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強制的に転生させられたおじさんは公爵令嬢(極)として生きていく  作者: 鳶丸
本編

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094 おじさん宝物庫の在り方に物申す!


「思ってたのとちがいますわ!」


 宝物庫の中に入ったおじさんの第一声がそれである。

 おじさん的に宝物庫と言えば、だ。

 大きな部屋の床に金銀財宝が山と積まれ、来歴のよくわからない剣などの武具や、魔道具などがあるといったイメージである。

 

 それが、だ。

 入ってみれば、きれいに整理整頓されているではないか。

 床に金銀財宝の山などない。

 あるのは棚と識別番号が振られた箱だけだ。

 それも整然とならんでいる。

 ただの倉庫であった。

 

 ぜんぜんイメージとちがうことに、おじさんは大きく肩を落とした。

 なんだか期待外れ感が強いのだ。

 そんなおじさんを見て、国王が大きな笑い声をあげた。

 

「ククク……やはりリーもそう思うか!」


「そうですわ! こんなの夢がありませんわ!」


「だ、そうだぞ、ロムルス」


 国王が意地の悪い表情で宰相を見た。

 おじさんも“くわ”と目を見開く。

 犯人はお前か、と。

 

「いやそうはおっしゃってもですね、以前のままだと管理がしにくいのですよ」


“それに”と宰相は続ける。


「魔道具なんかは適切に保存しておきたいですしね」


「でもこれはないわなぁ。リーよ、どう思う?」


「確かにこれはありませんわ! 宝物庫に入った感じがしませんもの!」


「そ、そんなにダメかい?」


 おじさんは大仰に首を縦に振った。


「いいですか、宰相閣下!」


 おじさんはここぞとばかりに物申した。

 王宮の宝物庫とは、ロマンである、と。

 

 そこに夢があるからこそ、人は惹かれるのだ。

 山と積まれた金銀財宝に、武具、魔道具。

 いずれも希少なものが、乱雑に放置されている。

 それこそがロマンなのだ。

 

 確かに、宝物の管理は大事である。

 それがきちんと保管されていることも同様だ。

 しかし倉庫にしてしまったらもうそれは戦争しかなくなる。

 だってロマンがないのだから。

 

 蕩々と語るおじさんに宰相が顔をこわばらせた。

 国王はそんな宰相を見て、ニヤニヤと悪い顔になっている。

 

「ご理解いただけたでしょうか? ですので、これは即時廃止ですわ!」


「よう言うた! よう言うたぞ、リー!」


 国王は拍手をして、おじさんを後押しした。

 やたらとテンションの高い二人についていけない宰相である。

 

 しかしかわいい姪っ子の頼みだ。

“ふんす、ふんす”と鼻息を荒くまでしている。

 そんな態度を見せられると、自身の苦労が水の泡となろうともかまわないかと思うのだ。

 

 目録があれば、後世の人間がどうにかできるだろう。

 そんな先送り的な考えも悪くないと思えるから、宰相としても不思議であった。

 なので苦笑いをしながら言う。

 

「そうですね。かわいいリーがそこまで言うのなら仕方ありません、元に戻しましょうか」


「ありがとうございますわ! 伯父様!」


 おじさんの満面の笑みは破壊力が高い。

 そんな笑顔を見せられては、宰相としても悪い気はしない。

 

 と言うよりも、宰相は末の妹のことをふと思いだしていた。

 おじさんの母親だ。

 どうにも末の妹とおじさんの姿がかぶる。

 容姿そのものよりも、言動が似ているのだ。


 頭のネジがゆるんでいる末の妹には、迷惑をずいぶんとかけられた。

 それも今となっては笑い話ですむ。

 今度はこの姪がそうなるのだろうか。

 いや、なるのだろうと確信がある。

 

 それでも悪い気はしないのだ。 

 自分はつくづく身内に弱いと自嘲するような笑みをうかべて、宰相は国王とハイタッチをする姪の姿を見て目を細めるのであった。


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― 新着の感想 ―
イミテーションのお宝を積んで大事なものはちゃんと管理すればいけそう(なお手間
[一言] >「そうですね。かわいいリーがそこまで言うのなら仕方ありません、元に戻しましょうか」  それでもノーと言ってもいいのよ。  キチンと整理されてないと、誰かに持ち出された時に無くなってると分…
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