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強制的に転生させられたおじさんは公爵令嬢(極)として生きていく  作者: 鳶丸
本編

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412/1208

408 おじさんのいない聖樹国で宿敵に出会うケルシー


 聖樹国の氏族会議が終わってから数日が経過した。

 ダルカインス氏族は準備に追われて、慌ただしい日々を過ごしている。

 

 なにせケルシーが王国に留学するのだから。

 氏族長であるハルムァジンは、かつてないほどの急がしさに目を回しかけていた。

 

 公爵家からは一切合切の面倒を見ると言われている。

 

 しかし、対価なしにそれを受けることはできない。

 ただ施しを受けるのは矜持に反するのだ。

 

 不足するかもしれないが、できるだけの対価は支払う。

 それが対等な立場だと考えるのだ。

 

 だが、ダルカインス氏族だけの資産では賄えない。

 そこで各氏族に融通をしてほしい旨を氏族会議でも訴えた。

 

 大氏族長もハルムァジンの考えに賛成する。

 結果、各氏族から特産品や余剰品が届くようになった。

 

 その返礼や対応に追われていたのだ。

 さらに言えば、この品を持って港町でも取引せねばらない。

 

 さらにやることは増すが、ひとつずつ解決していく。

 それが結果的に近道だと信じて。

 

 氏族全体が慌ただしい雰囲気になっている最中。

 ケルシーは平常運転だった。

 お供のクロリンダを連れて、村の外に出て修業をする。

 

 学園では魔法の技能が問われると聞いていたからだ。

 元来、エルフは魔法との親和性が高い種族である。

 特に風の精霊との相性は抜群だ。

 

「んー風弾の精度は悪くないんですけどねぇ……」


 クロリンダがケルシーの放った魔法を見て感想を言う。

 納得のいかないことがあるのだ。


「歯切れが悪いわね!」


 ケルシーとしてはよくできていると思う。

 

「いえね、正直に言えばよくできていると思うのですよ。ですが、御子様のあの魔法に比べると……」


「そんなのクロリンダでも無理でしょうが!」


 そう。

 なにげにクロリンダは魔法巧者なのだ。

 

「いや、それは確かにそうなんですけどね。御子様は別格としてもですよ、御子様の御母堂もかなりの実力者ですよ」


「え? そうなの?」


 心の底から驚いた表情になるケルシーだ。


「気づいていなかったのですか? あの御方、恐らくは氏族長よりも強者ですよ」


「え? 嘘? お父様より?」


 ケルシーの言葉に、大きく息を吐くクロリンダだ。

 

「と言うかですよ。イトパルサの代官邸でお会いした公爵家のご当主様もかなりの腕前です。御子様の陰に隠れておいでですが、どこにだしても恥ずかしくない猛者ですよ」


「へ? 嘘でしょう?」


「……お嬢様はその辺がまだまだですわね。なんとなくピーンとくるものです。そもそもですよ、あの侍女からしてもうおかしいんですから」


「う……嫌なことを思いださせるわね」


「あれはとてもよくないものでした」


 二人して躾という名の調教を受けたことを思いだす。

 あれは確かによくないものだった。

 一気にテンションが下がる二人だ。

 

「……お嬢様、ちょっと実戦にでてみますか?」


 気分を変えるようにクロリンダが提案する。

 聖樹国にも魔物はいるのだ。

 ダンジョンだってある。

 

「いいわね! どこ行くの!」


「そうですわね、とりあえず……」


 と、クロリンダの前に小さな旋風が起こる。

 そこに姿を見せたのは白い鴉であった。


 風の中級精霊獣だ。 

 クロリンダの肩にのって、かぁかぁと鳴く。

 

「あら? そうなのですか?」


 意思の疎通は図れているようだ。

 クロリンダが白い鴉の鳴き声に頷く。

 

「お嬢様、予定変更です。妖精の里に行きましょう」


「へ? 妖精の里?」


 ケルシーが首を傾げる。


「先日、御子様がお作りになった里です。うちの子が行きたいと言ってます」


「んー。わかったわ。じゃあ行きましょうか」


 ケルシーが納得したことで、妖精の里にむかうのであった。


 はぁはぁと息を切らせるケルシーだ。

 聖樹の上の方まで登ってきたのだから。


 先日までとは違い、ラバテクスがむしゃむしゃと元気よく聖樹の葉を食べる姿がちらほらと見える。


「ちょっと! ぜぇぜぇ……リーみたいに転移ができるんじゃないの?」


「できませんよ。あれは御子様だからです」


 しれっと答えるクロリンダだ。

 こちらは肩で息をするような無様な姿になっていない。


「ここからなら、うちの子が転移できますから」


「そうなの? 信じてもいいのね? もうこれ以上は登りたくないんだけど!」


「お嬢様は魔法の前に体力訓練からですね」


「げえ! なんでそうなるのよ!」


 そんな会話を無視するように、風の中級精霊が転移を発動した。

 転移した先は古い方の妖精の里である。

 

 木々が生い茂り、花々が咲き乱れる場所だ。

 

「へぇ……きれいな場所ね」


 ケルシーが素直な感情を漏らす。

 クロリンダの肩にとまった白い鴉が鳴く。


「お嬢様。ここからもう一度移動するそうです」


「え? ここがそうじゃないの?」


 ケルシーの言葉に白い鴉が翼を広げて威嚇する。

 

「ふふ……文句言うな、だそうですよ」


「うっさいわね! やるっての? このあたしと!」


 シュシュと拳を突きだすケルシーである。

 

「あーエルフじゃーん!」


 そんなことをしていると妖精たちが集まってくる。

 

「おーエルフ、土産物はー?」


 無遠慮な妖精たちにケルシーはとまどってしまう。

 

「なにこの生意気な生き物は?」


「妖精ですね。最近はあまり見かけなくなっていましたけど、昔は氏族の里にもいましたのよ」


 クロリンダが解説する。

 

「へぇそうなんだ、このちっこいのが!」


 オマエもちっこいだろー。

 あちこち、ちっこいだろー。

 つうか、甘い物よこせよー。

 

 歯に衣着せぬ物言いの妖精たちにケルシーが切れた。

 

「ぬわんですってぇ! ちっこいって言うなー!」


 自分のことはすっかり棚にあげている。

 妖精たちと追いかけっこを始めるケルシーだ。

 

 ぷーくすくす。

 なんで風弾うったの? ねぇねぇ当たると思ったあ? ざーんねんでしたー。

 ざまぁ! ねぇねぇどんな気持ち? 今、どんな気持ち?

 

「むきぃいいい! 天罰よ、天罰をくらわしてやるわ! へぶし!」


 叫ぶケルシーの後頭部に風弾が当たる。

 

 きゃはははは。

 ばっかじゃなーい?

 だめだめだね。

 

 下を向き、ぷるぷると震えるケルシーである。

 

「お嬢様、妖精たちのことは放っておいた方が……」

 

「クロリンダ! ここはあたしに任せて先に行きなさい! ここはあたしが引きうけたわ!」


 言っていることはまちがってない。

 だが、なにか違和感を覚えるクロリンダだ。

 

「本当に先に行ってもいいのですか?」


「ええ! ここはあたしに任せなさい! この羽虫どもを全滅させたら後を追うわ!」


 やはり違和感が拭えないクロリンダ。

 だが、そこまで言うのなら仕方がない。

 

「では、お先に」


 と、クロリンダは白い鴉に案内されるままにその場を離れた。


「ふっ……行ったわね。まったく世話の焼ける。さぁここからは遠慮なくいくわよ!」


 こうしてケルシーと妖精の不毛な戦いが始まった。

 

 

 数時間経過しても、まったく追いかけてこないケルシーだ。

 さすがに心配になって戻ってみるクロリンダである。

 

 そこには花畑の中で、大の字になって眠りこけているケルシーがいた。

 妖精の魔法で眠らされてしまったのだろう。

 

 鼻の穴には花が何本も突き刺さっている。

 顔にも落書きがされていた。

 

 その姿を見て抱腹絶倒するクロリンダであった。


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