871 おじさん第一回チキチキ公爵家主催大食い大会の司会をする
さぁ始まりました。
第一回チキチキ公爵家主催大食い大会。
今回の出場者はこの五名ですわ。
学園を代表して出場したのは聖女エーリカ!
小さな身体に秘めた食欲は無限大。
カレーは飲み物とまで豪語するその実力はいかに!
「うおおお! 聖女ちゃーん」
おっと。
料理人の方からも人気のようですわね。
もう一人の出場者は聖樹国からの留学生ケルシー!
学園ではもはや知らない人がいない食いしん坊ですわ。
大好きな甘味は栗と豪語する彼女。
今日は噴水になるのは勘弁してほしいですわ!
「エルフ! その長いお耳を触らせてえええ」
はい、そこの騎士さん、アウトですわよ。
「ぎゃあああ!」
サイラカーヤ、いいパンチですわ。
さて、次の出場者は競馬場の責任者、ホーウッド!
「ご紹介に預かり、光栄でございます」
礼儀正しいですわね。
ついで、ですわ。
今回の大食い大会、優勝する自信はありますの?
「ふふ。こう見えても若いときには底なしと言われておりました。もちろん出場させていただいた以上、優勝以外は狙いません!」
会場から温かい拍手が飛んでいますわ。
牧場の皆さんからの声援もすごいですわね。
さぁ次の出場者ですが騎士隊所属のハンブリング。
今回の出場者の中では、いちばんの巨漢ですわ。
戦いの前にはエーリカとケルシーにケンカを売っていましたが、その実力はいかほどか。
「えー公爵家騎士隊所属! ハンブリングであります! 絶対に優勝します! よろしくお願いします!」
あら、丁寧なご挨拶をどうも。
では、次の挑戦者といきましょうか。
最後の一人も騎士隊からの出場ですわね。
長身でスタイルのいい女性騎士メルトレーザ!
アストリッドの同僚ですわね。
「今回は出場の機会を与えていただき光栄です。リー様の親衛隊に所属するため、必ず優勝いたします!」
んー親衛隊ってなんですの?
と言うか、そんなものが組織されているのですか?
「ばっか! それ言っちゃいけないやつ!」
なんだか危険な言葉が聞こえてきましたわね。
サイラカーヤ!
「ぎゃあああああ!」
まぁそのことは後でいいでしょう。
さて、今回の大食い大会はこの五名で争われ……。
「ちょっと待ったああああ!」
どうしたんですの? シクステン!
「こんな面白そうなことをオレ抜きってのは薄情ってもんです!」
出場したいということですか?
「もちろん!」
いいでしょう。
では、飛び入り参加はシクステン!
護衛騎士の副隊長。
おとぼけずっこけ騎士の実力を発揮できるか!
「おとぼけでも、ずっこけでもないんだけど!」
では、今回の解説は薔薇乙女十字団から、アリィとパティの二人ですわ。
アリィ、パティ、ずばり誰が優勝すると思いますか?
「はい! そうですね。体格から一押しはハンブリングさんでしょうか」
アリィはハンブリングに一票ということですわね。
では、パティはどうですか?
「はい! んー迷うところなのですが、やっぱりエーリカとケルシーの二人にはがんばってほしいのです」
なるほど。
同じ学園生ですものね。
気持ちはわかります。
最後に今回の司会はわたくし、リー=アーリーチャー・カラセベド=クェワが務めますわ。
よろしくお願いしますわね!
「リー様ああああ! ステキですうううう!」
ありがとう。
イザベラ、ニュクス。
さぁまずは第一回戦、六名の内通過できるのは四名。
二人が脱落することになりますわね。
勝負の品目はお肉の揚げパン。
挽肉と各種の野菜を炒めたものをパンに挟み、油で揚げた一品。
手の平サイズと小さめですが、食べやすいですわ。
わたくしもさきほどいただきましたが、美味しかったですの。
ピリッと辛めの味付けで後を引く美味しさ。
この揚げパンを今から食べていただきますわ。
制限時間は二十分。
食べた量が少なかった二名が脱落になりますわよ。
あ、手の空いている者は屋台を手伝ってくださいな。
給仕の方もお願いしますわよ。
それでは準備も整ったようです。
では、大食い開始ですわ!
魔法どーん、ですわね。
エーリカ、ケルシー、メルトレーザの三人が速いですわね。
いえ、ハンブリングがまさかの二個同時に口に入れていますわ!
これはちょっと規格外ですわね!
「あっぢいいいいい!」
シクステン、なにをしていますの?
え? 急遽参加だから揚げたてだった?
それは仕方ありませんわね。
「そりゃないぜ!」
もう! わがままですわね!
ちょっと魔法を使ってあげますわ。
「おお! すげえ! 一気に食べやすくなっちべてええええ」
はしゃぎすぎですわよ、シクステン。
「お嬢! だって、これ凍ってる! シャリシャリいってる!」
わざとですわ!
「いや開き直られても! ちょっとは誤魔化してくれよ!」
観客から拍手がでていますわね。
協力してくれたシクステンにはご褒美ですわ。
「おお! ちょうどいいくらいの温度になってる!」
おおっと速い。
ハンブリングは既におかわりですわよ!
エーリカとケルシーもおかわり!
メルトレーザもですか!
ホーウッドは静かに食べていますわね。
いえ、まさか。
それはもうおかわりをした後なのですか!
これは速い。
予想外の活躍を見せてくれているホーウッドですわ!
「ケルシー!」
「わかってる!」
「このままじゃ負ける! やるわよ!」
「任せておいて! 合体技ね! 風よー! はいやー!」
ちょっとケルシー。
なんで魔法を使っているのですか!
「エーリカが言ってた! 魔法で妨害しないならいいって!」
また、そんな無茶を!
あーっと。
ふわりと揚げパンが浮いた。
待ち受けるのは口を開けたエーリカとケルシー。
二人の口に……揚げパンが入りましたわー!
「もぐもぐ……なぢゅけて」
エーリカ、無理に喋らないほうがいいですわ!
「……はう!」
あーっとポコンとエーリカの口に揚げパンが吸いこまれたあ!
次々に、揚げパンが口の中に。
「むぐぐ……」
エーリカ、ケルシー。
顔が真っ赤になってますわよ!
無理やり魔法で詰めこむから。
サイラカーヤ、サイラカーヤ!
「お嬢様! 任せてください!」
いったー!
サイラカーヤがいったー!
あ……。
「ぼふう!」
ケルシーの顔が真っ青ですわ。
サイラカーヤ、急いでくださいな!
「……かっ……かかか」
「エルフのお嬢ちゃん! がんばれー!」
ケルシーの顔が見せちゃいけないものになってますわ。
ちょっと盛り上がっている場合じゃないですわよ。
「そっちの聖女ちゃんもがんばれー!」
いや、そういうことではなく。
「お嬢様! やります!」
いいですわ! サイラカーヤ!
「うらああああ!」
そうそう。
顔を下にむけさせて、肩甲骨の間に掌底をたたきこむ。
それでいいのですわ!
「ぼへえええ!」
ケルシーの口から、逆再生されるかのように揚げパンがでてきた。
まだ咀嚼されていない丸ごとのやつだ。
「次! いきますわ!」
ケルシーを寝かせて、聖女に移る侍女だ。
「ここだあああ!」
聖女の口からも揚げパンがでてくる。
ちょっとした悲鳴が観客からあがった。
さぁみなさん。
今のは見なかったことにしましょうね。
いいですわね?
「はーい!」
よろしい。
それでは一回戦を終了とします。
エーリカとケルシーの二人は脱落ですわ!
勝ち残ったのは、メルトレーザ、ホーウッド、シクステン、ハンブリングの四人ですわ!
「うおおおおお!」
サイラカーヤ。
そのまま二人を連れてきてくださいな。
イザベラ、ニュクス。
エーリカとケルシーをお願いしますわね。
「畏まりました!」
では、気を取り直して二回戦と参りましょう!




