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強制的に転生させられたおじさんは公爵令嬢(極)として生きていく  作者: 鳶丸
本編

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第1129話 おじさんの蛮族たちに対するお仕置き


 昼食後のことである。

 本日は二回目の野営料理訓練だ。

 

 場所はいつものミグノ小湖湖畔である。

 ここまではおじさんの転移で一瞬だ。

 

 転移を使わず移動する他のクラスとの大きなちがいである。

 

「さて、本日は第二回野営料理訓練ですわね」


 ふわりと風が吹く。

 寒い~と蛮族たちが言う。

 

「今回も食材はわたくしの用意したものを使ってもらいます。ただし、すぐ採取できるものがあれば使ってもかまいません」


 おじさんの説明はまだ続く。

 

「前回は初めてということもありましたので何も言いませんでしたが、今回は身体が温まる料理というお題をつけますわね。さぁ時間がありませんわよ、各班ともに動いてくださいな」


 おじさんの言葉とともに、蛮族たちは走っていかなかった。


「ねぇ……リー先生は?」


 聖女が言う。

 おじさんも着替えたのだ。

 魅惑の女性教師のスタイルから、動きやすい服装に。

 

 これは皆、同じである。

 ジャージなのだ。

 

「ここにいますわ」


「ちがう! あの格好のリー先生!」


 聖女が駄々をこねる。

 

「あの格好で外に出たくありませんわ!」


 むぅと押し黙る聖女だ。


「リー! これ使ってもいい?」


 ケルシーが宝珠次元庫から赤い種をだす。

 

「それは?」


「んとね、ピリリン」


「ピリリン……あれね。最初は小ずるいキャラだったのに、いつの間にか親友ポジションに鞍替えしていたという伝説の!」


 茶々を入れる聖女だ。

 そんな聖女を華麗にスルーするおじさんである。


「聖樹国で使われているものですか?」


「うん。冬によく食べるんだー」

 

「いいですわよ。巧く使ってくださいな」


「まかせとけー」


 てててっと走っていくケルシーだ。

 

「あの娘は無邪気でいいわねー」


「なにを言うのです。エーリカだって同じ年齢でしょうに」


「ふっ……アタイはもう汚れちまった、はすっぱな女でござんすよ」


 どのキャラでいきたいのだ、とおじさんは思う。

 ただ、ふわりと笑って聖女の頭をなでた。

 

「さ、がんばってきてくださいな」


「でへへ……行ってくる!」


 聖女もまた駆けていく。

 

 今回も男子班と女子が三班。

 男子班は既に火を熾していた。

 なかなか手際がよくなってきていると思う。

 

 今回、おじさんが用意したのはお鍋のセットである。

 もちろんそれだけではない。

 お鍋にはふさわしくない食材だって入れている。

 

「ちょっと! エーリカ!」


「あによ!?」


 ニュクス嬢が聖女に食ってかかっている。


「まさか、その食材も入れる気じゃないでしょうね!」


「入れるけど?」


「それってただの根っこじゃないですか!? 食べられるわけないでしょう?」


「え!? あんた知らないの?」


「……なにをです?」


 これ見よがしに息を吐く聖女だ。


「まったく、これだから貴族のお嬢様ってやつは」


「……なにが言いたいのです?」


「ニュクスってジンゴの粉末になったやつ好きでしょ?」


 ショウガ風味の粉末のことである。

 王国では卓上調味料のひとつとして親しまれているものだ。


「……そうですけど」


「これ、ジンゴ」


 はぁ!? と大げさに驚くニュクス嬢である。

 

「もしかしてだけど……粉末の状態で採れるとか思ってないわよね?」


「……」


 呆然としているニュクス嬢。

 対して、ケラケラと笑う聖女である。

 

 おじさんの前世にもいた。

 魚が切り身で泳いでいるというやからが。

 

「……嘘でしょ。ジンゴが根っこだったなんて」


 がくりと膝をつくニュクス嬢だ。

 ちょっとショックが大きかったらしい。

 

「ま、いいわ。さっさと作るわよ!」


 聖女が陣頭指揮をとる。

 やはり野営料理に関しては、まだまだ一日の長があるようだ。

 

「ちょっと! ケルシー!」


 今度はアルベルタ嬢だ。

 たぶん、先ほどと同じことが繰り返されるのだろう。

 

 食材など興味がなければ、わざわざ調べたりしないものだ。

 これをきっかけに興味をもってくれればと思う。

 

 食べるものは大事だから。

 そんな思いを抱くおじさんであった。

 

「ところでお嬢様はどういたします?」


 侍女がおじさんに声をかけた。

 

「わたくし? わたくしは先ほどの昼食で十分ですが……」


 ちらりと侍女を見るおじさんだ。

 

「サイラカーヤはなにか食べたいですか?」


 返事の代わりに侍女のお腹が、ぐぅと鳴いた。

 

「はう! も、申し訳ありません!」


 かまいませんわよ、とおじさんは微笑む。

 同時に指を鳴らす。

 

 地面からにょきにょきと土製の調理台が生えてくる。

 もはや見慣れているが、訳のわからない魔法だ。

 

「なにがいいですかね」


 と、宝珠次元庫から食材をとりだすおじさんだ。

 今回はうどんにするようである。

 

 手早く出汁を作り、同時にうどんを湯がいていく。

 出汁のいい匂いが辺りに広がる。

 

 ストックしてある天ぷらをのせて完成だ。

 

「さぁ召し上が……」


 おじさんは蛮族たちが侍女の後ろに並んでいるのを見た。

 さらに後ろには物欲しそうな顔をしているクラスメイトたち。

 

「……あなたたちは作っているお料理があるでしょうに」


「たーべーたい! たーべーたい!」


 ケルシーが声をあげた。

 聖女もそのコールにのっていく。

 

「まったく。ちゃんと自分たちで作ったものも食べるのですよ?」


 わかったー! と蛮族たちが笑顔を見せた。

 

 男子班が作ったのは干し肉を入れたスープである。

 それにパンがセットだ。

 

 いわゆる冒険者風のスープである。

 干し肉から出汁がでるのだが、分量を間違えたようだ。

 かなりしょっぱい。

 

 がくりと肩を落とす男子班であった。

 

 女子一班、ジャニーヌ嬢の班はシンプルである。

 おじさんが用意した食材を使った煮込み鍋だ。

 

 王国では親しまれているトマトソースを使った煮込みになる。

 野菜や肉がバランス良く入っていて美味しい。

 安定の味だとも言えるだろう。

 

 女子二班、聖女が率いる班だ。

 こっちはジンゴ、ショウガに似た風味の食材を使ったスープになる。

 聖女のいた村では、よく作られていたそうだ。

 

 鶏肉の出汁がよくでている。

 あっさりとした塩味で、滋味が深い。

 身体も温まる。

 

 女子三班、ケルシー組は真っ赤な鍋だ。

 見た目にも、匂い的にも辛みが強そうである。

 

 野菜も肉も、魚も。

 とにかく食材をぶちこんである。

 が、悪くない。

 

「今回も男子組以外はきっちり作りましたわね。男子組は味見を覚えてくださいな。適当に入れて料理が成り立つのは、しっかりとした経験がある者だけですから」


 はい、と男子組から返答がある。

 きちんと残さず食べるのは偉い、と褒めるおじさんだ。

 

「女子組はいい感じですわね。ちなみにケルシーの使った食材は聖樹国でよく食べられているそうなので、今後の勉強のためにも味わってみるといいでしょう」


 ちょっと辛みが強いのだ。

 だが、しっかりとした旨みもある。

 そんな鍋である。

 

「ふぅ……食った食った」


 すっかり身体が温まった聖女が、ごろりと横になる。

 腹をさすりながら、だ。

 

「食ったなー!」


 ケルシーも聖女の隣で横になった。

 ぽかぽかと身体も温まって気持ちがいいのだろう。

 

「二人ともそんなところで横になってはいけませんわ。風邪を引きますわよ」


 ふわあとあくびをする蛮族たちである。

 お腹がいっぱいになって眠くなったのだろう。

 

「……ちょっと寝ていい?」


「もう帰りますけど?」


「ちょっとだけ! ね、いいでしょ?」


「なら、五分だけですわよ? 起きないなら置いていきますから」


「わかったー!」


 と、蛮族たちは宝珠次元庫から毛布をとりだす。

 くるんと包まって、寝た。

 

 そして――。

 

「ふわぁ! よく寝たわ!」


「うん……」


 ぐしぐしと目をこするケルシーだ。

 

「真っ暗!」


 完全に日が落ちていた。

 おじさん、本当に置いていったようである。


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