第2章 深夜の鎮痛剤
第2章
恋瓜まくらは、一瞬鳴ったナースコールを押した患者に
向かうため与えられた仕事、つまり書類をファイルに閉じるため、紙に二つの穴を開ける
仕事を一旦中断した
まくらは高速で書類に穴を開けていたが紙を重ねて開けるという着想にたどり着くには、
看護師としてまだ未熟だった
一枚ずつ丁寧に、患者の立場になって書類に穴を開けた
まくらが病室に入ると、ナースコールを押したおじいさんはもう寝ていた
彼がボタンを押してから、12分がたっていた
まくらは小柄な身体でおじいさんを揺さぶった
彼はやっと起きてくれた
恋瓜まくらはおじいさんに向かって言葉をかけた
「呼んだ?」
おじいさんは寝起きの頭でなぜナースコールを押したか思い出そうとした
が、結局思い出せなかった
「恋瓜さん、申し訳ないけれどもう大丈夫みたいだ。無駄足を踏ませて悪かったね」
まくらは言った
「何かあったら遠慮なくボタンを押すの、いいね。おやすみ」
ボタンを押したのは隣の病室の老人であって、まくらが起こした老人は三時間前
就寝時間になってからずっと寝ていた
ナースコールを押した方の老人は鎮痛剤をもらおうとボタンを押したのだが
その患者もまたすでに寝ていた
まくらはナースステーションに戻り、書類穴あけの仕事に戻った
恋瓜まくらの指導役を任された看護師2年目の女性は、まくらに次は何をさせれば良いか
見当もつかなかった
まくらは看護助手助手という立場だが、そもそもこの病棟に看護助手はいない
彼女の名前は、海路みみ(うなじ みみ)(20才)
まくらは輸液バッグ交換の準備をしている、うなじみみに話しかけた
「みみ、おわった」
朝の勤務と交代するまであと6時間以上ある
うなじみみは、恋瓜まくらに言った
「仮眠室で休憩してる、膝上もも(ひざかみ もも)(21才)先輩がちゃんと眠れてるか
確認してきてくれる?」
うなじみみは輸液交換をしに行った
恋瓜まくらは、膝上もも先輩を起こしに行った
まくらがナースステーションから離れようとした瞬間、ナースコールが鳴った
今回、まくらがナースコールを止めるまでにかかった時間は0.24秒
恋瓜まくらは、万引き犯のようナースステーション内を見わたした
気がついている看護師はいない
まくらは病室に向かった