悪への戦い
「了解」
「美咲さん、仕上げです場所は
新宿歌舞伎町ホテル2012号室です」
「分かったわ。浩二の麻薬所持ね。
すぐに捜査員を向かわせる。
くれぐれも無理しないでね」
「了解です」
亮が電話を美咲との電話を切るとすぐに
裕子から短いメールが来た。
「2012号室スイート」
部屋の前に立った亮は
その部屋でこれから
何が起きるか容易に想像できた。
メールから数分後亮の電話が鳴った。
「亮、アンナが注射打たれて、
痙攣起こしている」
「わかった、ドアを開けてください」
亮の声を聞いたが様子かドアの向こうで
ガシャと音が聞こえると
ドタドタと言う音が聞こえたが
ドアのロックは外されていなかった。
「くそ!誰かが邪魔している」
亮は救急に電話を掛けた。
「歌舞伎町ホテル2012号室で
薬物中毒病人発生、
現在人工呼吸中、救急は亮の状況説明を怪しんだ。
≪あなたの名前は?≫
「えっ名前ですか?團亮です」
≪あなたの連絡先は?≫
「連絡先?そちらが記録している電話番号です」
≪病人の容態は?≫
「現在、救命中、患者を殺すつもりですか?」
亮が怒鳴りつけるとガシャっと音がしてドアが開いた。
亮は真由美に電話を預け続きを頼み
部屋に入るとノブに手をかけている
裕子の背中を浩二が蹴っていた。
「やめろ!」
亮は浩二の胸に向けて手の平で掌底を放った。
浩二は亮を顔も確認する間もなく
後ろに飛ばされ気を失った。
「この時計返してもらうよ」
亮は浩二がしていた腕時計を外した。
「亮、早く処置して!」
裕子の悲鳴のような声に亮は
床に倒れている
アンナの元に駆け寄るとそこに
真由美が来てマウス・ツー・マウス
の人工呼吸をした。
亮はその合間を縫ってアンナに
経口ナロキソンを飲ませた。
※ナロキン(naloxone)は麻薬拮抗剤の一種で麻薬によって引き起こされる
呼吸抑制作用によって呼吸困難を起こしている場合の症状に効果がある。
「真由美さん、人工呼吸できるんですね」
亮は基本通り人工呼吸をしている真由美を見て
感心した。
「はい、子供の頃から見ていましたから」
「ありがとうございます。門前の小僧ですね」
「門前の小僧?」
亮はそう言ってアンナの胸に耳を
当て心拍数を計った。
「心音は安定しています、心拍数180
亮はアンナの首の下に巻いたタオルを
入れ気道開けるとアンナの呼吸が
楽になったように見えた。
「裕子さん、男たちは?」
「隣の寝室に閉じ込めてあるわ」
左頬にアザを作った裕子が
寝室の部屋のドアを指さした。
「ドン、ドン」
そのドアを蹴る音が聞こえるとそれが大きく開いた。
「あっ、酒井重夫」
亮はドアをけ破った男の顔を見て声を上げた。
「な、なんじゃワレ」
酒井は亮の顔を見て凄んで見せた。
「江戸川コナンです」
「ば、馬鹿にするな」
酒井は懐に手を突っ込んで
ピストル持ち亮に銃口を向けた。
「酒井組長。こ、こいつは殺しを
お願いした。團亮です」
男が指さした。
「そうか、分かった。」
亮の顔を見た入江は亮を指さすと酒井は
ここぞとばかり亮に向かって
銃口を向けた。
「あっ!」
亮は自分の後ろに裕子たちが居る為に
動くことが出来なかった。
酒井は入江の手前、躊躇なく亮の胸を目がけてピストルを撃った。
「バーン」
9mm弾の大きな音が部屋中に響いた。
亮が胸を抑えて倒れると裕子が
亮に覆いかぶさった。
「亮、亮」
「大丈夫。死にません」
亮は目を開け向かいあった裕子に軽く
キスをすると裕子を持ち上げ起き上がった。
ピストルの弾が亮に当たっていると油断していた
酒井の足にタックルをして横倒しにしピストルを取り上げ
馬乗りになって酒井の鳩尾にこぶしを回しながら突いた。
「ぐうっ」
酒井は鳩尾に食い込んだ亮のパンチの
あまりに苦しい痛みで胃液を吐いて
声も上げられず胃を抑えて転がりまわった。
※先手必勝、昔から
言われている言葉である。
人間は攻撃を受けると興奮状態になり
1分後にアドレナリンが分泌され
痛みをあまり感じず、
普段以上のパワーを発揮する。
それに勝つ為には1分以内に
勝負を付けるのが理想である。
亮はその為に相手を油断させ、
一転して有効とされる
鳩尾への攻撃をしたのである。
裕子は部屋から出ようとする入江の襟首を掴んだ。
「この野郎!散々私の体撫でまわしやがって」
裕子は入江の頭を掴んでボディにニーキックを入れた。
入江は痛みをこらえて腹を抑えた。
「さすが元総長」
「亮、もう一発良い?」
「そうですね、貞操の危機の女性の防衛は認められています」
「うふ、ありがとう」
裕子は抵抗できない入江を仰向けにして
両手で足を開き股間に膝を落とした。
「ギャー」
亮はあまりにも痛がる入江の様子を見て
自分の股間を抑えて顔をそむけた。
間もなく真奈美が呼んだ救急隊員が入って来て
アンナの救命処置が行われた。