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強制的に転生させられたおじさんは公爵令嬢(極)として生きていく  作者: 鳶丸
本編

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192 おじさん祖母からの依頼をうける


 おじさんのリサイタルは公爵家邸にある種の衝撃を与えた。

 まったく新しい形の音楽の楽しみ方である。

 演奏をする者だけではない、観客もまた一体になって楽しめるのだ。

 それがウケた。

 

 当然だがすぐに祖母の耳にも入る。

 祖母は演奏そのものよりも、魔楽器や衣装の方に興味を持った。

 自分でも魔楽器をいじりながら、ギュインギュインいわせている。

 

 弟妹たちはおじさん仕様の服を作ってもらってご満悦だ。

 アミラとソニアの二人は、シンシャが奏でるおじさんの曲にあわせて踊っている。

 それがとても愛らしいのだ。


 弟はまだ幼いながらも、早くも目覚めてはいけない力に目覚めそうである。

 服装自体は、男物だけど黒で統一されたものなのだ。

 それでもおじさんがメイクまで施したのもあるだろう。

 なんだか怪しげなポーズをとりつつ、“邪眼の力をナメるなよ”と呟いていた。


「リー、この魔楽器はいいね」


 祖母から声がかかる。

 

「うちで売りだしてもいいかい?」


「仕様書は明日にでも提出しますわ」


 打てば響くやりとりに満足したのか。

 祖母は大きく頷いた。

 ちなみに祖母もゴスロリ仕様の服を着ている。

 

 祖母といっても美魔女のような外観なのだ。

 意外とシックなタイプのゴスロリ服が似合っていた。

 

 そんなこんながあった翌日である。

 朝食を終えて、サロンでのんびりするおじさんだ。

 

 さて、どうしたものかとおじさんは思う。

 なんだかサロンの中にいるのも少し飽きてきたのだ。

 

 選択肢としては二つある。

 エポナと敷地内を散歩するか、騎士たちの訓練場に顔をだすか。

 まだ陽は高い。

 両方をしてもいいだろう。

 

 少し身体を動かしたい気分なのである。

 

 そんなことを考えていたおじさんのもとに従僕が姿をみせた。


「お嬢様、ハリエット様がお呼びです」


「お祖母様が? 領主館の方に行けばよろしいのですか?」


「はい。至急とのことです」


 なにかが起こったのか。

 祖父に関することでなければいいのだけど、とおじさんは思った。


 素早く用意をして侍女と従僕、護衛騎士たちを引き連れて領主館にむかう。

 おじさんとしては、エポナに乗って行ってもよかった。

 だが町が混乱するとのことで、おとなしく馬車で移動だ。

 

「リー、休んでいるところ悪いね」


 領主館の執務室に入ると、祖母が書類から目をあげてねぎらってくれた。

 

「どうかなさいましたの?」


「少し仕事を手伝ってほしくてね」


「お仕事ですか?」


領都(ここ)から南に馬車で三日ほどの場所にタルタラッカって村があるんだけどね。そこに行ってほしいのさ」


「それはかまいませんが……何を目的に?」


 おじさんは少し首をかしげてみた。


「小型の魔物が繁殖しているらしくてね。駐屯している騎士と自警団じゃ手に負えないそうなんだよ」


「なるほど。討伐してくればいいのですね」


 祖母がこくりと頷いた。

 

「頼むよ、リー」


 本来ならおじさんが出張るような話ではない。

 公爵家の騎士たちが、派遣されればケリがつきそうなものだ。

 しかしそこには事情がある。

 

 まず祖父が騎士たちの半数以上を連れて別の場所で発生した魔物の討伐にいっている。

 さらにはおじさんが競馬場を作ったことで、騎士団も対応を迫られているのだ。

 

 そこへきての討伐依頼である。

 他の地域からの陳情なども考えると、フリーのおじさんを動かすのがベターだと判断されたのだ。

  

「では本日中にでも出発しますわ」


「頼んだよ。リーの判断で動いていいからね。なにかあれば私が後始末するさ」


「メルテジオたちはお祖母様にお任せしても?」


「もちろんさ。うちの使用人たちもあの子らを気に入っているからね。連れて行かれる方が寂しがるんじゃないか?」


 冗談めかして言う祖母に、おじさんは微笑んでみせる。

 

「ではそのように」


 祖母の執務室を後にすると、おじさんはゴトハルトに指示をだす。


「出発は本日中。急ぎになりますが準備を整えてくださいな」


「承知いたしました」


 ということで。

 おじさんは騎士たちとタルタラッカにむかったのである。

 

 領都をでてからはエポナに乗り換える。

 初夏の風が心地いい。

 

「お嬢様」


 ゴトハルトが声をかけてくる。


「道中の魔物退治は我々にお任せください」


 おじさんは手をだすなということだ。


「すべてお任せしますわ。ゴトハルトはタルタラッカのことはご存じなの?」


「湯が湧く村として有名ですな」


 その一言におじさんは、クワと目を大きくさせた。


「な、なんですってええええ!」


「どうかなさいましたか、お嬢様」


「温泉、温泉があるんですの?」


「はい。ただ毒の木が多い土地でございまして、あまり活用されていないのです」


「……毒の木ですか」


 そんなやりとりをしつつ、おじさんはタルタラッカへとむかうのであった。


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