酒と煙草とラブコール
今日は誰にしようか。
あの娘なんて、もう最高に出来あがっちまってる。
26歳の男女が6人で酒を飲んで解散だなんて、学校の給食じゃないんだから有り得ないだろ。
そう思いながら鈴木広大は煙草に火をつける。
「次どこ行く?」
さすが、良いね。
そいつとはさっきトイレで打ち合わせ済みだから、きっともっと暗くてもっと静かで、あの娘が寝落ちしちゃうようなバーが何軒か頭にあるはずだ。
広大は昔から女性に困った事はなかったし、今夜もそのつもりで参加した。
そいつが誘ってくれた飲み会。
そいつの友達の友達、合コンがやりたいと言い出した女の為の飲み会だと聞いていた。
どんな会でも良い、俺ならラストまでしっかり楽しめる。
そんな思いで参加してみたら、これがまた可愛い女の子が並んでいた。
同い年だって聞いてたから26歳、もしくは25歳なんだろうけど女の子は女の子だ。
大人の女性というにはあまりにも可愛らしく、そして若さに対する執着が薄いように感じた。
男は金に嫉妬して女は若さに嫉妬するなどと誰かが得意げに話していたが、俺からすれば26も30も40も違う魅力を持った人間に見える。
その上は、今の俺には遠いかな。
きっと俺には結婚なんて無縁なんだろうが、そもそも願望もない上に結婚した友人で幸せそうな奴を見たことがない。
だから俺は、もう眠そうにしているショートカットの女の子の大きかった目がなんとか開いている様子を見て、この後のことを考えるんだ。
結婚なんて考えてる暇はないね。
今を生きなくちゃ。
一なんて女の子には目も向けない。
たまに思う、こいつは男の方が良いのかななんて。
そのくせ何故かモテるからこいつはよく分かんない。
よく分かんないのがまた良いのかね。
俺には何も分かんないけど、この会は貰うよ。
だって俺はいつまで経ってもそんな男なんだから。
情けなくもなんともない。
きっとそうだ、きっとこの煙草がちっこくなってる頃には届くはず。
制欲にまみれた俺の汚いラブコールが、なんてね。