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強制的に転生させられたおじさんは公爵令嬢(極)として生きていく  作者: 鳶丸
本編

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1251/1255

1217 おじさんは今日こそは学園に行けるのかい?


 明けて翌朝のことである。


「つかれるーほど恋してもーさんぶんのいちーも伝わらなーい」


 暢気に歌うおじさんだ。

 なかなか上機嫌であった。

 

 季節は冬のまっただ中。

 澄んだ空気が心地いい。

 

 肌寒さを感じるが冬用の服を着ていれば、さほどでもないのだ。

 魔道具として作った懐炉も人気である。

 

 この懐炉の魔道具はありそうでなかった。

 個人用の暖房器具として聖女に渡したのだが、それきっかけで広がったのだ。

 

 今や公爵家の使用人や騎士たちは常に懐に忍ばせている。

 なんなら魔道具を専用のホルダーに入れて、背中にもつける者がいた。

 革紐を使って固定できるようにしているのだ。

 

 他にも色々と暖房器具を作ったおじさんである。

 しかし、身体を動かして働く者たちには、この懐炉がちょうど良かったらしい。

 

 現状では急ピッチで量産体制の確保しているところだ。

 これは売れる。

 祖母がそう睨んだからだ。

 

「お嬢様、本日はどうなさいます?」


「ケルシーも元気になりましたし、学園に顔を出します。ここ数日は休んでいましたしね」


「承知しました。従僕にも伝えておきます」


 侍女がおじさんの私室から出て行く。

 今日も鏡には超絶美少女が映っている。

 

 んにーと笑顔を作ってみるおじさんだ。

 だからどうということはない。

 ただ、やってみただけである。

 

「うぇいうぇいうぇーい!」


 蛮族たちは朝から元気だ。

 昨日はお仕置きをされたというのに。

 

「おはよー!」


 ケルシーの声が聞こえる。

 すれちがった使用人の誰かに挨拶しているのだろう。

 

 挨拶をされて嫌な思いをする人間はいないものだ。

 挨拶を返す朗らかな声も聞こえてきた。


「リー!」


 おじさんの私室に入ってくるケルシーだ。

 ぐるぐると周りをながら、口を開く。

 

「今日は学園に行くの?」


「一緒に行きましょうか!」


 ニコリと微笑んでみせる。

 うぇーい! とケルシーが声をあげた。

 

「どこかに不調は……なさそうですわね」


 おじさんの目にもケルシーの不調は見えない。

 即席だったが、あの治癒魔法は巧く機能したようである。

 

「お腹すいたー! ご飯食べにいこ!」


 おじさんの手を引くケルシーだ。

 それにつられて、おじさんも食堂に赴く。

 

 食堂には聖女がいた。

 おじさんたちが姿を見せると、手をとめる。

 

「悪いけど先にいただいてるわよ! なんかお腹空いちゃってさー」


「わかるー! めっちゃお腹すくよねー」


 ケルシーがさっさと席につく。

 従僕たちは苦笑いしながら、給仕をしていた。

 

 はた、と思いつくおじさんだ。

 昨日の魔法はかんたんに言えば、血流を促進して体調を良くする効果がある。

 言い換えれば、極端に代謝がよくなるということ。

 

 それで胃腸の調子が良くなったのかもしれない。

 しらんけど。

 

「エーリカ、なに食べてんの?」


「これなー。ラーメンと肉まん!」


 ずびずばっと麺を啜る聖女だ。

 ちょっと濃いめのスープをごくごくと飲む。

 せいろから、むんずと肉まんを掴んで、豪快に口へ。


「うまー! うままー!」


 豪快に食べる聖女だ。

 それを見て、ケルシーも我慢できなくなったのだろう。

 今か、今かと配膳されるのを待っている。


「お父様とお母様は?」


 近くにいた侍女に聞いてみるおじさんだ。

 

「お二人はサロンに。ラケーリヌ家のデミアン様が訪問されまして、今はご歓談中かと」


「お祖父様が? ……なるほど。ああ、伝えていなかったと思いますが、温泉郷についてはうちの管理だけでは大変なので、王家や他の公爵家からも人をだしてもらうように交渉しておきましたので。アドロスかミーマイカに伝えておいてくださいな」


 畏まりました、と頭を下げる侍女だ。

 

「お嬢様はいかがなさいます?」


「そうですわね。コーヒーを用意してくださいな。あとはパンと果物だけで十分です」


 おじさんはあまり食べなくてもいい。

 燃費が良くて、あまりお腹が減らないのだ。

 

 なので、蛮族たちが気持ちよく食事するのを眺めるのが好きなのである。

 

「すぐにご用意いたしますわね」


 もっしゃもっしゃと朝からかきこむ蛮族たち。


「姉さま、ちょっといいかな」


 食堂に顔を見せたのは弟である。

 あら、と思うおじさんだ。

 

「どうしたのです?」


 スッと立ち上がるおじさんだ。

 なにか相談ごとでもあるのだろうか。

 

「うん。ソニアの具合が悪いみたいなんだけど」


「ソニアが?」


 こくんと首を縦にふるメルテジオ。

 その頭にそっと手を置くおじさんだ。

 

「わかりました」


 メルテジオの手を握るおじさんだ。

 蛮族たちに声をかけようと思ったが、食べることに夢中である。

 

 ただ、おじさん付きの侍女が戻ってきた。

 ちょうどいい、と声をかけるおじさんだ。

 

「サイラカーヤ、ソニアの具合が悪いようなので見に行きますわ」


「――ちょうどそのことをお伝えしようと思っていたのです」


 心配そうな弟を連れて、妹の部屋へ。

 

 けほけほっと咳きこんでいる妹だ。

 顔色も余りよくはない。

 

「……ねーさま」


 おじさんを見て、ホッとしたような顔になる妹。

 不安だったのだろう。

 

「ソニア、大丈夫ですか?」


 と、言いながら妹の頭をなでる。

 

「……しんどい」


 そうですわね、と魔法を発動するおじさんだ。

 蛮族たちにかけた治癒魔法である。

 

 妹はどうやら風邪を引いたらしい。

 ほっぺが赤くなっているから、明らかに熱がある。

 なので自然治癒力を高める魔法が都合良かったのだ。

 

「メルテジオ、ソニアは風邪のようですわね」


「風邪か……よかった」


 ホッとする弟だ。

 なにか重い病気じゃないかと考えていたのである。

 風邪なら、さほど心配する必要もない。

 

「そうですわね。メルテジオ、ひとつ頼まれてくれますか」


 妹の場合は発熱やだるさがでているタイプだ。

 それに少しの咳。


「なに?」


「厨房に行って、この実をすりおろしてもらってきてくださいな」


 宝珠次元庫から果物をひとつだすおじさんだ。

 オクターナからもらったものである。

 

 大きさと形的にはみかんが近いか。

 少し大きめのみかんといったところだ。

 ただ触った感じはリンゴのようである。

 

「うん! わかった。行ってくる! 姉さま、ソニアは大丈夫だよね」


「ええ。大丈夫ですわ!」


 と、メルテジオにも治癒魔法をかけておくおじさんだ。

 念のために免疫をあげておいた方が良いと思ったから。

 

 弟が部屋から出て行く。

 さて、とおじさんは再び魔法を放つ。

 部屋の空気を浄化したのだ。

 

「あなたたちにも魔法をかけておきましょう。風邪が屋敷の中で流行っては大変ですからね」


 と、妹の世話をしていた侍女たちに魔法をかける。

 

「ソニア、メルテジオが戻ってきたら、ゆっくり寝ましょう」


「ねーさまもいっしょにいてくれる?」


 甘えたいのだろう。

 病気のときは心細くなるから。

 そんな気持ちはよくわかる。

 

 おじさんは誰にも頼れなかった。

 誰もが見向きしてくれなかった。

 

 だから――妹の頭をなでる。

 一緒にいてあげます、と。

 

 学園は休むことにする。

 今日は妹のそばにいると決めたのだ。

 

「サイラカーヤ」


 侍女の名を呼ぶ。

 こくんと頷いて、侍女は部屋を出て行った。

 おじさんの意図を察したのである。

 

 暫くして弟が戻ってきた。

 手には器を持って。

 

「ありがとう、メルテジオ。ご苦労様でした」


「うん。ソニアのことはボクも心配だから」


 弟も妹の頭をなでる。

 目を細める妹だ。

 

「にーさま、ありがと」


「いいよ。早く元気になりなよ」


 と、目配せをしてから部屋を出る弟であった。

 ほぼ入れ替わりで蛮族たちの声が響いてくる。


「そーちゃん!」


 聖女とケルシーがドタバタを部屋に入ってくる。

 ぽっこりとお腹が膨らむほど食べてきたのだろう。

 

「……けるちゃん、えーちゃん」


「リー大丈夫なのよね?」


「ええ、風邪ですからすぐに治りますわ」


「そっか」


 聖女が頷いた。

 そして――むにゃむにゃと小さく呟いて手をかざす。

 聖女の手がぺかーと光った。

 

「おお! なんだこれ!?」


「むふふーん、聖女が使えるというなんとかよ!」


「なんとかってなんだ!?」


 ケルシーのツッコミはもっともである。

 

「ま、細かいことはいいじゃない。なんか元気になあれ的なやつよ」


「なら、あーしもやる!」


 はいやーと手をだすケルシーだ。

 その手も光った。

 

「おお!? 二号もできるの?」


「できらあ!」


 ふふーんと笑うケルシーだ。

 

「……よかったですわね、ソニア」


「……うん。げんきになる」


 妹の頭をなでてやる。


「ところで、リーの持っている器の中身ってなに? すっごくいい匂いなんだけど!」


「なんだけど!」


 食に関しては目ざとい蛮族たちであった。


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