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強制的に転生させられたおじさんは公爵令嬢(極)として生きていく  作者: 鳶丸
本編

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1181 おじさんは聖女たちのサプライズイベントに驚く


 猫耳祭りは無事に終わった。

 偏におじさんが参加しなかったからである。

 

 ただ、おじさんはおじさんで楽しめた。

 御令嬢たちが猫耳をつけて、きゃっきゃうふふとしていたのだから。

 

 ちなみに男子たちは針のむしろであったそうだ。

 早く終わってくれと気配を消しつつ、祈りを捧げていたのだから。

 

 そんな日の放課後のことである。

 学生会に腰を落ち着けたおじさんたちだ。

 

 アルベルタ嬢たちがビブリオバトルの進捗を聞く。

 予選は次々と行われているそうだ。

 

 ここで役だったのが録音の魔道具である。

 声だけではあるが、やることは把握できるからだ。

 

 何でも作っておくものである。

 意外なところで役だってくれるのだから。

 

「そう言えば……」


 と、おじさんが口を開いた。

 

「先日、エーリカが放課後に時間が欲しいと言っていましたわね」


「うん! それそれ。今、言おうと思ってたのよね」


 にやっと笑う聖女だ。

 ほんの少し嫌な予感がするおじさんである。

 

「んん? なんですの?」


「アリィ! ニュクス! イザベラ!」


 おじさんの問いをスルーして声をかける聖女だ。

 狂信者の会がスッと立ち上がった。

 

「本日は遅くなりましたが、リー様の生誕祭を行ないたいと思います」


 拍手の音で学生会室が包まれた。

 実は聖女が情報を聞いたのである。

 ケルシーから。

 

 学生会の面子の中で参加したのはケルシーだけだ。

 ごく身内で行われたものだかったから。

 

「リーも十五才になりました! ということでお祝いするわよ!」


 王国においては誕生日をことさら祝う風習はない。

 ただ、誕生月ということで祝ったりはする。

 

 しかしそこは前世持ちの聖女だ。

 お誕生日と言えば、やはりお祝いをしておきたいのである。

 

 色んな面でお世話になっている、という自覚もあるのだ。

 蛮族である聖女にも。

 

「ちょ、エーリカ」


 とまどうおじさんだ。

 そんなことは思ってもみなかったから。

 

「いいの、いいの。リーんちの侍女さんにも話はとおしてあるんだから」


「はえ?」


 おじさんは侍女を見る。

 同時にしっかりと頷く侍女だ。

 

「日頃からお嬢様にはお世話になっているから、そのお礼をしたいと言われたのですわ。私に否やはありませんでした」


 カーテシーを決めながら説明する侍女である。

 まったく……とおじさんは息を吐く。

 

「さぁパティ、やったんさい!」


「任せて欲しいのです。この日のために練習してきたです!」


 ピアノの魔道具を弾くパトリーシア嬢だ。


 てーててんてん、てーてー。

 それは聞き馴染みのある音であった。

 

 お誕生日をお祝いするあの曲だ。

 おじさんにとっては少し複雑な思いもある。

 

 前世では誰にも祝ってもらえなかったから。

 羨ましいという思いがなかったと言えば嘘になる。

 

 いつか、いつかと思いつつ、そんな日がこないことを確信していたから。

 

 でも、だ。

 今生ではしっかりと祝ってくれている。

 だから、前世の思いは浄化されたと思っていた。

 

 だが――。

 胸にこみあげてくるものがあった。

 じんわりとお腹の底が温かくなるような。

 

「ふわっぴぃばぁすでぃえとぅゆぅ」


 独特の癖がある歌い方をする聖女だ。

 なぜ、素直に歌わないのか。

 くすりとおじさんは笑ってしまう。

 

「ふわっぴぃばぁすでぃえとぅゆぅ」


 皆が歌う。

 ピアノを弾いているパトリーシア嬢もだ。

 音が弾み、楽しい雰囲気がでてくる。

 

 侍女が宝珠次元庫からケーキをだす。

 とても大きなものだ。

 

「おめでとー! リー!」


 聖女が大きな声をだす。

 

「おめでとうございます。リー様!」


 学生会の面々も続いた。

 ほろりと涙をこぼすおじさんだ。

 なんだかとっても幸せな気分だったから。

 

「ふふーん! そのケーキはね! 皆でお金をだしたのよ!」


 侍女が頷いている。

 ということは本当なのだろう。

 

「リーんちの料理長に作ってもらったの! 本当は私たちで作ろうと思ったけど、めっちゃ失敗したんだもん!」


「しー! エーリカ、余計なことは言わなくていいのです」


 パトリーシア嬢が聖女に注意する。

 だが、時既に遅しだ。


「あ! にゃはは! 聞かなかったことにしてちょうだい!」


 それに頷いてみせるおじさんだ。

 いつもに比べれば、小さな願いであるのだから。

 

「ってことで! リー! いつもありがとね!」


 ありがとうございます、と続く学生会の面々だ。

 くっと声が漏れるおじさんである。

 

 べつにお礼を言われたくてやっていることではない。

 だが――こんなにも素直に感謝の意を示されて悪い気はしないのだ。

 

 泣くのは良くない。

 そう思う。

 

 だから、笑ってみせる。

 だけど――ほろりほろりと涙は出てしまう。

 

 嬉しかったから。

 とっても。

 

 家族に祝われるのとはまたちがった良さがある。

 お友だちに祝ってもらうというのも初めての経験だったのだから。

 

「……こちらこそ。ありがとうございます」


 スッと頭を下げるおじさんだ。

 侍女がハンカチで目元を拭う。

 

「もう! しめっぽいのはなしだってば」


 という聖女の声も少しうわずっている。

 こういうのに弱いのだ。

 

 いや、聖女だけではない。

 目元を拭う令嬢がほとんどだ。

 

「ふふ……エーリカってば酷い顔をしてるのです!」


 パトリーシア嬢が混ぜっ返す。

 

「あんただって似たようなもんでしょうが!」


「それはそうなのです!」


 開き直るパトリーシア嬢であった。

 その姿がおかしくて、おじさんは笑う。

 

「さ、料理長自慢のケーキをいただきましょう」


 侍女が切り分けていく。

 

「待ってました! これよ、これ!」


 聖女が叫ぶ。

 いつもなら、ここで声が飛ぶはずだ。

 主にキルスティとかから。


 あなたのためのお祝いではないでしょうに、とかである。

 だが、さすがに今日は声が飛んでこない。


「まんもーす! いただきまんもーす!」


「いただきまんもーす! ですわ!」


 おじさんものった。

 ここはノリと勢いだ。

 そう決めて。

 

 おじさんの言葉に目を丸くする学生会の面々だ。

 ふっとシャルワールが微笑む。

 ヴィルと目を合わせてから、言った。

 

「ああ! いただきまんもすだな!」


「ええ! いただきまんもーす! ですね!」


 さすが年上組である。

 空気を読んで、わざとおどけて見せた男子二人だ。

 

「い、いただきまんもーす!」


 キルスティものった。

 こうなると、もう後はなし崩しである。

 

「いただきまんもーす!」


 学生会室に合唱の声が響いた。

 

「やっぱり、リーんところのケーキは美味しいわね!」


 聖女が続ける。

 

「うちの料理長もそれなりだと思うんだけど、なんかちがうのよね」


「場数じゃないですか? リー様のおうちはほら、陛下もお越しになりますし」


 アルベルタ嬢が言う。

 

「ん~そういやよく見かけるもんね、王様。あとなんだっけ偉い人」


「宰相と軍務卿。それにその奥方様たちもですわね」


 イザベラ嬢が補足を入れる。

 

「う、うちの曾祖父(おじい)様もよく伺っているそうですし……というか! リーさんには聞きたいことがあったのですわ」


 キルスティが興奮したのか立ち上がった。

 

「……先輩。その話は内密のものですから」


 転移陣のことだろう、と当たりをつけたおじさんが先に釘を刺す。

 

「あ……そうだったわね」


 すとんと腰を下ろすキルスティだ。

 

「まぁこの学生会の面々なら外に漏らすこともないと思います。転移陣のことがお聞きになりたいのでしょう?」


 くわっと目を見開く狂信者の会だ。

 その視線の先にいたのは、おじさんではなくキルスティである。


「……どういうことなのか、きっちり説明してもらえませんかね」


「もらえませんかね!」


 アルベルタ嬢に続いて、イザベラ嬢とニュクス嬢の二人が圧をかける。

 

「い、いや……べ、べつにいいのよ。うん」


 さすがにドン引きするキルスティだ。

 

「王家を基点として三つの公爵家のタウンハウスと領地。それぞれが行き来できるようにしただけですわよ。そう驚くことでもないでしょう」


 いや、十分に驚くことだけど。

 おじさんの言葉を受けて、皆がそう思ったのであった。


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