第十五話
今日は待ちに待った体育祭の日であり生徒は教室ではなくグラウンドに集まるように言われて体操服に着替えてグラウンドに集合する。グラウンドを埋め尽くさんばかりの生徒が集まっており壇上の上に校長が立ち挨拶する。
「今日という日のために色々と準備してきたことだろう。皆、存分に力を発揮してくれたまえ」
観客席には多くの外部客が集まっており中にはカメラを構えているものまでおりスカウトにやってきた人なのかもしれない。
大手のギルドのスカウトマンも居るようで探索者高校は注目されているようで彼らが熱い視線を向けているのは獅子王誠の妹である獅子王琴乃であり兄譲りの凄まじい剣才は学校外にも轟いており是非、ギルドに引き入れようと躍起になっている。
壇上に一人の男子生徒が登っていく。入学式の時に挨拶していた生徒会長で生徒の中でで最も強い探索者と言われている人物だ。
「我々、生徒一同は探索者法に則り、正々堂々、全力を尽くすことを誓います」
凛とした佇まいで見るものを圧倒するオーラのようなものを発している。一度見るだけで傑物だと分かる人物で探索者高校において生徒会長に選ばれる条件は生徒から票を集めることと純粋に強さであり全生徒が認めた最強の探索者であることの証明でありその立場に相応しい強さを持っている。
「では、体育祭の開幕を宣言する!」
観客席から歓声が響き渡る。まるでオリンピックかのような盛り上がりでこれだけの人に見られていると考えると流石に緊張するが直ぐに冷静になり自分のベストを尽くすだけだ。
まずは戦士職のモンスター討伐で命は待機室に向かい備え付けられているディスプレイで会場を観戦する。最初は1年生が入場して重い鎧を身に着けた宍戸の姿があるが人一倍目立っているのは見るからに高級そうな装備を身に着けている小林であり手には毒蜘蛛女王の剣が握られており周囲にアピールも欠かさない。
「第一段階開始!」
モンスター討伐は幾つか段階に分かれており段階毎にモンスターの数や強さが変わっていき第一段階のモンスターはゴブリンの群れで檻から解き放たれたゴブリンが生徒達に襲い掛かる。
最弱のモンスターが相手で生徒達は難なく倒していき二段階目のコボルト、三段階目のポイズンスパイダーと続き四段階目にオークが投入される。
流石に離脱者が出てくるようになり宍戸も粘っていたが脱落してしまった。そんな中、機械のようにオークを処理していく獅子王の姿に多くの観客達が目を奪われる。
「流石は獅子王誠の妹。華がありますな」
「兄にも負けぬ剣術。見事と言うしかないな」
視察に来ていたギルドの人間も獅子王の学生離れした動きに注目しておりカメラでその姿を撮影している。
「獅子王の奴……!調子に乗りやがって!」
その姿を嫉妬に満ちた瞳で眺めており小林はオークに苦戦しながらも戦い抜き四段階目を突破するが流石に五段階目を突破できる気はできず棄権する。
会場に残ったのは獅子王一人だけであり最後のモンスターが放たれる。予想通り五段階目のモンスターはトロールでありその巨体が動くたびに地面が揺れる。
「直ぐに終わらせる」
獅子王の持つ銀の剣の刀身が輝く。戦士職の中でも高等技術とされている剣閃でありその輝きが凄まじいほど完成度が高く獅子王のそれは一級と呼ぶにふさわしい輝きで次の瞬間、トロールの首が地面に落ちる。
オークを超える強靭な肉体と再生力を有するトロールが簡単に絶命する。会場のボルテージは上がり皆、獅子王を讃える。
召喚モンスター全員で掛かってもあんなに簡単には倒すことはできないだろう。
戦士職のモンスター討伐が終わったので次は魔法職の射撃であり椅子から立ち上がり会場に入場する。多くの観客の視線が集まり熱気で会場が熱く感じるのは気の所為ではないだろう。
「それでは射撃開始!」
土魔法で作られた標的に向けて一斉に魔法を発射する。命も問題なく標的を撃ち抜いており然程、難しくはないが時間が経つごとに難易度は上昇し標的が動き出したりと繊細な魔力コントロールが必要になっていく。
苦戦し脱落していくものが現れる中、魔力操作のスキルを持っている命はスイスイと標的を撃ち抜いており魔力操作のスキルを得てから魔法の扱いが理解できて最適な魔力の量などが分かり長時間、魔法を行使できるようになった。
「1年生で上位魔法を使えるとは中々の才能だね」
「魔力コントロールも良い。この競技は彼の勝ちかな」
「いやいや、あの子も負けていませんよ」
命と同じように淡々と標的を撃ち抜いている人物がいる。真っ黒なローブで顔を覆い身の丈ほどの大きな杖を構えており緻密な魔力コントロールで標的を撃ち抜いており多くものが脱落する中、残っている。
残るはその人物と命だけとなり難易度はぐんと跳ね上がり風魔法が施された標的は高速で移動し生半可な攻撃では撃ち抜けないようになっている。ならばと命は魔力を集中させて石の槍を鋭くさせてドリルの様に回転させる。
「アース・ランス+アース・スピア」
石の槍に貫通力を追加する。所謂、多重魔法でありエンチャントに並んで高等技術とされているものであり回転する石の槍は高速で飛来し標的を見事に撃ち抜く。
《スキルレベルがアップしました》
大地魔法1→2、魔力操作10→11
歓声が響き、ローブの人物は標的を撃ち抜けなかったので必然的に命が勝者となる。
「多重魔法とは思わぬ逸材が現れたようですな」
「あの生徒の事を調べろ!新聞部と連絡を取るんだ!」
ギルドのスカウトマンがざわついており予想だにしていなかった逸材の登場に胸を膨らませている。そんな事になっているとも知らずに命は控え室に戻ろうとするとローブの人物に話しかけられる。
「お見事でした」
ローブを脱いで握手を求めてくる。ローブの下には絶世の容姿が隠されておりこんな顔を隠すのは勿体ないと思うくらいでありこんなイケメンなら話題になっていても可笑しくないと思うのだが彼の事を聞いたことはない。
「新道寺和人です。よろしく」
「新道寺って言ったらあの?」
「まぁ、お察しの通りかと」
獅子王の影に隠れているがあの新道寺桜の弟も探索者高校に入学しているという話をどこかで聞いたことがある。そんな人物が今まで話題となっていないのが不思議でさっきの実力を見ればもっと騒がれてもいいのにと思うがローブで顔を隠しているのだがらそんな話題となることを嫌っているのだろう。
「次は負けませんよ」
そういい和人はローブを被り直して去っていく。魔力コントロールは命よりも彼の方が上で多重魔法という手段を取らなかったら負けていたのは命の方で流石は新道寺桜の弟であり今でこれなのだから成長したらどれだけの魔法使いになるのか恐ろしい。
手強いライバルが出来てしまったなと思いながら控え室に戻る。戦士職、魔法職の競技が終わったので今度は神官職の競技で多くのスケルトンが放たれてこの競技は樋口の独壇場でまさに無双といっても差し支えないものであり聖女の名に相応しい活躍ぶりであった。
「あのレベルの神聖魔法を学生が使えるものなのか!?」
「獅子王誠の妹といい今年の一年生はどうなってるんだ!?」
スカウトマンがざわついており樋口ほどの神聖魔法の使い手は現役の探索者の中でも貴重で是非とも引き入れたいと準備を進めている者も居るくらいであり体育祭が終わったら大変そうだなと思いながら命は自分もそうなるとは露とも知らず他人事のように思っている。
競技は進んでいき生産職の製作品の出来を競う競技では予想通り金倉が勝利を治めてその次にオークの魔石から作られた高性能のポーションを作り出した那須が勝ち抜いており命は自分の事のように喜ぶ。
昼休憩となり体育祭の時は食堂が閉まっているため一同は弁当を持参しあまり料理が得意ではないものの調べながらそれなりの弁当を作ることが出来て命は見晴らしのいい場所で食事を摂ることにした。
「いただきます」
体育祭は楽しいがあまり騒がしすぎるのは好きではないのでこうやって人気の少ない場所で食事を摂っている。昼休憩が終わったら体育祭の目玉であるダンジョン探索でその成績によって優勝が狙えるかが掛かっておりどうせなら優勝して豪華賞品を手に入れたいものだ。
「こんな所に居ましたか。探しましたよ」
「安城先輩。どうしたんです?」
いつも通りの胡散臭い笑みを浮かべながら安城がこちらに近づいてくる。
「新聞部はその活動から外部とも交流がありましてね。貴方へ向けたラブコールを渡されたのですよ」
そういい安城はドサッと紙の束を命に渡してくる。サラッと目を通してみるとギルドに所属しませんかというお誘いのようで獅子王や樋口ならば兎も角、自分にこれだけの誘いが来たのかと内心疑ってしまう。
「生憎と今はギルドに入ろうと気は起きませんね」
「そうお答えになると思っていました」
そういい安城は紙の束を受け取ってくれて懐から一枚の手紙を命に手渡す。その手紙に描かれている印章を見て流石に動揺してしまう。
「これ、本物ですか?」
「疑うのも分かりますが本物ですよ」
手紙に描かれているのは日本二大ギルドの一角である一角獣ギルドの印章であるユニコーンでありこれが示すのは一角獣ギルドの公式文書であるということであり慎重に開くと体育祭の後に行われるギルド見学に招待するというものであり信じられず安城の顔を見るのだが胡散臭い笑みを浮かべているだけでありどうやら本物であるらしい。
体育祭の後に行われるギルド見学は学校が用意したギルドに加えて体育祭での活躍ぶりを認められてギルド側から招待されることがあり本当ならば体育祭が終わってから送られるものであるのに体育祭中に送られるというのは異例の事だ。
「どうしてこんなものが?」
「言ったでしょう?新聞部は外部と交流があるんです」
不敵に笑う安城に新聞部の力が学校だけでなく学校外にも及んでいるという事であり組織力の高さが伺える。新聞部の卒業生は高名なギルドに所属するという話であり卒業しても新聞部と繋がりが切れていないという事でありその情報網は学校だけでなく外部にまで広がっているという事になる。恐ろしい組織だ。
「その招待を受けるかどうかは柏崎さんの自由です。私は受けた方がいいと思いますけどね」
そう言い残して安城はこの場を後にする。手紙には一角獣ギルドのギルドマスターである大文字恭介の名前が書かれており本気で命を招待しているだという事が分かる。
滅多にない機会でありこんな事は二度とないかもしれないと考えると誘いに乗る方がベストだと思う。日本のトップギルドに招待されるなんて自分も名が知れたものだなと思いながら弁当を食べて午後の競技に向かう。




