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強制的に転生させられたおじさんは公爵令嬢(極)として生きていく  作者: 鳶丸
本編

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1178 おじさんの提案に喜ぶ聖女たち


「ということがありましたの」


 おほほ、と軽く笑うおじさんである。

 明けて翌日のことだ。

 

 この日は学園に通ったおじさんである。

 ケルシーはまだ体調不良が続いているのだ。

 無理はさせられない。

 

 少し起きて、軽く食事をする。

 トイレに行き、いつの間にか寝ているのだ。

 その繰り返しである。

 

「なにそれ! めちゃくちゃ面白そうなんだけど!」


 図書大迷宮の話だ。

 ちょっくら行ってきたよと報告していたのである。

 やはりのってきたのは聖女であった。


「少し、他の迷宮とは毛色がちがっていますから」


「だよね! 物語の世界に入って攻略するってもはやゲームじゃん」


 いやまぁそれを言えば、この世界そのものが、という話である。

 聖女やおじさんからすれば、だけど。

 

「行きたい!」


 こうなるのはわかっていた。

 ただ、あそこはラケーリヌ家が管理している。

 故に、そうかんたんには行けないのだ。

 

 聖女だとしても。

 下手をすれば、物語の世界から出られなくなるから。

 そういうリスクもあるのだ。


「ヴァネッサお祖母様に確認をとっておきます。けれど、あまり期待はしないでくださいね」


 にこりと微笑むおじさんであった。

 

「ところで、なにか変わったことはありましたか?」


 うんにゃと首を横に振る聖女だ。

 特になにもなかったようである。

 

「リー様、昨日からビブリオバトルの予選が始まっていますわ」


 補足を入れたのはアルベルタ嬢だ。

 

「ほおん。もう始まっているのですか」


「ええ、学生会から通知を出したのが七日ほど前のことですが……予想以上に参加希望者が多くて、前倒しで予選をしております」


「やる気満々ですわね。いいことですわ」


 道理で、と思うおじさんだ。

 学園にきたときに、どこか浮ついたような空気を感じたから。


「文化祭のときみたいな空気感あるわね」


 聖女が言う。

 ただ、おじさんはわからない。

 そういうキラキラした学生生活とは無縁だったから。

 

 だから、空気を壊さないように微笑むだけにとどめる。

 余計なことを言えば、バレてしまいそうだから。

 

「おーう。集まってるかー」


 男性講師が教室に入ってきた。

 おじさんのところで視線をとめて言う。

 

「今日は任せてもいいかー?」


「もちろんですわ。ビブリオバトルの件でお忙しいのでしょう?」


「そうなんだよー。講師の中でもバトルしてるからなー」


 思わず苦笑するおじさんだ。

 知的階層の遊びとしては、かなり的を射ていたのだろう。

 

「では、わたくしが受け持ちます」


「頼んだー。それとケルシーのことなんだが……」


「近日中には戻ると思いますが、詳しいことはうちの者を寄越しますので」


「わかったー。ああ、今日の放課後でいいから学園長のところに顔をだしておいてくれないかー」


「承知しました」


 おじさんとの業務連絡を終えて、男性講師は教室を出て行く。

 なにをしにきたのだ、という話である。

 ホームルームどころではないのだろう。

 

「はい!」


 男性講師が退室するのと同時に聖女が手をあげた。

 

「図書なんちゃらに行きたい!」


「行けませんってば」


 即座にツッコむおじさんだ。

 ただ、くすりと笑ってしまう。

 だって聖女以外にも落胆した表情を見せたものがいたから。

 

「どうも気分が浮ついているみたいですわね。いいでしょう。少し気分を変えるための講義とします。アリィ、王国の美術史はどこまで進んでいますか?」


「はい。いまはエトコバル期ですわね」


「……なるほど。では、今日はお絵かきの講義といきましょう」


 え? となる薔薇乙女十字団(ローゼンクロイツ)たち。

 王国にも連綿と続く絵画の歴史がある。

 ただ、貴族自身が筆をとるということは少ない。

 

「そうですわね。では、二人一組を作りましょうか」


 男子は四人なので、ここであぶれずに組ができる。

 女子はケルシーとおじさん含め、十六人。

 故に、二人抜けた今だとあぶれる者はいない。

 

「お互いのことを絵にしてみましょう。画材はこれから配ります」


 と、宝珠次元庫から紙とペンをだすおじさんだ。

 

「むふふーん。こーゆーのを待ってたのよ!」


 聖女が得意げに語っている。

 同人誌を作っていたというだけに絵心はあるのだろう。

 ただプロとして通用するレベルではないだけで。

 

「さあ! 美しい絵画にしてもらいたいのは誰? 早い者勝ちよ!」


 聖女が言う。

 ただ……動く者はいなかった。

 蛮族がなにを言うのか、と。


「ちょっと! 誰も動かないってどういうことよ!」


「エーリカ、ちょっと待ってくださいな」


 イザベラ嬢が言う。

 

「どういうことだってばよ!」


「今からエーリカと組んで、絵を描いてもらう者を決めますから。美しく仕上げてもらえるのでしょう? なら、皆が手をあげてしかるべきですもの」


 おほほほ、と笑うイザベラ嬢だ。

 

「なーんだ、そういうことなのね!」


 納得してしまう聖女をちょろいと思ったのはおじさんだけではないだろう。

 

「女子組はこちらに」


 アルベルタ嬢を中心に女子が円を描くように集まる。

 こそこそと話をして、皆が頷いた。

 

「せーの、じゃんけんぽん!」


 ぐあああ! と令嬢らしくない声をあげる者もいる。

 どう見ても、これは負けた者が選ばれる方だろう。

 

「ちょっと! 話がちがうじゃない!」


 聖女もさすがに気づいたのだろう。

 だが、後祭りである。

 

「もう! 失礼しちゃうわ!」


 ぷんすこしている聖女だ。

 ふだんの行いが悪い。


「しまった! そっちだったか!」


 負け残ったのはセロシエ嬢のようだ。

 

「エーリカ、よろしく頼むよ」


「セロシエね。まぁべつにいいけど。あんたたち、ほんと失礼だから!」


 どの口が言うのだとは誰もが思った。

 だって、聖女は蛮族なのだから。


「まぁいいわ。リーと組むよりはマシだから」


 とんだところで飛び火してきた。

 

「それはどういう意味なのです?」


 パトリーシア嬢が聖女に確認をとる。

 狂信者の会が怖いから。

 

「だって、みなさいよ。あんなもの絵に描けるわけないじゃない!」


 あんなもの呼ばわりされるおじさんだ。

 ただ、薔薇乙女十字団(ローゼンクロイツ)たちは頷いた。

 男子たちもだ。

 

 おじさんは超絶美少女である。

 美しいという形容詞すら陳腐にするほどの美しさ。

 

 どれほどの巨匠であっても、絵で表現できるかといえば無理だ。

 それほどまでに極まっている超絶美少女なのだから。

 

「……納得してしまうのですか」


 自らの容姿に無頓着なおじさん以外は。

 聖女の言に一理あると思ったのだ。

 

「ま、いいでしょう。どんなデキでもかまいません。とりあえずお絵かきしてくださいな!」


 おじさんのかけ声でお絵かきの時間が始まった。

 皆が無言で描いている。

 

「……お嬢様、お茶でもご用意しましょうか」


 侍女が言う。

 

「お願いしますわ」


 のんびりするおじさんだ。

 ただ、そこに闖入者がくる。

 

「リー様!」


 ルルエラだ。

 

「色々とお話を伺いたいのですが!」


 やれやれと息を吐くおじさんだ。

 今は講義の時間である。

 

 どうにもラケーリヌ家の女性はそういうところがある。

 思いこんだら一途なのだ。

 

「ルルエラぱいせんじゃん」


 おじさんが口を開く前に聖女が口を開いた。

 

「なんですの? エーリカ。私は……」


「ちょうど良かったわ! リーの絵を描いてあげて!」


「え?」


「え? じゃなくて絵!」


「どういうことですの?」


「リーだけ描いてくれる人がいないの! 人数的に!」


 と、辺りを見回すルルエラである。

 確かに二人一組になっているので、あぶれるのだろう。


「……わかりました。では、私がリー様のお相手を務めましょう!」


 こっそりと聖女はガッツポーズをとった。

 実に悪い表情で。


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