしました》
柏崎命
レベル5→6
スキル
召喚魔法5→6、土魔法4→5、鑑定3、連携3→4、指揮1New!
【指揮】
指揮下にあるものに対して攻撃力と防御力を上昇させる。
命にとって一番欲しいスキルが手に入る内心ガッツポーズする。今はアインとブランの二体だけだがこれは召喚できるモンスターが増えれば増えるほど恩恵が得られるもので将来性の高いスキルと言えてレベルアップしたことで魔力も随分と増えており二体もモンスターを召喚しているというのに余裕で戦闘に参加できるレベルとなっている。
「今はどの位かな」
周りを見渡すと多くのクラスメイトがそれぞれモンスターを狩っておりその人数からしてかなり奥に進んだということでもうそろそろ最奥に辿り着くんじゃないかと進んでいると如何にもと言った大きな門が見えてきてその前には多くのクラスメイトが集まっていて門は開け放たれており戦闘音が聞こえる。
「柏崎。お前もここまで来たんだな!」
重そうな鎧を身に着けた宍戸がパーティーメンバーを連れて命に話しかけてくる。見たところによると怪我のようなものはなくパーティーメンバーもかなりバランスが取れた面子で宍戸のコミュ力の賜物かなと考える。
「知ってるか?今、ボスと戦ってんの主席合格の獅子王琴乃なんだってよ」
「主席合格の子って確か……」
「そ、あの獅子王誠の妹だって噂の子だよ」
激しい剣戟の音が響いており気になって野次馬をかき分けてボス戦を見てみようとするとそこにはたった一人で戦う可憐な少女の姿があった。相対しているのは巨大な体躯に身の丈ほどの大斧を持ったゴブリンロードであり入学したばかりの新入生がたった一人で相手するには厳しい相手だがまるで舞うような動きでゴブリンロードを翻弄し攻撃を与え続けている。
「凄い」
思わず魅入ってしまう美しい戦いぶりで自分とは遥かにかけ離れた実力にただただ感心するしかない。自分も何時か彼女のように戦うことが出来るのであろうか。胸の中が高鳴り子供のころから夢見てきた自分の先を行く探索者の姿に憧れずにはいられない。
「そろそろだな」
戦いが終わろうとし全身から血を流し満身創痍のゴブリンロードの首を跳ね長いようで短かった戦闘の幕が下りる。クラスメイト達は思わず歓声を上げて銀の剣を握る彼女は勝ったのが当たり前のように冷静そのもので長い髪を後ろで纏めていたものを振りほどき剣を鞘に納める。
「おーおー、お疲れさん」
「先生!」
何時の間にそこにいたのかボス部屋の中央に陣内が現れる。流石は元A級探索者で気配が一切感じられなかった。
「取り敢えず此処まで来れた奴は合格ってところだな。教室に戻りなー」
手元の名簿に何か書き込んでいる。このボス部屋の前に辿り着いたのはクラスの三分の一程度でそれ以外は辿り着くことは出来ず最初に陣内が言っていたように成果の上げられなかったものという判断されて退学になるのだろう。厳しいようだがそうでなければ生き残ることが出来ないということなのだろうボス部屋から去る陣内を追ってクラスメイトも去っていく。
そんな命の後ろ姿を見つめている者が一人。
「サモナー?」
それから一同は教室に戻りこれからのカリキュラムについて教えられる。通常の座学に加えてこの学校独自のカリキュラムとしてダンジョンでの成果によって単位が与えられるというものがありギルドに登録をし学校にある初心ダンジョンだけでなく都内のダンジョンの結果も反映されるとのことでその単位数は座学のものとは比べ物にならないものに設定されており極端なことを言えばダンジョンで成果を上げれば授業に参加しなくてもいいとのことであり完全な実力主義にクラスメイトの顔が歪む。
「委員会や部活動はその都度って感じだな。質問はあるかー」
見るからにやる気がなさそうなのに丁寧に説明してくれて面倒見の良さが垣間見える。真面目そうな生徒が手を上げて立ち上がる。
「ダンジョンの成果と言いますと具体的にはどういったことでしょうか?」
「まぁ、手に入れた魔石の量とかアイテムの数とかだな。それを学校に提出してもらったら報酬とか色々と特典が与えられる」
例えば金や食堂の割引券、学校に併設されている武器屋やポーション屋などの学校の施設に対する利用券など特典は様々なものがあり探索者育成高校の施設は多くの探索者が絶賛しておりわざわざ0Bが訪ねてくるほどでありクラスメイト達は目を輝かせている。
「説明はこんなとこだな。そんじゃ授業はこれで終いだ」
そういって陣内は教室から出ていくクラスメイト達はこれからの学校生活が厳しいものになると思いながらも期待で胸を膨らませている。それぞれダンジョンで組んだパーティーメンバー達と自然に集まって喋っており少し、寂しい気もするがパーティーメンバーを組まないと決めたのは自分なので用意された教材を鞄に詰めながら寮に戻ろうかなと考えていると声を掛けられる。
「飯奢ってくれるって約束だったろ?」
「覚えたか」
「そりゃそうだ!この学校の飯は上手いって評判なんだぜ!」
探索者育成高校は多くのOBからの寄付だけでなく国からも多額の寄付を受け取っているようで学校の施設は全てが超一流で中でも食事は一番気を付けている所の様で下手な三ツ星レストランよりも力が入っていると話を聞いていて学生はそれを低価格で食べることが出来るのだという。本当は先に寮に帰って荷物を纏めてから食事をしたかったのだがこう誘われてしまっては仕方がない。
「それで?どうです、今年の新入生は」
ディスプレイの明りだけが灯っている薄暗い会議室には教師陣が勢ぞろいしており議題となっているのは先ほど行われた初心ダンジョンの攻略についてであった。
「やはり獅子王君の活躍が凄まじいですな。転職したばかりだというのにゴブリンロードを単独で撃破するとは私の生徒として欲しかったですよ」
「こればかりは運ですからねー」
声を上げるのは剣鬼で知られる二年生を担当している眞鍋飛鳥であり嫌な笑みを浮かべながら陣内の事を見つめており二人はあまり相性が良くなくいつもこうしてぶつかっており緊迫した雰囲気となっている。
「あら、獅子王さんだけじゃなくて樋口さんも素晴らしいですわ。あんな強力な回復魔法を持っている人なんて極僅かですもの」
多くの生徒を同時に回復させている樋口吉良を評価しているのは三年生を担当する氷華の異名で知られる魔術師 桐生梓で魔法職を優遇する彼女にとって強力な回復魔法を使用できる樋口の評価は高いもので妖艶な笑みを浮かべながらディスプレイを眺めている。
「私はこの子が気になる」
そうディスプレイを指差したのはこの中で最も小柄な体格の女性でその容姿から彼女を侮る者はこの場所にはいない。世界で数えてもたったの数人しか存在しないS級冒険者の一人であり万魔の女王と呼ばれている篠原渚。そんな彼女が指差したのは見るからに弱そうなスケルトンを連れている男子生徒。
「お言葉ですが、篠原先生。彼は入学時の成績も並程度の普通の生徒ですよ?」
「貴方の見る目がないだけ」
眼鏡をかけた真面目そうな教師の言葉を一蹴する。
「この子はきっと凄い探索者になる」




