開演
───この世界には、人々に信仰、または畏怖される『天権』と呼ばれる絶大なる力を秘めた大権が14つ存在している。
この世に絶望と混沌を齎す『災禍の七柱』の名を冠した大罪の魔神の天権。
この世に幸福と希望を齎す『神秘の七柱』の名を冠した神聖なる大天使の天権。
『傲慢』『憤怒』『嫉妬』『怠惰』『暴食』『強欲』『色欲』。
世に不利益と罪悪の心を齎してきた忌々しい7つの感情と罪、それらを支配する魔神の力を宿す天権…。
それが『災禍の七柱』。
『正義』『忍耐』『希望』『勤勉』『慈悲』『節制』『博愛』。
世に無償の幸福と幸せを齎し、名だたる大天使より救世の使命を受けた絶対的な秩序の象徴達の力…それが『神秘の七柱』。
世界の厄災そのものである無秩序の象徴と世界を守護する秩序の象徴。
その対極の存在に位置している両者の天権は互いの存在を酷く忌み嫌い、そしてその因縁は人類誕生から数十万年の時が経てど途絶える事がなく、文明を幾度も壊し、作り変え変えながら、永遠と続いてきた。
互いに相反する存在であるが故に、この両者は数万年の時を争い続けてきた以上、両者が交わることは決してありえない、これはその長い歴史から見ても明白なものとなっていた。
───そして現在、現世でもまた次世代の十四柱達が揃おうとしている。
そんな彼らが選択するのは、これまでと同じ争う道か、それともまだ見ぬ共存する道か、この結果は誰にも分からない。
これから始まるのはそれらの存在が織り成していく果てしなく壮大で、ロマンチックな物語。
さぁ───開演の時間だ。
これより長きに渡る物語を終点まで見届けるとしよう。
これは、長きに渡って世界を騙し続けた偽物の英雄をその玉座から引きずり下ろし、真なる英雄が生まれるまでの英雄譚。
己に課せられた理不尽な『罪業』と残酷で熾烈な運命に抗い、多くが紡いで来た様々な想いを託し、そして託されながら、どんな苦境をも乗り超え、数多の絶望に打ち勝ち、そして数多くの存在と強く固い絆を結び、最後には世界全てに認められ…やがて───。
───『神殺しの英雄王』と呼ばれるに至った、とある少年の人生を綴った物語である。
この物語の結末は今はまだ幼き英雄の卵『如月 明』、君自身の選択にかかっている。
さぁ、柱に選ばれた堕ちた神の大権を行使する者よ。
君は一体、この残酷な運命の中でどのような選択をする?
────極寒と未来を司る者『南極帝世』 フリーズン・エンペラーより。