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001 おじさん美少女に転生する(強制)


「だから! なんでそんなにゴネるのよ!」


 絶世の美女といってもいい女神が変顔で叫ぶ。

 その相手は何の変哲もないおじさんであった。

 おじさんは異世界への転生を拒否しているのだ。


『なんでまた人生をやり直す必要があるのか。人生なんてものはクソだ』


 おじさんの主張はこうだった。

 女神がどんな提案をしてもいっこうに聞く耳を持たない。

 生前のおじさんは苦労の連続だった。


 毒親で育児放棄というコンボを華麗に決めてくる両親のもとで、おじさんは成人するまでに何度も死にかけた。

 いや本当に心臓がとまっていたこともある。

 成人してからも何かと足を引っ張られた。


 そんなわけでおじさんの人生は苦労に満ち満ちていたのである。


「チート! チートをあげるわ! それに優しい両親も! 家だって裕福なところにするから!」


「だが断る!」


 おじさんの意思は固かった。

 いくら女神が絶世の美女で色仕掛けをしかけてきてもだ。

 そこに本心がないことくらい、苦い思いとともに経験しているのだから。

 そんなおじさんを翻意させるのは、女神にとっても至難の業だったのである。


 結局のところ。

 女神はおじさんの説得を諦めた。

 納得して転生してほしいというのは神の善意なのだ。

 当人の意思など神には関係ない。

 それでもスジを通すのは少しでも納得してほしいからだ。


 しかしおじさんは強かった。

 女神が泣きを入れるほどに。

 だから強制的に転生させたのである。


 それでも女神はおじさんを嫌ってはいなかった。

 むしろ同情していたくらいだ。

 優遇された人生を送りたいと願うものは多い。

 それにまったく(なび)かなかったのだ。

 どれだけ生きることに希望を見いだせなかったのか。


 だから女神は願った。

 おじさんの新しい人生が幸せなものになるように、と。

 そのためにきっちりと約束も守った。

 女神ができることはすべてしたと言えるだろう。


 それがおじさんにとって吉とでるかどうかはわからない。

 だって女神は全知全能ではないのだから。


 その日。

 アメスベルタ王国の三公爵のひとつ、カラセベド公爵家にひとりの女の子が生まれた。

 中の人はおじさんである。

 性別が女の子になったのは女神のご愛敬だった。

 

 リー=アーリーチャー・カラセベド=クェワ。

 そう名づけられたおじさんは公爵家の御令嬢としてスクスクと育っていく。

 そして運命の日が訪れる。


 アメスベルタ王国では七歳になると神託の儀をうけさせられるのだ。

 ほんらいは神からの祝福をたまわるための儀式である。

 ただ女神は張り切りすぎてしまったのだ。

 祝福でも加護でもなく、神の愛し子という意味で神子とした。

 その神威は強かった。

 いや強すぎたのである。

 おじさんが前世の記憶を取り戻してしまうほどに。


 強制的な転移という失態を取り返そうとした。

 女神に同情がなかったと言えば嘘になる。

 そのため全力でがんばったのだ。

 空回りして逆にやらかしてしまうパターンである。

 

 おじさんは自分が超のつく美少女であることに混乱した。

 そして転生させられたことを理解して、こっそりと涙したのである。




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