ホワイトハウスに
亮は日本の銀行員をまったく信用していなかった。
欧米では銀行家とは自分の裁量と判断と責任で資金を動かし
収益を上げる事の出来る経済のプロフェッショナルであり
日本人の銀行員はたとえ幹部でも銀行家と呼ばない。
「なるほど、日本人はもっと深く掘り下げて
人物評価をすると思っていた」
「元々日本人は人情に厚い国民です。個人的感情を移入したら
銀行は潰れてしまいます。そう思いたいですね」
「あはは、お前は良い奴だ」
ロビンは笑って亮の肩を叩いた。
「そう言えばロビンもデビッドの
会社も銀行に助けられましたね」
「ああ、そうだったな」
亮もロビンも昔一緒に苦労した昔を思い出した。
「銀行のみなさんは社長逮捕のせいで株価が
落ちた会社を立ちなおさせる為には
大手との合併を進めるはずです。
おそらくロビンに買収を提案して
自分たちの持っている落ちた株価を
元に戻す計画に賛同してくれると思います」
亮が銀行の策略を話すと和田が
それを聞いてニヤニヤと笑った。
「なるほど、團さんが言っていた
のは、この件だったんですね」
和田は自分が持っているピーエヌエーの株価が
元に戻ると思うと嬉しそうに笑った。
「ロビン、ピーエヌエー社長の
逮捕劇はライバル会社の
グリーンの仕掛けだったようです。
僕たちはそれにまんまと
踊らされたんです」
「本当か!無罪の人間を罪に陥れた
訳ではないから何とも言えないが。
奴らは明日の朝、大儲けするのは確実だな」
「はい」
亮は再び森田の笑う顔を思い出し
悔しさで唇を噛んだ。
「それでどうするつもりだ?」
ロビンは亮の指示に従うつもりだった。
「勿論、グリーンの株を買いますよ。
奴らは自社株の値上がりだけを
見ているけど、我々は両方の
株価を見て売り買いが出来ます。
銀行の協力で買収を成功させて
ピーエヌエーがアメリカンウエブの
傘下に入ればゲーム会社が
マネーゲームに勝つわけです」
亮はそう言って中村和美の方を見る
と万全の準備をしている和美は亮に向かって
うなずいた。
「なるほど・・・」
和田は亮とロビンの話を聞いてうなずいていた。
「和田さん、ここで笑って欲しかった!」
「ん?」
「ゲーム会社がマネーゲームに勝つ」
和田は亮の意味の分からない冗談に首を傾げた。
「ああ、良かった」
裕子はさすがの亮がジョークで滑る姿が
人間的でホッとした。
「亮、さっきミスター和田と話を
していたんだが、うちの会社の
制作予定の映画が有って
出演オファーをしていたところだ。
そうなったら亮にも出演して欲しいそうだ」
ロビンが和田の言葉を伝えた。
「あはは、考えておきます」
亮は役者で映画に出演するなど毛頭無く
主演はブルック、音楽はジャネットで
新しい映画製作技術やCGの
プランが頭の中にあった。
そしてロケ地はアリゾナの砂漠。
亮はそう思うだけで
顔をほころばせていが
蓮華と桃華の事を
思い出すと胸が痛んだ。
「ロビン、アメリカが日本を
監視しているスパイ衛星は
いくつある?」
亮は突然ロビンの
耳元でささやいた。
「3つじゃないかな?
表向きはGPS用と言っているが」
「その映像が欲しい、
ハッキングできないかな?」
亮はロビンに広尾の有栖川公園で
蓮華と桃華が行方不明になった事を伝えた。
「亮、そんな事は僕に頼むな」
「やはりだめか?」
亮はロビンに断られ気落ちしていた。
「いや、君はアメリカ軍のトップと
僕より親しいんじゃないか。
直接頼んだ方がいい」
「えっ、トップ?国防長官か、
それともアメリカ統合参謀本部議長か。
残念だが無理だと思う、
スパイ衛星は軍事機密だから
頼めたものじゃない」
「いいや、諦めるなよ。
アメリカ軍総司令官に頼めば
聞いてくれるかもしれないぞ」
「軍総司令官って・・・あっ、そうか」
亮はバーの外に走って出て行った。
「亮、どこへ行ったの?」
「友達の所へ電話を掛けに行った」
ロビンに行き先を聞いた梓沙に答えると
キャシーはそれを聞いてクスッと笑った。
「ロビン連絡が取れました。
事情を説明したら検討して
連絡をくれるそうです」
亮は衛星電話を持って戻ってきた。
「さすがだな」
ロビンは亮の肩を叩いた。
「おお、團さん衛星電話ですね」
和田が亮の持っている電話を
見て興味深そうに聞いた。
「ええ、通信費が高いと文句を
言ったらこの電話くれました」
亮はアメリカ合衆国の白頭鷲の国章が付いている
電話を和田に見せた。
「團さん。そ、それ」
「このマークですか。
白頭鷲格好いいですよね。
日本国政府は五七の桐花紋で
地味ですからね」
和田は亮が何故アメリカ国章が
付いている電話を持っている事に
驚いていた。