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強制的に転生させられたおじさんは公爵令嬢(極)として生きていく  作者: 鳶丸
本編

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823 おじさん今回の一件に幕を引こうとしてとんでもない事実を知る


 おじさんが陰魔法を解除する。

 イシドラは建物の陰、目立たない場所で魔法を使ったようだ。

 

「先に拘束した男性を見舞いに行きますか」


 んーと意識を集中させるおじさんだ。

 ガイーアに渡したシンシャの魔力を捕捉するためである。

 

 ぱちん、と指を鳴らす。

 

 次の瞬間、おじさんたちはマディ邸にいた。

 いきなり転移してきたおじさんたちに驚くマディだ。

 

「リ、リー様。賊は……」


 と視点をイシドラで止めるマディであった。

 

「問題ありません。ちょっとした誤解から生まれた悲しい事故ですわ。先ほどの男性はどこですの?」


「ガイーアたちが捕縛後、隣の部屋で監視しております。まだ気を失ったままです」


 おじさんたちの会話を聞きつけたのだろう。

 ガイーアが顔を覗かせた。

 

「お嬢……様。ご命令どおりに」


「男性のところに案内してくださいな」


 それが……とガイーアが布で包まれた物をだす。


「念のために持ち物を検査したんですがね、こんな物を持っておりました」


 封が切られた封筒だ。

 悪いとは思いつつ、おじさんは中を確認した。

 

 中にあったのは、母親からの手紙だ。

 参集せよ、という内容である。

 

「……なるほど。とんだ災難でしたわね。オラシオ・ルナルソンですか。家名があるということは元貴族の御方なのでしょう」


 げえ! と声をあげるガイーアだ。

 だが、失態に気づいて自分の手で口を塞ぐ。

 

「まぁ手間が省けましたわ。お母様の知人であるのなら、身元は確かでしょうから」


 手紙を布で包むおじさんだ。

 

「アストリッド、先に屋敷に戻って牛車を呼んできてくださいな」


 畏まりましたと一礼をしてから、アストリッドが退出する。

 

「まだ気を失ったままなのですよね?」


 おじさんの問いにガイーアはコクンと頷いた。

 

 隣室へと移動し、おじさんは男性を見る。

 魔力のよどみはない。

 

 念のために治癒魔法を使っておく。

 恐らく、侍女に吹き飛ばされた影響があるだろうから。

 

「イシドラ、闇魔法を使ったのはこの方ですわね?」


「……はい」


 視線を伏せて答えるイシドラであった。

 

「見たところ魔法は切れていますわね。詳しくは起きてからですが……」


 と、おじさんの言葉が終わらぬうちに、ううんと男性が目を覚ます。

 

「起きたようですわね」


 おじさんも一安心だ。

 男性は辺りをキョロキョロと見回して、大きく目を開いた。

 おじさんを見たからである。

 

「ヴェロニカ様……じゃない? あれ、ここは?」


 少し混乱しているのかもしれない。

 闇の魔法について知ってはいても使ったことはないおじさんである。

 なので、かけられた者がどうなるのか、よくわからないのだ。

 

「オラシオ・ルナルソン殿ですわね?」


 半ば呆けていた男性の視点が合う。

 おじさんをしっかりと見たのだ。

 

 とんでもない美女である。

 自分の知る美女とも似ているが……と思う。

 

「わたくしはリー。カラセベド公爵家の長女ですわ」


「え! これは失礼いたしました」


 寝台から身を起こそうとして気づく男性だ。

 拘束されていることに。

 具体的には、両手と両足が寝台の四つの脚にロープでつながれている。

 

「あれ? なんだ……どうなって?」


「落ち着きなさいな」


 おじさん、すっかり得意になった魔言を使う。

 言霊を魔力にのせる禁呪だ。

 

「状況を説明すると、あなたは闇の魔法をかけられていたのです。そして、ここにいる者を襲撃するために利用されました。わたくしたちはあなたの正体がわかりませんでしたので、目覚めるまで拘束していたのです」


 なるほど、と呟くオラシオである。

 

「今から拘束を解きますので、じっとしていてくださいな」


 おじさんがガイーアに目配せをする。


「ああ……申し訳ありません。私は……その王都に入ってからの記憶がなくて……なんと言えばいいのか」


 イシドラがそっと目をそらす。

 寝台から身を起こし、おじさんの前で膝をつくオラシオだ。


「気にしなくてもいいのですわ。他になにか身体に影響がありますか?」


「いえ……今のところは問題なさそうです」


「もし問題が起こったら相談してくださいな。さて……申し訳ないですが、先ほどあなたの身体検査をさせていただきましたの。お母様からの手紙を持っていたので身元がわかりました」


「いえ……そのカラセベド公爵家の御方に保護されたのは幸運だと思います」


「わたくしはこれから帰宅しますので同行するといいですわ」


「お言葉に甘えさせていただきます」


 と、オラシオは下げていた顔をあげた。

 そして――。

 

「ええと……もしかしてサイラカーヤ・フィスキエ嬢? あ! それにマディ先輩も!」


 オラシオの言葉に首を傾げる侍女とマディである。

 二人とも誰だっけという表情だ。

 

「あはは……覚えてない……のですね」


 オラシオ・ルナルソン。

 侍女とは同級生である。

 そして、マディとは何度か話したこともあるのだ。


 だが、二人ともすっかり忘れているようである。

 表情が暗くなるオラシオだ。

 

 その肩をポンポンと叩く、イシドラであった。

 わかるぞ、という意味なのだろう。

 コクコクと頷いている。

 

「な! な? 忘れることってあるんだよ!」


 そこで調子に乗るのがウドゥナチャだ。

 なははーと声にだして笑っている。

 

「一緒にすんな!」


 ぎん、と睨みつける侍女であった。

 

「んー? あ! 思いだしたわ!」

 

 声をあげるマディである。

 

「確か……魔道具研究会の卒業生集会で何度か顔を見かけたことがあるわね!」


「そう! そうなんですよ!」


 暗い表情がパッと明るくなるオラシオだ。


「ケッ!」


 イシドラの機嫌が悪くなった。

 思いだされたということが、気に入らなかったのだろう。

 

 なんともカオスな状況である。

 おじさんは思った。

 

 もう面倒ですわね、と。

 

「あ! 私も思いだしました!」


 そこで大きな声をあげる侍女だ。

 

「確か……あなたはそう! クレッフェル家の令嬢に言い寄って玉砕したんでしたよね!」


 とんだ黒歴史である。

 それを平然と暴露するなんて、と思わないでもおじさんだ。

 

 かっと目を見開いたオラシオが叫ぶ。

 

「それちがうやつ! 僕じゃない!」


「え? そうでしたっけ?」


 頭にはてなを浮かべる侍女である。


「では、ダンジョン講習のときに失禁したというオラシオ!」


「それもちがう!」


「じゃあ!」


「もういいって。どうせ覚えてないんでしょう? 僕は卒業式のときにあなたに告白したんです!」


 爆弾発言をするオラシオだ。

 おじさんもびっくりである。

 思わず、口に手をもっていってしまった。

 

「え?」


「当然ですけど、相手にされませんでしたけどね! ……あ! 僕はなんてことを!」


 うっかり勢いで喋ってしまったオラシオだ。

 だが、既にもうその言葉は、この場にいた全員が聞いてしまった。

 

 おじさんも含め、ニヤニヤとした顔をしている。

 

 だが、イシドラだけはちがった。

 酷く嬉しそうな顔をして、オラシオに手を差しだしたのだ。

 

「ええと……これは?」


「陰の薄い者同士、仲良くすべき……でしょう?」


「……ちっくしょううううう!」


 心からの叫び声をあげるオラシオであった。


誤字報告いつもありがとうございます。

助かります。

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>「もういいって。どうせ覚えてないんでしょう? 僕は卒業式のときにあなたに告白したんです!」 >「当然ですけど、相手にされませんでしたけどね! ……あ! 僕はなんてことを!」 >だが、イシドラだけはち…
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