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【地上:フォルドゥ核施設 地下91m 核濃縮棟】
施設内部は低温安定状態にあった。分厚い鉛板と鉄筋コンクリートで三重に覆われた中央制御室では、数名の技術士官が当直任務に就いていた。
天井の蛍光灯は青白く、機器は静かに動作音を奏でる。遠心分離機の回転音が、振動を伴って床下から伝わってくる。
当直責任者のバフマン少佐は、モニターに表示された“微小信号損失”に目を細めた。NORリンクのラグが通常より17ミリ秒遅延していた。
「この信号干渉、自然由来じゃないな……」
彼の直感が警告していた。だが何かを叫ぶ前に、天井がわずかに軋む音がした。
その直後——空気が震えた。
音より先に、質量が空間を叩く感覚が、施設全体を貫いた。91メートル上空から突入してきた13トン超の鋼鉄爆弾が、地中を削りながら突入してくる。
「爆圧——っ!」誰かが叫んだ瞬間、
天井が爆裂。振動波で鉄筋がバネのように反り返り、分厚い床が隆起。通気孔経由で進入した爆弾が、目標深度で起爆。
凄絶な縦方向の衝撃波が、一切の音を置き去りにして、施設を瞬間で破壊した。