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星々、君に願う。  作者: 鈴平りんね
2/2

春の日

 来崎巳織は今日も朝から外で走っていた。

「…」

「巳織、今日も朝から元気ですね」

 ここは桜苑。日本の古き良き風景が残る国指定の史財。

声をかけてきたのはそこの管理人、白蓮であった。

「白蓮さんも十分早いと思いますよ。人が入るのはもっと日が高い頃だと思いますけど…」

「そうですね。でも今日は大切な客人様がいらっしゃるんです。」

「そうなんですか」

 私は興味がないことを隠しつつ返事をし、その場を離れた。


 それから、家に帰った巳織は学校へ行くための身支度をして学校へと向かった。

「おはよう!巳織ちゃん」

「おはよう、心海」

 彼女は篠原心海。巳織が高校生になってからできた唯一の友達だった。タイプは違うがとある話で意気投合したのである。

「そういえば、巳織ちゃん知ってる?」

「何を?」

「今日、"使徒"の人たちが桜苑に出向くらしいよ」

「桜苑に?」

「そうみたい」

 使徒というのは11年前世界に新しく生まれた存在。

噂では星の使いではないかと言われている。

使徒がいい存在であれば世界も日本も放っておいただろう。

けれど、使徒は新しく生まれただけでは終わらなかった。

使徒たちはもとより住んでいる人々の魂を削ってしまうのだった。その量は微量であれも人々には害がある。

「それでさもしよかったら放課後、桜苑に行かない?」

「本気で言ってるの?」

「うん、だって私たちの家族を奪った人たちだよ?そんなの見て機会あったら襲うしかないじゃん?」

「流石にそれはやりすぎだよ、心海」

「じゃあ、見に行くだけ!」

「それならいいよ」

「りょーかい!」

 私たちが意気投合した理由…それは使徒によって家族を失ったことであった。


 放課後になり私たちは桜苑に向かった。

「どんな話ししてるのかな?」

「それは、人間と使徒が共生するための法律なんかじゃない?」

 11年前、当時の日本政府は危険な存在をなくすための政治を行ってきた。

 だが、近頃は人間と使徒が共生できるようにすることが重要となっていた。それは何年も使徒がいる生活をしているとその生活にも慣れてくるからであるからだろう。

「見て、巳織ちゃん桜が綺麗だよ〜!」

「そうだね」

 桜苑は桜と付いているだけあってお花見スポットとしても有名だった。巳織も朝走りに来るのはこの桜を見ると気分が落ち着くからという理由でもあった。

 しばらく桜並木が続く道を歩いて行くと今回の目的の大きなお屋敷が見えてきた。

「何話してると思う?」

「あまり聞こえないからわからないよ…」

 お屋敷の周りには松をはじめとする植物が多く植えられていて中の様子がわからなかった。

「そうだ!庭の裏側の方に扉がなかったけ?」

「あったけど…」

「もしかしたら、そこから入れるかも…!」

「心海、それはやめなよ」

「え〜でも、私見たい!」

「さすがにだめだよ」

 そうして二人で言い合っていると後ろから声をかけられた。

「お静かにお願いしますよ、巳織。」

「あっ白蓮さん…」

「ん?巳織ちゃん知り合い?」

「そうだよ」

「白蓮と申します。よろしくお願いしますね」

「…」

「どうしたの心海?」

 心海は白蓮には聞こえない声で巳織に囁いた。

「巳織ちゃん、もしかしてあの人は使徒?」

「えっ…」

 心海は予想もしていないことを言い出した。

「ちっ違…」

 巳織の声はもう心海には聞こえていなかった。

「ごめんなさい、あなたとは話したくないから」

「…?」

「帰ろう、巳織ちゃん」

「あっ…」

 私は心海に腕を強く引っ張られた。

「ごめんなさい、白蓮さん…」

 今度は心海に聞こえない声で巳織は白蓮に囁いた。


 お屋敷から離れて心海は巳織に話した。

「ねぇ、巳織ちゃん本当にあの人は使徒じゃないよね?」

「…」

「ねぇ、どうなの!」

 珍しく、心海が声を上げていた。

「違うよ…あの人は」

「だったら何で使徒の印が押されたアクセ持ってたの?」

「…」

「今日はもう帰る、じゃあね巳織ちゃん」

 そう言って二人は別れた。


 巳織は心を落ち着けるために朝、走るコースへと来た。

(何でこうなっちゃったんだろう…)

 心海が言ったことは間違えではなかった。

白蓮は確かに使徒の印が押されたアクセサリーを持っていた。ただ、そのアクセサリーは使徒のものではなく使徒から人々を守る"騎士"のアクセサリーだった。

(せめて、白蓮さんのアクセサリーについては言っておきたかった)

 白蓮さんは11年前、巳織と巳織の家族を守ってくれた人であるからだった。

 そんなことを考えていると知らない人に声をかけられた。

「なぁ、あんた大丈夫?」

 そこには真っ白い肌に琥珀色の目が綺麗な少年が立っていた。

「大丈夫です」

「そう?すごい険しい顔してるけど…」

(うわっ顔近づけてきた…苦手なタイプだ)

「だっ大丈夫です、すみませんでした」

 そう言って巳織はその場をすぐに離れた。


 その時の巳織はまだ知らない。

この日を境に変わっていく世界についてを…

                  1話 春の日 END

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