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強制的に転生させられたおじさんは公爵令嬢(極)として生きていく  作者: 鳶丸
本編

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1211 おじさんの母親はとっても格好良かったようだ


「お母様が婚約?」


 おじさんは驚きで目を丸くしていた。

 その様子に軽く笑うヴァネッサだ。

 

「正確には婚約の申し込み、ね」


「いったい何がちがうのですか?」


 なんとなくイメージはできる。

 が、きちんと知っておこうと思うおじさんだ。

 

 おじさんの場合はかなり特殊だった。

 なにせ国王夫妻とカラセベドの当主夫妻が兄弟・姉妹だったから。

 そら婚約の話もスムーズにいくだろう、と。

 

 血統的にどうなのか、とは思う。

 あまりにも血が近すぎるから。

 

 ただ、何代も重ねていくわけではなく一代に限って、だ。

 となると、そこまで悪影響は出ないのかもしれない。

 専門家ではないおじさんにはその程度しかわからないわけだ。

 

「そうね……」


 ちらりとヴァネッサはハリエットを見た。

 こっちで説明をしてもいいか、ということだ。

 了解だと言うように、ハリエットが首を縦に振る。

 

「一般的に貴族の結婚って好きにはできないのよ。陛下の裁可が必要になるの」


「そうなのですか」


「特に私たちみたいな大貴族だとね、色々と影響があるものだから」


 確かに言われてみれば、そうかもしれない。

 あと王家の権威に箔をつけることもできるだろう。

 

 婚姻そのものを設定するのではない。

 あくまでも王家が認可を与えるという形をとっているから。

 

 恐らくよほどのことがない限りは、ここで与えないとはならないはずだ。

 まったくのノーチェックでもないだろうが……。

 

「ま、フィルノートの当主が強か、いえ悪知恵を働かせてたのよね」


 ヴァネッサの言葉におじさんは首を傾げた。

 どういうことでしょう? と。

 

「なに同時に王家にも手紙をだしていたのさ。フィルノートとラケーリヌの間で婚約話が進んでいるから、裁可をくれとね」


 ハリエットが苦笑しながら言う。

 そう言えば、フィルノートというのはカラセベド公爵家の……。

 

「お祖母様もご存じなかったのですか?」


「ああ――そうだね。知らなかった」


 少し強い口調になるハリエット。

 思いだすに、腹立たしいといったところだろうか。

 

「ん? あらら? お祖母様、うちに連なる伯爵家って……」


「ま、それが答えさね、リー」


 ああ――と納得するおじさんだ。

 ヴァネッサを見る。

 

「……続きが聞きたいですわ」


 孫娘の要望に応えて、ヴァネッサは口を開いた。

 

 ――王城である。

 

 婚約の件で先代の国王に喚び出されたのだ。

 ラケーリヌの当主であるデミアンと当時者のヴェロニカ。

 それにもう一方の当主、ラムザウアと嫡男のザリオ。

 

「……ふむ。随分と両者の言い分が食い違っておるな」


 先代の国王が口を開いた。

 ラケーリヌは初めて聞いたことだと言う。

 他方のフィルノートは婚約の話は進んでいると言うわけだ。

 

「お恐れながら、もう既に我らは婚約がなったものと思っておりました」


 しれっとフィルノートの当主が言う。

 ――ラムザウア。

 どうにも腹芸が得意なのだろうか。

 

「フィルノート卿、こちらはその言い分を飲めんのだよ。卿からの手紙が届いたその日のうちに、こちらもカラセベドに確認をとった。しかし、セブリル殿も聞いておらんとのことだったぞ」


 デミアンがまずは責め立てる。


「主家にお伺いを立てるのは、あくまでも慣習でしかありませぬ。王国の法として定められたものではありますまい。それにうちの息子たっての要望でしてな。どうもヴェロニカ様に一目惚れをした、と」


 が、軽くいなすラムザウアだ。

 そも本来であれば、領地にいるはずの彼ら。

 なぜ、こうも都合良く王都にいるのか。

 

 彼らは偶然だと言い張った。

 そろそろ代替わりを考えており、その相談を主家にしに王都にきたのだ、と。

 

「どこでヴェロニカに会ったというのだ?」


「学園の入学式ですよ、義父上」


 ザリオがさらっと義父呼ばわりをした。

 そのことにイラッとくるデミアンだ。

 だが――ここは御前である。

 

 怒鳴りつけるわけにもいかない。

 

「入学式? そなたは学園生ではないではないか?」


「うちの縁者が王国の学園に入学することになりましてね。その付き添いで私が王都まで訪れていたのですよ」


 ニヤニヤとするザリオだ。

 どうにもこの若者が気に入らない。

 そう思うデミアンだ。

 

「ふむ……」


 王が口を開こうとしたときだった。

 ヴェロニカがスッと立ち上がる。

 

「陛下、私からひとつ提案がございます」


「ほう……聞こうか」


 軽く会釈をしてヴェロニカは、フィルノートの二人に身体を向けた。


「決闘を申し込みますわ!」


 な!? と驚きの声をあげたのはフィルノートの二人だけではない。

 それこそデミアンも、国王も意外な言葉に驚いたのだ。

 

「そこの者たちはどうも言を弄するばかり。私、貴族同士で互いに譲れぬものがあるというのなら決闘で決着をつけるとならいましたわ。それにまちがいはないですよね?」


 魔力を少し開放して圧をかけるヴェロニカだ。

 

「……確かにそれはまちがいではない」


 が、それを言うならここじゃなくて良かったと思うデミアンだ。

 なんのために王が自ら裁可をくだすのか。

 決闘で始末をつけるのなら、王は不要だという話にもなる。

 

「ふはははは」


 緊迫した場に笑声が響いた。

 その源となっていたのがザリオだ。

 

「ヴェロニカ殿。もしや私を相手に決闘と仰せなのでしょうか?」


「……」


「我がフィルノートは代々武門の家。私もこう見えて対校戦の代表にも選ばれるほどの実力者なのですよ!」


「……バカね。あんたに売ったケンカじゃないのよ」


「は?」


 またもや場にいる全員を驚かせるヴェロニカだ。

 

「私はフィルノートにケンカを売ったのよ! 潰す、とね」


 ヴェロニカがさらに魔力を高める。

 ばちちちと空気が弾けた。

 

「楽に死ねると思わないでほしいわね。ここまで侮辱されたのは初めてなのだから! 皆殺しにしてやるわ!」


「ちょ、ヴェロニカ!」


 デミアンが娘の袖を握る。

 とりあえず膝をつけ、ということだ。

 陛下の御前なのだから。

 

 だが、その手を振り払ってヴェロニカは国王を見た。

 

「よろしいでしょうか、陛下。裁可をお願いしますわ」


 きれいなカーテシーをばちこんと決める。

 そんなヴェロニカを見て、国王は笑った。

 腹の底から笑えたのだ。

 

「いいだろう。決闘の規則は知っておるな。中途半端に幕を下ろすことなどできんぞ?」


「もちろん、覚悟の上ですわ。王国貴族の誇りにかけて、陛下、私は心の底から決闘を望んでおります」


「よかろう、ならヴェロニカの提案した決闘を許可する!」


「陛下! そんな無茶な! 決闘などと時代遅れな!」


 ラムザウアが抗議の声をあげた。

 だが、国王は一瞥して言う。

 

「王国貴族に古いも新しいもない。我らはその誇りを汚されれば、それを雪ぐために戦う。建国王陛下の御世から変わることはない真理ぞ」


「しかし! 婚約をする者と決闘など前代未聞では……ぶはあああ」


 ラムザウアが吹き飛ぶ。

 ヴェロニカがやったのだ。

 魔法で。

 

「ちょ! なんで魔法が!」


 使えるの? とは口にしないデミアンだ。

 ここは謁見の間。

 

 王が姿を見せる場所では、気軽に魔法は使えないのだ。

 そういう魔法具が設置されている。

 

 だが――。

 

「決闘が受理されたとは言え、ここは御前。汚らわしい血で汚す気はないの。良かったわね、少しだけ生きる時間が延びて」


 ――魔王。

 そう呼ばれるのに相応しい貫禄であった。

 まだ十四才なのに。

 

「へ、陛下! どうか、どうかご再考を!」


 ラムザウアが叫ぶ。

 が、謁見の間に配備されていた騎士たちが拘束した。

 息子のザリオも同じくだ。

 

「では、明日! 騎士の訓練場にてヴェロニカとフィルノートの決闘を執り行う!」


 国王が宣言する。

 そのことに頭を下げるラケーリヌの親子だ。

 

「畏まりました。王国貴族としての矜恃をご覧いただきたく思いますわ」


 ヴェロニカの言葉に、再び笑い声をあげる国王であった。


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