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強制的に転生させられたおじさんは公爵令嬢(極)として生きていく  作者: 鳶丸
本編

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174 おじさん港町アルテ・ラテンを出発する


 豚鬼人(オーク)の集落を潰したまではよかった。

 しかしおじさんの魔法によるオマケがついてきたのだ。

 炭酸泉という特産品になりうるものである。

 

 ちゃっかりとおじさんは個人で楽しむ分と許可を取った上で確保していた。

 その実、大穴の奥に簡易的な転移魔法陣を組むという荒技を使っていたのだ。


 そして用意した大樽に対となる魔法陣を刻む。

 すると魔力を流せば、汲めども尽きぬ炭酸水の樽となったのである。

 それを三つ用意しておいた。

 一つは祖母へ、一つは母へ、もう一つは自分用である。

 

 建国王の刻んでいた魔法陣を参考に、トリスメギストスの協力あってのことだ。


 その夜。

 フレメアから、領都には一緒に行くと宣言されてしまう。

 色々と話し合いをすることがあるそうだ。

 おじさんとしても反対する理由はなかった。


 食事も終わり、サロンの中でおじさんたちは寛いでいる。

 ただ確認すべきことはあるのだ。

 

「ゴトハルト、準備は既に終わっていますの?」


 隊長がうやうやしく返答する。


「万端無事に」


「ご苦労様ですわ」


 満足そうにおじさんは頷いてみせる。

 そこへ弟妹たちの声が聞こえてきた。


「ふーちゃん、それじゃダメえ」


「いや、この角度でいけるはず……ああ!」


「ほらぁ、のこったでしょ!」


「す、すまない」


 妹はすっかりフレメアに懐いていた。

 いやおじさんの目には、フレメアの方から妹に近寄っていたように見える。

 今やふーちゃん呼びをする仲なのだ。

 

「ゴトハルト、では明日もまた頼みます。それと虫除けの香ですが、残っている分はこちらの騎士たちに渡しておいてくださいな。明日にでも補充しますから」


「かしこまりました」


 そう。

 炭酸泉の件で、野営をしている騎士たちもいるのだ。

 手持ちの虫除けの香がなかったおじさんは、忘れないうちに指示をだしたのである。

 

「わたくしは寝室に戻ります」


 ゲームで盛り上がるサロンから、おじさんは退室する。

 寝室にて、あれこれと作業をしていると弟妹たちも戻ってきた。

 ひとつのベッドで四人そろって寝る。

 弟は少し渋っていたが、おじさんのお願いを断れなかったのだ。

 

 明けて翌日。

 領都を出立する前に、おじさんは少しだけ早起きをした。

 市場を自分の目で見ておきたかったのだ。

 

 ハムマケロスとはまた違う品揃えである。

 特におじさんの目を引いたのは香辛料であった。

 水が豊かで植物が育つ環境が整っているのだろうか。


 ハムマケロスでは見かけなかった香辛料もあったのだ。

 種類が豊富で、価格もさほど高くない。

 そんな香辛料を大人買いしていくおじさんである。

 

 買い物を終えて、ホクホクとした顔でおじさんは領主の館に戻ってきた。

 朝食はとらずに、いつものように馬車に乗りこむ。

 今日はお客さんであるフレメアも一緒だ。

 

 もはや馬車の荷室とは言えない部屋を見て、豪快な女傑も言葉を失う。

 それでも馬車は進んでいくのだ。

 

「ふんふんふん、シカの……おっとこれ以上はいけませんわ」


 鼻歌交じりにおじさんは荷室内で調理をしていた。

 だって食べたかったのだ。

 豚バラの煮込みが。

 別名、東坡肉(とんぽーろー)である。

 

 お誂えむきに八角のような香りがする香辛料と、山椒もどきも手に入ったのだ。

 そして本命はフレメアが美味いという女王豚鬼人(クイーン・オーク)の肉である。

 

 フレメアから分けてもらった女王豚鬼人(クイーン・オーク)は大きかった。

 そもそも三メートル超の体長を誇る魔物なのだ。

 可食部位がとにかく多い。

 

 そこでおじさんは魔法を使って、手際よく調理していく。

 魔力のムダ使いなどという野暮を言うものはいなかった。

 

 炭酸水を使って豚肉を茹で、調味料で味つけして煮込む。

 とんでもなく食欲を誘う香りが荷室の中をみたしていた。

 

 おじさんはせっせと調理を進めていく。

 もちろん自分の分は丼にするつもりだ。

 また弟妹たちには、平べったい小判型の中華まんの皮を用意していく。

 中にお肉を挟んで、二つに折りたたむだけのお手軽なやつだ。

 

「できましたわ!」


 おじさんはお手製の東坡肉(とんぽーろー)を皿に盛る。

 けっこうな量を作ったので、侍女たちや騎士にもお裾分けをした。

 

「さぁいただきますわよ!」


 おじさんは自慢の長粒種で東坡肉(とんぽーろー)丼を作っていた。

 歯が要らないのでは、というくらい柔らかい。

 そして滋味の深い味である。

 

 皮つきの豚バラ肉を使ったので、脂の甘みがスゴい。

 だがこってりとした下品な味ではなく、さらりとして上品な味なのだ。

 これが女王豚鬼人(クイーン・オーク)ゆえの味なのだろう。

 

 おじさんにとっても上デキな味だった。

 

「美味いっ!」


 フレメアが叫び、大ぶりにカットした肉に食らいついていた。

 見れば、弟妹たちは無言で口を動かしている。

 本当に美味しいものを食べると無言になるのだ。

 

 結果はいわずもがなである。

 弟妹たちはお腹をポコンと膨らませて、寝転がっていた。

 苦しそうな呻き声とは裏腹に、その表情は幸せに満ちていたのである。


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― 新着の感想 ―
[一言] 弟君もやがて男の娘や妹になるつもり?ならいまから慣れておいた方がいいのでは?(あれ……?
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